準強制性交等罪と同意

2019-10-14

準強制性交等罪と同意

東京都新宿区に住むAさん(40歳)は、SNSで連絡を取り合っていたVさん(19歳)のことが気になり、実際に会ってみることにしました。そして、AさんはVさんとともにカラオケ店に入り、歌を歌ったり、お酒を飲むなどして楽しみました。そうしたところ、Vさんが酔いつぶれてその場に寝込んでしまいました。Aさんは、このVさんの様子を見て、「オレに気を許しているのではないか」などと思い、Vさんの下着を脱がして性交しました。
ところが、Aさんが行為をした後Vさんの意識が目覚め、カラオケ店の店員を通じて警視庁四谷警察署に通報され、準強制性交等罪逮捕されてしまいました。Aさんは警察官に「Vさんの同意があるものと思っていた。」などと話しています。
(フィクションです)

~ 準強制性交等罪(Aさんの罪) ~ 

Aさんの行為は、準強制性交等罪に当たる可能性が高いでしょう。準強制性交等罪は刑法178条2項に規定されています。

刑法178条2項
 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心身を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。
刑法177条
 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

「心神喪失」とは、精神の障害によって正常な判断能力を失っている状態をいいます。例えば、熟睡、泥酔・麻酔状態・高度の精神病などがこれに当たります。
「抗拒不能」とは、心神喪失以外の理由によって心理的・物理的に抵抗することが不可能又は著しく困難な状態をいいます。恐怖、驚愕、錯誤などによって行動の自由を失っている場合などはこれに当たります。
「(心身喪失・抗拒不能に)乗じる」とは既存の当該状態を利用することをいいます。「心神喪失・抗拒不能にさせる」手段には制限はありません。麻酔薬、睡眠薬の投与・使用、催眠術の施用、欺罔などはいずれもその手段となり得るでしょう。ただし、暴行または脅迫によった場合は、準強制性交等罪ではなく強制性交等罪に当たると考えられます。
「前条の例よる」の「前条」とは177条のことを指します。「例による」とは、法定刑を177条と同様、「5年以上の有期懲役」とするという意味です。

~ 準強制性交等罪と同意 ~

ところで、準強制性交等罪は「被害者の性的自由」を保護する(保護法益とする)罪ですから、被害者自身がその保護法益を自ら放棄する場合はもはやその被害者を法で保護する必要はありません。このように、法益の帰属主体たる被害者が、自分にとって処分可能な法益を放棄し、その侵害に同意又は承諾を与えることを被害者の「同意」とか「承諾」といいます。被害者の同意がある場合は、その行為に「違法性がない」とされ、行為者(犯人、被疑者、被告人)が罪に問われることはありません。
また、仮に被害者の同意がなかったとしても、行為者(Aさん)においてそう信じるにつき合理的な理由がある場合は「罪を犯す故意がない」とされ、準強制性交等罪は成立しません。

~ 故意がないと主張するには? ~

ただし、いくら故意がない、認識がないといっても捜査機関、裁判所は簡単には信じてくれないでしょう。
あなたは「同意があった」、被害者は「同意はなかった」といっているわけですから、どちらの話がより信用できるのか慎重に検討する必要があります。具体的には、あなたと被害者の関係、犯行に至るまでの経緯、犯行現場とされる現場の状況、犯行態様などをできる限り客観的な証拠(メールのやり取りなど)で精査していく必要があります。
その結果、被害者の話が信用できないということになれば、不起訴(嫌疑不十分)、無罪となる可能性が高くなるでしょう。
もっとも、こうした主張をする場合、反対に「反省していない」ともみなされかねませんから、弁護士とよく相談して慎重に検討していく必要があります。

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