Archive for the ‘未分類’ Category
強制わいせつで逮捕
強制わいせつで逮捕
埼玉県川越市に住むAさん。
深夜、人通りが少なくなったアーケードを歩いていると、道の端に、泥酔して座り込んでいる女性を見つけました。
Aさんは、
「お姉さん大丈夫?」
などと声を掛けました。
返事がはっきりしない状態の女性を見たAさんは、
「これ幸い」
などと思い、女性の肩を抱いて、服の上から胸を揉むなどの行為に出ました。
後日、女性の供述や防犯カメラ映像などからAさんの犯行が発覚。
強制わいせつ罪の疑いで捜査が進み、Aさんは埼玉県川越警察署の警察官により逮捕されました。
(フィクションです)
~条例違反か強制わいせつか~
一般に、路上で体に触った場合、電車内での痴漢と同様、①各都道府県の条例違反になる場合と、より重い刑法の②強制わいせつ罪や準強制わいせつ罪が成立する場合があります。
①と②のどちらに該当するかは、触り方などの犯行方法等によります。
たとえば、すれ違いざまに服の上からお尻を触ったというような場合は、①各都道府県の条例違反となる可能性が考えられます。
一方、服の中に手を入れて体に直接触ったような場合には、暴行を用いて「わいせつな行為」があったとして②強制わいせつ罪や準強制わいせつ罪となる可能性が高いでしょう。
Aさんの行為は、場合によっては「わいせつな行為」に当たるのではないかと考えられます。
服の上から触っているだけではありますが、肩を抱いて胸を揉んだという方法は、ある程度強い態様での卑猥な行為をしたといえるので、②強制わいせつ罪や準強制わいせつ罪となる可能性も十分考えられます。
なお②については、被害者が酒に酔うなどの状態により抵抗できないことに乗じて触ったような場合は準強制わいせつ罪に、暴行・脅迫を用いて無理やり行為に及んだ場合は強制わいせつ罪となります。
~罰則は?~
①と②両者の条文と罰則を確認しておきます。
まずは①の条例違反から見ていきます。
埼玉県迷惑行為防止条例(一部抜粋)
2条
4 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、他人に対し、身体に直接若しくは衣服の上から触れ、衣服で隠されている下着等を無断で撮影する等人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない。
罰則は、常習犯ではない場合には、17条1項1号により、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金となります。
常習犯の場合、同条2項により、1年以下の懲役または100万円以下の罰金となります。
前科がある場合には、常習犯として処罰される可能性が上がるでしょう。
一方、②強制わいせつ罪と準強制わいせつ罪は以下のような規定になっており、定められている刑罰もより重くなっています。
刑法第176条
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
第178条1項
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。
~今後の刑事手続きの流れと弁護活動~
逮捕されたAさんは、まずは最大で3日間、警察署等で身体拘束されます。
そしてもし検察官が勾留(こうりゅう)を請求し、裁判官が許可すれば、さらに最大20日間の身体拘束がされる可能性があります。
その後、検察官が被疑者を刑事裁判にかけると判断すれば(起訴)、刑事裁判がスタートします。
そして裁判で無罪や執行猶予とならない限り、刑罰を受けることになります。
なお、途中で釈放されれば、自宅から警察署や検察庁に出向いて取調べを受けたり、裁判所に出向いて刑事裁判を受けるという流れになることが考えられます。
弁護士としては、検察官の勾留請求や裁判官の勾留決定を防ぎ、早期釈放を目指します。
また、検察官が起訴しないという判断(不起訴処分)をすれば、刑事手続はそこで終わり、釈放される上に前科も付かないので、被害者と示談を締結するなどして、不起訴処分を目指します。
~示談の重要性~
示談が成立しているか否かは、不起訴処分にするかどうかという検察官の判断などに大きく影響する可能性があります。
前科の有無などにもよりますが、被害者と示談が成立すれば、不起訴処分になることも十分考えられます。
また、犯罪の被害者の方はいつまでも事件にかかわりたくないものですし、損害賠償が受け取れるなら、早く事件を終結させた方が良いと考える方もいらっしゃいます。
そこで、すみやかに被害者の方に賠償し、示談を締結することが重要です。
~弁護士にご相談を~
しかし示談交渉をしようにも、加害者に直接会うことを嫌がる被害者の方もいらっしゃいます。
また、示談金額や示談書の内容をどうしたらよいのか、なんと言ってお願いすればよいのかなど、わからないことが多いと思います。
他にも、逮捕されるとご本人やご家族は、どんな罪が成立するのか、刑事手続はどのように進んでいくのか、取調べにはどう受け答えしたらいいのか等々、不安点が多いと思います。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
ご家族などからご依頼いただければ、拘束されている警察署等にすみやかに接見に伺います。
また、逮捕されていない場合やすでに釈放されている場合は、事務所での法律相談を初回無料でお受けいただけます。
接見や法律相談では、上記の不安点などにお答えいたします。
条例違反や(準)強制わいせつ罪などで逮捕された、捜査を受けているといった場合には、ぜひ一度ご相談ください。
監護者性交等罪の弁護活動
監護者性交等罪の弁護活動
事例:V(18歳)は、実の父であるAと共に、大阪府大阪市浪速区に住んでいた。
Vは,小学校高学年のころから恒常的に,実親であるAにより支配された状態で,性行為を強要されていた。
Vの供述などから捜査を進めた大阪府浪速警察署の警察官は、Aを監護者性交等罪の疑いで逮捕した。
Aの逮捕を知ったAの知人は,性犯罪事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実を基にしたフィクションです。)。
~刑法における新たな性犯罪規定~
2017(平成29年)の刑法改正により,性犯罪規定が刷新され,さらに新たな犯罪類型が規定されるに至りました。
改正刑法第179条1項は,「18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者は、第176条の例(注:強制わいせつ罪の規定。6月以上10年以下の懲役)による」として,監護者わいせつ罪を規定しました。
さらに同2項では,「18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第177条の例(注:強制性交等罪(旧強姦罪)の規定。5年以上の有期懲役)による」として,監護者性交等罪を規定しています。
これらは,暴行・脅迫等の手段を用いなくても,親子関係等の一種の支配関係を利用し性犯罪に及ぶという性的虐待を犯罪として処罰するために創設されたものです(すでに欧米等では立法例がありました。)。
本件では,後者の監護者性交等罪が問題となっています。
上述した改正刑法により、177条(旧強姦罪)の法定刑は,「3年以上の有期懲役」から「5年以上の有期懲役」に引き上げられました。
そのため、監護者性交等罪についても、新設規定ながら厳罰化の影響を受けていることに注意が必要です。
特に本罪のような新設規定に関しては,刑事事件専門でない弁護士は比較的経験が少ないと考えられ,刑事事件専門の弁護士の経験・知識が活かされる場面のひとつということができるでしょう。
監護者性交等罪に関しては,刑罰規定が施行されて間もないわけですが,現実に具体的事件に適用されるに当たって,はやくも「18歳未満」という要件は妥当であったのかなど,本罪を含む性犯罪規定のあり方が問われているところでもあります。
~監護者わいせつ・監護者性交等のおける弁護活動~
まず,これらの犯罪は家族間での性犯罪事件であることから,被害者感情などを含め非常に複雑かつ機微を捉えた弁護活動が必要になってきます。
この点,刑事事件のみを扱う弁護士は,本罪を含めた性犯罪の弁護活動の経験に長けており,十全な弁護活動を行うことが期待できます。
上述の刑法改正における性犯罪の非親告罪化もあり,法律上は告訴取下げがあったとしても,検察官は被疑者を起訴することが可能な状況にあります。
もっとも,性犯罪規定が本質的には被害者の性的自由の保護にある以上は,検察官も被害者感情には十分な配慮をせざるを得ません。
このように性犯罪の弁護活動は新局面を迎えており,ますます刑事事件の専門性が問われうる時代になったということができるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,監護者性交等罪を含む性犯罪の弁護経験を多く有する刑事事件専門の弁護士が所属する法律事務所です。
監護者性交等罪事件で逮捕された方のご知人等は,24時間対応のフリーダイヤル(0120-631-881)にまずはお問い合わせください。
初回法律相談:無料
リベンジポルノで告訴
リベンジポルノで告訴
兵庫県神戸市垂水区に住むAさんは,Vさんと交際中、Vさんの承諾を得てVさんのバストが殊更強調された写真、Vさんが下着姿一枚となったVさんの股間部分が殊更強調された写真を撮っていました。そうしたところ、AさんはVさんから突然別れ話を切り出されました。Aさんは,Vさんとよりを戻そうとVさんに何度も説得を試みましたが,Vさんの気持ちが変わることはありませんでした。そこで,Aさんは,Vさんへの恨みを晴らそうと、自身のSNSに上記写真画像をアップしました。そうしたところ、Aさんは兵庫県垂水警察署からリベンジポルノ被害防止法違反で事情を聴きたいととの連絡を受けてしまいました。Vさんの写真画像を見たVさんの知人から事実を知らされたVさんが、垂水警察署に告訴状を提出したようです。Aさんとしては、SNSにアップした写真画像はVさんから承諾を得て撮影したものであったことから、リベンジポルノに当たらないのではないかと納得がいっていません。
(フィクションです)
~ リベンジポルノ被害防止法 ~
リベンジポルノ被害防止法は,正式には「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(以下,法律)」といいます。
リベンジポルノ被害防止法は、2013年10月8日に起きた「三鷹ストーカー殺人事件」をきかっけに制定された法律です。
この事件は、被害者が海外に留学することをきっかけに別れ話を切り出された犯人が、殺害前から被害女性の性的な画像や動画を海外に作成したサーバーを通じてインターネット上で公開していたことでも有名となりました。しかし、当時は、リベンジポルノ被害防止法はなく、当然、裁判では適用されませんでした。
もちろん、リベンジポルノ被害防止法が制定される以前も、リベンジポルノに関しては、名誉毀損罪(刑法230条)、脅迫罪(刑法222条)、わいせつ物電磁的記録媒体公然陳列罪(刑法175条1項)などで処罰されていました(三鷹ストーカー殺人事件でも、差し戻し審(東京地裁)で、わいせつ物電磁的記録媒体公然陳列罪により追起訴されています)。しかし、リベンジポルノ被害防止法の制定によって、改めて「リベンジポルノ」とは何たるかということを明確に定義し、これを拡散させる行為は違法だ、ということを社会に周知させようとしたのです。
~ リベンジポルノとは ~
リベンジポルノ被害防止法では、リベンジポルノを「私事性的画像記録」又は「私事性的画像記録物」と呼んでいます。
「私事性的画像記録(いわゆる写真画像や動画などの電子データ)」又は「私事性的画像記録物(写真、BD、DVD、USBなど)」は、以下に掲げる人の姿態が記録されたものとされています。
1 性交又は性交類似行為にかかる人の姿態
→異性間・同性間の性交行為、手淫・口淫行為など
2 他人が人の性器を触る行為又は人が他人の性器等を触る行為に係る人の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
→性器、肛門又は乳首を触る行為など
3 衣服の全部又は一部を着けない人の姿態であって,殊更に人の性的な部位が強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するもの
→全裸又は半裸の状態で扇情的なポーズをとらせているものなど
注意が必要なのは、
被害者(撮影対象者)が、第三者(撮影をした者、撮影対象者、撮影対象者から提供を受けた者以外の者)が閲覧することを認識した上で、任意に撮影を承諾し又は撮影したもの
は
リベンジポルノから除かれる
とされていることです。よって、被害者が撮影した人に承諾したとしても、それだけをもって「第三者に閲覧されることを認識した上で、任意に撮影を承諾した」とはいえませんから、Aさんはやはり処罰の対象となり得るのです。
~ どんな行為が処罰されるの?刑罰は? ~
リベンジポルノ被害防止法では、大きく「公表罪」と「提供罪」を規定しています。
「公表罪」は、不特定又は多数の者に「私事性的画像記録」又は「私事性的画像記録物」を提供する行為(私事性的画像記録物の場合は公然と陳列する行為も)を処罰する罪で、罰則は「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。「提供罪」は、他人に公表させる目的で、「私事性的画像記録」又は「私事性的画像記録物」を提供する行為を処罰する罪で、罰則は「1年以下の懲役又は30万円以下の罰金」です。
いずれの罪も、告訴がなければ公訴を提起される(起訴される)ことがない親告罪です。告訴とは,犯人を処罰してほしいという被害者の意思表示のことをいいます。ですので,仮に示談を成立させるなどして被害者のお気持ちが緩和されれば,告訴を取り消していただく可能性も残されています。告訴が取り消されれば,裁判をするための要件に欠けることから,刑事処分は基本的に不起訴処分となります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが24時間体制で、初回接見、無料法律相談の予約を受け付けております。
つきまといでストーカーに
つきまといでストーカーに
【事件】
京都府京都市左京区にある予備校で講師をしているAさんは,生徒の女性Vさん(当時19歳)に好意を抱いていました。
Aさんは帰宅するVさんにつきまとうようになりました。
VさんはAさんのつきまとい行為をやめさせられないか、京都府下鴨警察署に相談に行きました。
(フィクションです)
【ストーカー規制法】
他人につきまとう行為は,その目的や内容によってはストーカー規制法違反として処罰される可能性があります。
ストーカー規制法は,第3条によって「何人も,つきまとい等をして,その相手方に身体の安全,住居等の平穏若しくは名誉が害され,又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせてはならない」と規定しています。
この第3条に反してつきまとい等を反復すると,ストーカー行為として1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されるおそれがあります(第18条)。
さらに,第3条に違反するつきまとい等の行為が反復してなされるおそれがあると認められた場合には,各都道府県の公安委員会によって禁止命令等を行うことができます(第5条)。
この禁止命令等に違反してさらにつきまとい等の行為に及んだ場合の法定刑は,2年以下の懲役または200万円以下の罰金(第19条)となっています。
ストーカー規制法が規定している「つきまとい等」は第2条によって以下のように定義されています。
特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で,当該特定の者またはその配偶者,直系もしくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対して,
①つきまとい,待ち伏せし,進路に立ちふさがり,住居,勤務先,学校その他通常所在する場所の付近において見張りをし,住居等に押しかけ,または住居等の付近をみだりにうろつくこと。
②その行動を監視していると思わせるような事項を告げ,またはその知り得る状態に置くこと。
③面会,交際,その他の義務のないことを行うことを要求すること。
④著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
⑤電話をかけて何も告げず,または拒まれたにもかかわらず,連続して,電話をかけ,ファクシミリ装置を用いて送信し,もしくは電子メールの送信等をすること。
⑥汚物,動物の死体その他の著しく不快または嫌悪の情を催させるような物を送付し,またはその知り得る状態に置くこと。
⑦その名誉を害する事項を告げ,またはその知り得る状態に置くこと。
⑧その性的羞恥心を害する事項を告げもしくはその知り得る状態に置き,その性的羞恥心を害する文書,図画,電磁的記録に係る記録媒体その他の物を送付しもしくはその知り得る状態に置き,またはその性的羞恥心を害する電磁的記録その他の記録を送信しもしくはその知り得る状態に置くこと。
処罰対象となるストーカー行為とは,同一の者に対し上記のつきまとい等を反復してすることをいいます。
ただし,①から④の行為及び⑤(電子メールの送信等のみ)については,身体の安全,住居等の平穏若しくは名誉が害され,または行動の自由が著しく害される不安を覚えさせる方法でなければストーカー行為とはなりません。
逆に言うと,相手方が不安を覚えてしまえばストーカー行為があったと認められやすくなってしまうと考えられます。
また,①から⑧に当たる行為であっても反復してしなければ処罰されないのかというと,必ずしもそうではありません。
たとえ1回だけであっても,その内容にもよりますが,③の行為は強要罪(刑法第223条)に当たる場合がありますし,④や⑦の行為もそれぞれ脅迫罪(刑法第222条),暴行罪(刑法第208条),名誉毀損罪(刑法第230条),侮辱罪(刑法第231条)などの犯罪が成立してしまう場合があります。
相手のSNS等に行動を監視していることや相手が拒絶している自身の好意を伝える内容を繰り返し書き込むこともストーカー行為に当たり得ます。
Aさんの場合,それが純粋にVさんへの好意からのものであってもVさんが不安を覚えて警察に相談している事実がある以上,さらに繰り返しつきまとえばストーカー規制法違反事件として立件される可能性があります。
このように,行為者がストーカーに当たると考えていなくても,ストーカー規制法違反として禁止命令等の処分がなされたり処罰される場合があります。
しかし,ストーカー規制法違反を疑われても早期に弁護士に依頼することで,身体拘束からの解放や不起訴あるいは執行猶予を得られる可能性を高めることができます。
ストーカー規制法違反の被疑者となってしまった方は,お早めに刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回法律相談:無料
客引きで逮捕
客引きで逮捕
Aさんは、福岡県春日市でケバブを中心としたトルコ料理を提供するレストランの経営者です。Aさんは、数か月前、A店から半径10メートル以内の同じケバブ店2店が出店され、これらに従来からの客が奪われていると感じ始めていました。そこで、Aさんは、集客、売上金増加を目指して従業員Bに客引きを命じました。そうしたところ、従業員Bさんが福岡県春日警察署の私服警察官に事情を聴かれ、風営法違反で逮捕されたことをきっかけに、Aさんも風営法違反で逮捕されてしまいました。Aさんの知人であるCさんは、AさんやBさんの今後のことが心配になって刑事事件が得意な弁護士に接見を依頼しました。
(フィクションです)
~ 客引きとは? ~
「客引き」とは、一般に、相手方を特定して特定の営業所の客となるように勧誘することをいうとされています。
まず、「相手方を特定する」必要がありますから、一般公衆に向かって「いい店ありますよ~」などと叫んでも「客引き」には当たりません。また、「特定の営業所の客となるように勧誘する」必要がありますから、相手方を特定したとしても、営業所名を告げないで、「お時間ありますか」「いい店ありますよ」などと声をかけても「客引き」には当たりません。
~ 風営法上の「風俗営業」に対する規制 ~
風営法(正式名称:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)22条1・2号では、
風俗営業を営む者は,次に掲げる行為をしてはならない。
1号 当該営業に関し客引きすること。
2号 当該営業に関し客引きをするため、道路その他の公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
と規定されています。同号では、「風俗営業を営む者」とあるように、「客引き」をする主体が限定されています。つまり、基本的には、同号の「客引き」は「風俗営業を営む者」でしか犯せない犯罪(これを法律上身分犯といいます)ということになります。ただし、「風俗営業を営む者」とその従業員が意を通じて「客引き」を行った場合は、「風俗営業を営む者」のほかその従業員にも本号が適用され処罰されます。なお、「風俗営業を営む者」とは「風俗営業者」とは異なりますから、無許可で風俗営業を営む者も「風俗営業を営む者」に含まれます。
また、先ほど「客引き」に当たらない行為をご紹介しましたが、たとえ「客引き」に当たらなくても2号に該当するおそれはある点は注意が必要です。
1・2号違反の罰則は、6月以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又は併科とされています。
~ 風俗営業とは ~
ところで、風俗営業というと、キャバレー、スナック、キャバクラ、ソープ、ヘルスなどをイメージされる方も多いのではないでしょうか?
しかし、風営法は、まず前3者に該当する営業を「風俗営業」、後2者に該当する営業を「性風俗関連特殊営業」として両者を区別し、別々の章で規制しています。そして、「風俗営業」については風営法2条1項1号から5号までに該当する営業をいうとされています。したがって、たとえ呼称としてはレストランだったとしても、当該レストランが風営法2条1項1号から5号に該当する営業を行うものであれば、やはり「風俗営業」に当たります。
~ 条例による規制 ~
各都道府県が定める迷惑行為防止条例でも「客引き」行為が規制されています。たとえば、福岡県迷惑行為防止条例5条1号には
何人も、公共の場所において、不特定の者に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
1号
次に掲げる行為について、客引きをすること。
と規定されています。
風営法との違いは、「何人も」とあるように「客引き」の主体に限定がなく、また「客引き」の対象者も「不特定の者」と限定されていない点です。したがって、従業員が店主から命じられることなく独断で「客引き」を行った場合は条例違反に問われます。
罰則は、50万円以下の罰金又は拘留若しくは科料です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが24時間体制で、初回接見、無料法律相談の予約を受け付けております。
強制性交等罪と被害者供述の信用性
強制性交等罪と被害者供述の信用性
東京都中央区に住む会社員のAさん(27歳)は、知人女性Vさん方で、Vさん(23歳)に対し、殴る、蹴るの暴行を加えた上、Vさんに性交をした強制性交等罪の疑いで、警視庁中央警察署に逮捕されてしまいました。Aさんは、Vさんに対して暴行を加えたことは認めるものの、Vさんに性交したことは否認しています。Aさんは、警察官の取調で、その旨を訴えたのですが、全く聞く耳をもってもらえませんでした。そこで、Aさんは、Aさんの父親から依頼を受けて接見に来た弁護士に自分の主張を伝えました。接見の後、弁護士は、被害者であるVさんの供述に疑問を抱くようになり、強制性交等未遂罪か暴行罪の成立を主張していくことに決めました。
(フィクションです。)
~ 性犯罪の特殊性 ~
性犯罪、は犯行場所が密室、あるいは公共の場所であっても目撃者がいない、または少ない場所で行われることが多いと思われます。そうした場合、犯人が罪を犯したことを裏付ける直接的な証拠は「犯人の自白」、あるいは「被害者の供述」しかありません。そして、犯人が自白しない場合、つまり罪を否認している場合は「被害者の供述」のみが、犯人の犯行を裏付ける直接的な証拠となります。性犯罪において、客観的で決定的な証拠がない場合は、「被害者の供述」が唯一の頼れる証拠となってしまうのです。
~ 被害者の供述であっても全面的に信用できない ~
しかし、だからといって、被害者の供述を全面的に信用するわけにもいきません。人はときに先入観、勘違い、思い違い、誘導、時の経過、などによって、誤った供述をしてしまうおそれがあり、それを基に事実認定してしまうと、冤罪を生み出しかねないからです。この点、裁判所は、供述の信用性を判断するため
・客観的な証拠や,その証拠から推認できる事実との整合性しているか
・供述するまでに,記憶が混同・変容しやすい出来事であるか
・供述内容に一貫性があるか
・供述者の利害関係(嘘を述べる動機があるか)
・供述内容に具体性,迫真性があるか
・供述態度が真摯であるか
という要素を考慮して判断しています。
~ 被害者の供述が全面的に認められない場合は? ~
今回、Aさんが疑いをかけられている罪は、強制性交等罪(刑法177条)です。
刑法177条
13歳以上の者に対し,暴行又は脅迫を用いて性交,肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という)をした者は,強制性交等の罪とし,5年以上の有期懲役い処する。13歳未満の者に対し,性交等をした者も,同様とする。
今回、Aさんは暴行の事実自体は認めていることから、性交があったか否かを争っていく必要があります。仮に、捜査過程や裁判で、被害者の供述が信用できないと判断され、他にVさんと性交をしたことを裏付ける証拠(膣内の精液に関するDNA型鑑定等)がない場合は、
性交の事実がなかった
ということになり、Aさんには強制性交等未遂罪、あるいは暴行罪が成立するにとどまることになります。
* 強制性交等未遂罪と暴行罪の境界線 *
強制性交等罪の未遂犯といっても、その態様は様々です。強制性交等罪は陰茎を膣、肛門または口腔内に挿入することによって既遂に達するとされています(射精の有無は問わない)から、暴行(実行の着手)後、挿入するまでの行為は未遂犯となります。その行為が挿入行為に近づけば近づくほど(たとえば、相手方の下着を脱がせる行為など)未遂犯とされやすくなると思いますが、遠くなればなるほど暴行罪との区別が付きづらくなることも確かです。
そうした場合は、犯人の内心、つまり、性交する意図があったか否かによって区別されます。ただし、内心は外からでは分かりにくいものですから、そのような意図があったか否かは,犯行時のAさんの言動や行為態様,犯行動機,犯行に至るまでの経緯,犯行後の状況などから判断されるものと思います。
~ おわりに ~
性犯罪事件では、被害者の供述の信用性を十分吟味する必要があります。性犯罪に慣れた弁護士であれば、被害者供述の信用性を的確に判断できますから、有りもしないことで訴えられた、疑いがかけられている罪に納得がいかない、などという方は弊所の弁護士までご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。お困りの方は,まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。無料法律相談,初回接見サービスを24時間体制で受け付けております。
ハプニングバーで公然わいせつ罪
ハプニングバーで公然わいせつ罪
~ケース~
Aさんは東京都青梅市でハプニングバーを経営しています。
ハプニングバーには、来客者全員が見られるショースペースが設けられており、性的な会話で盛り上がったお客さんが、ショースペースで性交などを行っていました。
ある日、ハプニングバーの営業中、警視庁青梅警察署の警察官が現れ、Aさんの店は捜索を受けました。
ショースペースで性交していた男女2名と、Aさんがそれぞれ公然わいせつ罪、公然わいせつ幇助罪の疑いで逮捕されてしまいました。(フィクションです)
~ハプニングバーとは~
訪れたお客さんが、アルコール等の提供を受け、性的な話で盛り上がり、場合によっては特別室などで性交を行うバーです。
性風俗店の営業に必要な届出などをしていないのが大半であるため、公然わいせつ罪に当たる行為を行えば摘発される可能性がある営業形態と言えます。
公然わいせつ罪は、その名の通り、公然とわいせつな行為をする犯罪です。
法定刑は、①6月以下の懲役、②30万円以下の罰金、③拘留、④科料のいずれかとなっています。
「公然」とは、不特定又は多数人が認識しうる状態を意味し、不特定又は多数人に現実に認識されたことは必要でなく、その可能性のある状態であれば足ります。
上記事例では、来客者全員が見られるようなショースペースにおいて、客である男女が性行為を行っています。
そうすると、「公然」と「わいせつな行為」を行ったとして、客である男女にはそれぞれ公然わいせつ罪が成立すると考えられます。
~幇助とは~
幇助犯とは、簡単に言えば、他人の犯罪行為を手助けした場合に成立する可能性のあるものです。
ケースの場合、Aさんがハプニングバーにショースペースなどを設置する等し、男女2名による公然わいせつ行為を容易にさせたと判断されたものと思われます。
そのため、Aさんには公然わいせつ幇助罪が成立すると考えられます。
~なぜAさんの店に警察がやってきたのか?~
おそらく、公然わいせつ罪に当たる行為が行われているとして、相当程度前から警察にマークされていたことが考えられます。
警察が、違法な性的サービスを提供している店をあらかじめマークし、内偵調査を重ね、強制的な捜査が可能な段階になると、捜索差押許可状を請求し、捜索を行うことがしばしばあります。
捜索の最中に犯罪行為が行われていれば、その場で現行犯逮捕されることもあります。
ケースの男女2名とAさんはそれぞれ現に公然わいせつ罪あるいはその幇助を行っていると判断されたので、逮捕されたものと考えられます。
~Aさんが逮捕された後どうなるか?~
警察署に引致された後、取調べを受け、留置の必要があると認められるときは、逮捕時から48時間以内に検察へ身柄が送致されます。
検察では、検察官が取調べを行い、身柄を受け取ったときから24時間以内かつ逮捕時から72時間以内にAさんの勾留を請求するか、釈放するか、あるいは起訴するかを決めることになります。
勾留されると、原則として10日間外に出ることができません。
さらに、やむを得ない事由があると認められると、勾留延長をされ、最長10日間拘束期間が伸びることが考えられます。
そして、検察官は、勾留の満期日までに、Aさんを起訴するか、釈放するか、あるいは不起訴にするかを決めることになります。
~取調べの対応方法の助言を受ける~
上記の通り、Aさんに公然わいせつ幇助罪が成立する可能性は高いと思われるので、弁護士の助言を聞いた上で、事実を認めて供述することも選択肢の一つです。
事件について素直に供述すれば、弁護士としてもAさんの勾留の阻止を実現しやすくなります。
なぜなら、きちんと供述して事件の解決に協力することで、逃亡や証拠隠滅のおそれといった勾留の要件に欠けると判断される可能性が高くなるからです。
一方、黙秘は、不用意に供述証拠を取られないようにする点で、被疑者被告人自身の供述が重要な証拠となる事件では重要な防御方法です。
しかし、ケースのような場合、Aさんがハプニングバーを経営してショーケースを設けているという客観的事実だけで公然わいせつの幇助犯と認定される可能性が高いです。
ここで黙秘を続けると、逃亡や罪証隠滅を疑われるだけでなく、事件の背後に反社会的な組織がある場合には、Aさんとそのような組織との関係の有無などについて疑われ、勾留による身体拘束が長期化することも考えられます。
ケースによっては、黙秘をすることによるデメリットを回避することも検討しなければなりません。
なるべく身体拘束が長期化しないよう、弁護士と相談しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が公然わいせつ幇助事件を起こし、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
初回法律相談:無料
騙して全裸を撮影し準強制わいせつ罪
騙して全裸を撮影し準強制わいせつ罪
~今回の事件~
神奈川県横浜市神奈川区在住のAさん(50歳)は、芸能プロダクションを経営しています。
Aさんは、モデル志望のVさん(20)に対して、「モデルになるためには全裸になって写真撮影されることも必要である」と誤信させて、Vさんの承諾を得て全裸にして写真撮影をしました。
翌日、Aさんは準強制わいせつ罪の疑いで神奈川県神奈川警察署の警察官に逮捕されてしまいました。
(これはフィクションです)
~問題となる犯罪~
刑法第178条 第1項
人の心身喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせてわいせつな行為をした者は、第176条の例による。(6月以上10年以下の懲役に処する。)
~準強制わいせつ罪~
準強制わいせつ罪は、刑法176条のように、暴力又は脅迫の手段を用いないが、被害者の抵抗困難な状態を利用するわいせつ行為を処罰するものです。
被害者の抵抗困難な状態は、「心神喪失」と「抗拒不能」の2つに分類されます。
「心神喪失」とは、「自分の性的自由が侵害されていることについての認識がない場合」をいいます。
睡眠、泥酔、失神などの状態のことを指します。
「抗拒不能」とは、「自己の性的自由が侵害されていることについての認識はあるが、物理的あるいは心理的に抵抗ができない、抵抗が著しく困難な場合」をいいます。
~わいせつな行為~
「わいせつ」という言葉だけでは、どのような行為が「わいせつ」に当たるかが不明確です。
そこで、「わいせつな行為」とは、裁判例によって「徒に性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為」と定義づけられています。
本罪は、個人の性的自由を保護するための条文なので、不特定多数の人がどのように感じるかではなく、被害を受けた相手がどのように感じるかが重視されます。
そのため、本罪の「わいせつな行為」に該当する行為は、公然わいせつ罪(174条)でいう「わいせつな行為」とは少し異なります。
たとえば、公共の場で無理やりキスをした場合、強制わいせつ罪における「わいせつな行為」には当たっても、公然わいせつ罪における「わいせつな行為」には当たらないと考えられます。
~被害者の承諾~
被害者自身が、自分への法益侵害を承諾している場合は、犯罪が成立しないことがあります。
つまり、わいせつな行為の相手方がその行為を許していれば、たとえ準強制わいせつ罪に当たる行為に及んでも無罪になるということです。
では、今回の事件では、AさんはVさんから承諾を受けているので、準強制わいせつ罪は成立しないのでしょうか。
裁判例では、「もし被害者が錯誤に陥っていなければ行為者に性的行為をゆるさなかったであろう」といえる場合には、被害者の承諾は無効であるとしています。
つまり、相手を騙す欺罔行為は、相手を心理的な抗拒不能状態にさせているとして、被害者の承諾を無効にして、準強制わいせつ罪の成立を認めるのです。
今回の事例において、Aさんは、Vさんにモデルになるためには全裸で写真撮影をされることが必要だと誤信させています。
Vさんは、Aさんが自分を騙していると分かっていれば、全裸で写真撮影をすることを許さなかったはずなので、Vさんの承諾は無効となり、Aさんの行為は準強制わいせつ罪に該当する可能性があるでしょう。
もしも、ご家族の方が、このような準強制わいせつ罪の疑いで逮捕されてしまった場合は、早急に刑事事件専門の弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は、逮捕されてしまった方のもとへ面会に行き、今後の対応の仕方や家族からの伝言を伝えることが可能です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に強い弁護士が無料法律相談、初回接見サービスをおこなっております。
無料法律相談や初回接見サービスの予約はフリーダイヤル0120-631-881にて
24時間受け付けておりますので、神奈川県横浜市神奈川区の準強制わいせつ事件など、刑事事件でお困りの方はお気軽にお問い合わせください。
監禁罪等で逮捕
監禁罪等で逮捕
Aさんは、Vさん(14歳・女性)を誘拐してわいせつなことをすることを計画し、Vさんの両親がおらず、Vさんが一人で自宅にいる時間帯を見計らってVさんの自宅に立ち入り、Vさんを無理やり連れ去った後、VさんをAさんの車の中に閉じ込めました。その後Aさんは、Vさんの両親により通報を受けた埼玉朝霞警警察署の警察官により、住居侵入罪、わいせつ目的略取罪及び監禁罪の容疑で逮捕されました。Aさんの家族は、刑事事件に強い弁護士に初回接見を依頼することにしました。
(フィクションです。)
~ はじめに ~
Aさんにはどんな罪が成立し、どんな刑罰を科される可能性があるのでしょうか?
~ 住居侵入罪(刑法130条前段) ~
住居侵入罪は、正当な理由がないのに、人の住居に侵入した場合に成立する罪です。
「侵入」とは、建造物の管理権者の意思に反する立ち入りをいいます。
AさんとVさんの両親とに面識がなければ、Aさんが勝手に立ち入っただけで「侵入」に当たるでしょうし、仮に面識があったとしても、Vさんの両親がAさんの略取目的での立ち入りを許すはずがありませんから、やはり「侵入」に当たると考えられます。
本罪の法定刑は「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」です。
~ わいせつ目的拐取罪(刑法225条) ~
わいせつ目的拐取罪は、わいせつな目的で人を略取・誘拐した場合に成立する罪です。
「略取」とは、暴行または脅迫を手段として、人をその生活環境から引き離し、自己や第三者の支配下に移すことをいいます。「略取」とは異なり、欺罔(騙すこと)や誘惑を手段として人をその生活環境から引き離し、自己や第三者の支配下に移した場合には「誘拐」となります。「略取」と「誘拐」とを合わせて「拐取」ともいい、いずれについても刑法第225条は禁止しています。AさんはVさんを無理矢理連れ出したということですから「略取」で逮捕されたものと考えられます。
本罪の法定刑は「1年以上10年以下の懲役」です。
なお、Vさんは未成年者(20歳未満の者)ですから、仮に、Aさんにわいせつ目的が認められなかった場合は未成年者拐取罪(3月以上7年以下の懲役)が成立する可能性があります。同罪は親告罪(被害者の告訴がなければ起訴されない罪)です。
~ 監禁罪(刑法第220条) ~
監禁罪は、不法に人を監禁した場合に成立する罪です。
「監禁」とは、一定区域からの脱出を不可能若しくは著しく困難にすることをいい、多少の時間的継続を必要とします。
Aさんが、一定時間、Vさんを自動車内に乗せて走行すれば「監禁」に当たる可能性はあります。
本罪の法定刑は「3月以上7年以下の懲役」です。
では、AさんがVさんにわいせつ目的での略取(連れ去り)を秘し、Vさんが不法に監禁されていることを認識していない場合、監禁罪は成立するでしょうか?
この点については、監禁罪の保護法益(守るべき利益)は「行動したいときに行動できる自由」(可能的自由)であることを理由に認識を「不要」とする立場と、保護法益は可能的自由だが可能的自由の根本は「人の意思」であるとして、認識を「必要」」とする立場があります。前者の立場の場合、監禁罪が成立し、後者の立場の場合成立しません。
なお、不要としている裁判例(広島高裁昭和51年9月21日)もありますが、オートバイに乗っている途中、被害者が「降ろして」と言った時点から監禁と評価した判例(昭和38年4月18日)もあります。
~ おわりに ~
最後に、上記3つの罪が成立した場合の罪数をご説明いたします。
まず、住居侵入罪とわいせつ目的略取罪は手段と結果の関係にありますから牽連犯となり、罪の重いわいせつ目的略取罪で処断されます(刑法54条1項)。次に、わいせつ目的略取罪と監禁罪は保護法益が異なることから併合罪となり、結果として、「1年以上15年以下の懲役」の範囲で処断されます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。刑事事件・少年事件でお悩みの方は、まずは、0120-631-881までお気軽にお電話ください。24時間、無料法律相談、初回接見サービスの受け付けを行っております。
準強制性交等罪で逮捕
準強制性交等罪で逮捕
兵庫県神戸市長田区に住むAさん。
友人の女性Vさんと飲みに行きました。
店を出たVさんは、
「終電で帰る」
と言っていますが、かなり酔ってフラフラの状態。
「これはチャンスだな」
と思ったAさんは、
「とりあえずウチで休んできなよ」
などと言って自宅に連れ込み、性交をしました。
後日、Vさんから被害届の提出を受けた兵庫県長田警察署の警察官により、Aさんは逮捕されました。
(フィクションです)
~強制性交等罪の成立条件~
Aさんの行為には、強制性交等罪または準強制性交等罪が成立する可能性があります。
まずは強制性交等罪から見ていきましょう。
刑法第177条
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
第38条1項
罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。
これらの条文をもとにすると、強制性交等罪の成立条件は
①暴行または脅迫を用いること
②性交等をすること
③被害者の同意がないこと
④故意(「罪を犯す意思」)があること
となります。
①暴行または脅迫を用いること
暴行または脅迫は、相手方の反抗を著しく困難にする程度のものである必要があります。
特に、「反抗を著しく困難」とは、具体的にどの程度のものかというのが問題となります。
これは各事件の個別的な状況をもとに判断されます。
以前は強い態様の暴行または脅迫がなければ条件が満たされないと考えられていました。
しかし、被害者としては無理やり性交されそうな状況になると、「抵抗するとさらに強い暴行されるんじゃないか」「殺されるかもしれない」といった恐怖心などから、大声を上げたり、男性を強く突っぱねたりすることが難しいことも多いです。
今後は、それほど強い態様の暴行または脅迫ではなくても、相手方の反抗を著しく困難にする程度のものであったと判断される傾向が強くなってくるかもしれません。
②性交等をすること
いわゆるアナルセックスやフェラチオでも性交「等」として条件を満たします。
③被害者の同意がないこと
強制性交等罪は同意がないことが前提となっているため、相手方の同意があれば成立しません。
④故意があること
故意があるというのは、簡単に言うと、犯罪行為をわざと行ったということです。
ちなみに。過失というのは犯罪行為を不注意で行ったということです。
強制性交等罪で特に問題となるのは、被害者が同意していないのに、同意していると思っていた場合です。
たしかに同意していると思っていたのであれば、わざと犯罪をしたわけではないので、故意が認められず犯罪は成立しません。
しかし、「同意がない」と明確に認識している場合はもちろん、「同意がないかも」と思っているだけでも故意があると評価されるのが実務上は一般的です。
それだけでなく、本人がいくら「同意があると思った」と弁解しても、それが警察官・検察官・裁判官にすんなり信じてもらえることは稀です。
特に①で書いたように、性犯罪の被害者は抵抗が難しく、明確な拒否がなくても同意がない場合があるとの知識が世間に広まっていけば、「同意があると思った」という弁解が通用しにくくなることは十分考えられます。
なぜなら、「被害者が強く抵抗していなくても、同意がない場合もあることは常識なのだから、あなたも同意がないかもと思っていただろう」と言われてしまう可能性があるからです。
~準強制性交等罪の成立条件~
Vさんが酔っていたことから、Aさんには強制性交等罪ではなく準強制性交等罪が成立する可能性もあります。
刑法第178条2項
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。
準強制性交等罪の成立条件は
①被害者が心神喪失または抗拒不能の状態にあること
②性交等をすること
③被害者の同意がないこと
④故意があること
となります。
強制性交等罪と比べると、①のみが違います。
つまり、暴行や脅迫をしなくても、相手が飲酒や薬物等を原因として抵抗できない状況にあることを利用して、あるいは飲酒や薬物摂取をさせて抵抗できない状況にさせて状況にさせて性交等をすれば、犯罪が成立するわけです。
~弁護士にご相談を~
逮捕されたAさんに対しては、こちらに記載されているように刑事手続が進んでいきます。
弁護士としては、早期釈放を実現させ、不起訴処分、罰金、執行猶予などの軽い処分や判決を目指して弁護活動をしていくことになります。
しかし、逮捕されるとご本人やご家族は、どんな罪が成立するのか、どのくらいの刑罰を受けるのか、刑事手続はどのように進んでいくのか、取調べにはどう受け答えしたらいいのか等々、不安点が多いと思います。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする弁護士事務所です。
ご家族などからご依頼いただければ、拘束されている警察署等にすみやかに接見に伺います。
また、逮捕されていない場合は、事務所での法律相談を初回無料で受けていただけます。
接見や法律相談では、上記の不安点などにお答えいたします。
刑事事件の経験が豊富な弁護士が対応いたしますので、強制性交等罪などで逮捕された、捜査を受けているといった場合には、ぜひ一度ご相談ください。
« Older Entries Newer Entries »