準強制わいせつ罪で自首

2019-09-14

準強制わいせつ罪で自首

~ケース~
Aさんは、深夜、兵庫県西宮市内にあるタクシーの待合所において、泥酔して眠っている女性Vを見つけ、わいせつな行為をしようと考えました。
そこで、Vに近づき、Vの上着の下から手を入れ、胸を弄んだり、スカートの中に手をいれ、陰部を弄んでしまいました。
待合所内に監視カメラがあることに気付き、Aさんは慌てて逃走しましたが、顔がカメラに写ってしまった以上、警察がいつ自宅に来るか不安なので、自首することを検討しています。相談を受けた弁護士は、準強制わいせつ罪が成立する可能性が高いこと、既に甲子園警察署が捜査している可能性があることを指摘し、自首について説明しました。(フィクションです)

~準強制わいせつ罪について解説~

準強制わいせつ罪とは、人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をする犯罪です。
法定刑は、強制わいせつ罪と同様6月以上10年以下の懲役となります。
「心神喪失」とは、意識喪失(睡眠・泥酔など)、高度の精神障害などによって性的行為につき正常な判断ができない状態にあることをいいます。
「抗拒不能」とは、心理的又は物理的に抵抗ができない状態をいいます。

「心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ」とは、犯人の行為と無関係に存在する抵抗不能状態を利用する場合を指します。
典型例として、すでに何者かによって手足を縛られている者や、第三者の暴行により気絶している被害者に対してわいせつな行為を行う場合が挙げられるでしょう。
ケースにおけるAさんの犯行も、これに該当する可能性が高いと思われます。

「心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて」とは、犯人が暴行・脅迫以外の手段で抵抗不能状態を惹起する場合と、暴行・脅迫時にはわいせつの故意がなかった場合があります。
典型例として、犯人が被害者に睡眠薬を飲ませ、睡眠状態に陥った被害者に対しわいせつな行為を行う場合、うっぷん晴らしに被害者を暴行した後、抗拒不能となった同人にわいせつな行為を行うことを企図し、わいせつな行為を行う場合が挙げられます。

~自首をするメリット、デメリット~

ケースのAさんは、まだ警察に逮捕されたり、あるいは任意で取調べを求められている状態にはありません。
しかし、カメラにAさんの顔が写ってしまった以上、警察が捜査を重ね、Aさんが被疑者として浮上する可能性は十分考えられます。
そこで、「自首」をすることにより、逮捕されるリスクを低減させたり、Aさんになされる処分を軽くする可能性を高めることができます。

刑法第42条1項は、「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる」としています。
「減軽することができる」という規定なので、必ず減軽の効果を受けられるというわけではないのですが、刑の減軽の効力(刑の期間や金額が2分の1になる)からするとやはり重要なものと言えるでしょう。
また、捜査機関に自ら犯罪を犯したことを申し出ているので、逃亡や証拠隠滅に及ぶ可能性が低いとして逮捕されずに済む可能性もあります。

上記のようなメリットがありますが、いくつか注意しなければならない点やデメリットがあります。
まず、刑法42条1項が定める法律上の「自首」は、その成立要件が比較的厳しいものとなっています。
上記「自首」の要件は、
①自発的に自己の犯罪事実を申告すること
②自己の訴追を含む処分を求めること
③捜査機関(検察官又は司法警察員)に対する申告であること
④捜査機関に発覚する前の申告であること
が必要です。
ケースの場合、④を満たすか否かが重要となるでしょう。
「発覚」とは、犯罪事実及び犯人の発覚をいいます。
防犯カメラの映像などを手掛かりに、犯罪事実(準強制わいせつ行為)、犯人(Aさん)の情報が捜査機関において判明した場合には、たとえ逮捕や呼び出しがなくとも④の要件を満たさなくなります。

また、上記の要件を満たして「自首」が成立しても、捜査機関に事件を知られてしまう以上、被疑者として通常どおり捜査は進められます。
逮捕に関しても、結局のところ捜査機関に委ねられているので、自首したからといって必ず逮捕されないというわけではない点も注意が必要です。

もっとも、法律上の「自首」が成立しなかったとしても、反省し処分に服しようとしているとして処分が軽くなる可能性もあります。
弁護士と相談し、上記のメリット、デメリットを検討した上で、自首をすることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門とする法律事務所であり、準強制わいせつ罪などの様々な性犯罪について初回無料でご相談いただけます。
準強制わいせつ事件を起こし、自首の要否についてお悩みの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。