性犯罪事件と裁判
「裁判」には、判決・決定・命令の3種類があり、これらは判断の主体や審理形式の違いにより区別されています。
ここでいう「裁判」とは、裁判所で有罪無罪を決めるために行う一連の裁判手続きの意味合いではなく、裁判所や裁判官による法的な判断ないし意思表示のことをいいます。
1 判決
判決とは、法廷での口頭弁論の手続きを経て示される裁判所の判断のことです。
刑事訴訟の判決は、公判廷における宣告によりなされ効力を生じるものであり、必ず判断の理由を付けなければなりません。
判決には、有罪・無罪・免訴・公訴棄却・管轄違いなど、いくつかの種類があります。
1-(ⅰ) 有罪判決
有罪判決は、検察官によって犯罪事実が証明されたときに、被告人に刑罰を言い渡す判決です。
裁判官が有罪の言渡しをするには、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示し、犯罪不成立あるいは減刑理由となる事実の主張に対する判断を示さなければなりません。
有罪判決が言い渡される際に、同時に、被告人の情状酌量に応じて、刑の執行猶予が付されたり、保護観察に付されたりすることがあります。
一方で、実刑判決(執行猶予が付されない判決)を受けた被告人は、直ちに刑の執行を受けることになり、懲役刑の実刑判決であれば刑務所に入所することになります。
さらに、刑の免除の判決も有罪判決の一つです。
刑の免除の判決は、被告人の行為について犯罪成立の要件を満たしているものの、法律で刑罰を免除するよう規定している場合に言い渡されます。
1-(ⅱ) 無罪判決
無罪判決は、被告人の行為が犯罪にならないと判断されたとき、あるいは犯罪事実があったとの証明が不十分と判断されたときに、被告人に無罪を言い渡す判決です。
なお、無罪判決を受けた被告人が、身体拘束中に受けた損失を補償する制度として刑事補償制度があり、裁判に要した費用の一部を補償する制度として費用補償制度があります。
2 決定
決定とは、訴訟手続上の付随的な事項について判断を示す場合などに、口頭弁論の手続きを必要としないで示される、裁判所の判断をいいます。
判決の場合とは異なり、上訴を許さない決定については、判断の理由を付けなくてもよいとされています。
決定に対しては、抗告・即時抗告・特別抗告といった手段で不服を申し立てることができます。
3 命令
命令とは、訴訟手続上の付随的な事項について判断を示す場合などに、裁判官によって行われる判断をいいます。
決定(裁判所が行う判断)と、命令(裁判官が行う判断)は、判断主体が異なっています。
上訴を許さない命令についても、判断の理由を付けなくてよいとされています。命令に対しては、準抗告で不服を申し立てることができます。
裁判所または裁判官による決定、命令の具体例としては、刑事裁判の手続きを進める上での様々な段取りや、勾留・保釈・接見・押収などがあります。
例えば、性犯罪・わいせつ事件で逮捕された者につき、裁判官による勾留決定(命令)がなされたことで、このままでは、さらに10日間の身体拘束がなされるような場合に、身柄解放の依頼を受けた弁護士が裁判所に準抗告をすることで、勾留を取り消すよう働きかけるといった釈放活動が考えられます。