強制性交等罪(旧強姦罪)で逮捕

2019-10-24

強制性交等罪(旧強姦罪)で逮捕

強制性交等罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例:Aは,京都府京田辺市内所在のホテル内で,V(20歳)と性行為を行った。
これに対し,Vは「上記性行為は,AがVに乱暴をはたらき無理矢理行ったものである」と主張している。
Vの主張を受け捜査を行った京都府田辺警察署の警察官は,Aを強制性交等罪の疑いで逮捕した。
Aは,警察の取調べに対して,Vに対して無理矢理性行為を強制した事実はない旨否認している。
Aの家族は,性犯罪事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実を基にしたフィクションです。)。

~強制性交等罪(旧強姦罪)の構造~

昨今,いわゆる旧強姦罪(現在は強制性交等罪)やそれに関連する性犯罪事件に関し,無罪判決が相次いだこともあり,大きな議論を呼んでいます。
上記判決(まだ下級審レベルではありますが)については,その肯否を含め議論されている段階です。
そこでもう一度,現在の強制性交等罪(旧強姦罪)の規定とその一般的な解釈について,通説実務の考え方を確認しておく必要があるでしょう。

刑法177条前段は,「13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する」と規定し,典型的には旧強姦罪のように,「暴行」や「脅迫」を用いて性行為を行うことを処罰する規定になっています。
つまり,まず強制性交等罪(旧強姦罪)の客観的要件として,加害者の行為が,「暴行」や「脅迫」を用いた性行為であるといえる必要があります。
原則として刑法は,「暴行」や「脅迫」を手段とする性行為を,強制的な性行為であるとして処罰する旨定めているのです。

では,どの程度の「暴行」や「脅迫」を加えた場合に,性行為を強制したといえるのでしょうか。
この点,通説実務によると,強制性交等罪(旧強姦罪)における「暴行又は脅迫」とは,被害者の反抗を抑圧するまでのものである必要はないが,被害者の反抗を著しく困難にする程度のものである必要があるとしています。
したがって,逮捕されてしまった被疑者や弁護士としては,被害者が反抗可能な状態にあったことを主張することも考えられるでしょう。
ちなみに,177条後段は「13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする(注:上記177条前段と同様とするという意味)」としており,13歳未満への「性交等」は,「暴行」「脅迫」要件を不要としている点にも注意が必要です。

また,実務上争いになることが多いのが,犯罪の主観面つまり故意(刑法38条1項本文)に関する争いです。
強制性交等罪(旧強姦罪)は,真意に基づく同意があるときは成立されないとされており,この同意の有無が争点になることがあります。
また,真実として同意がなかったとしても,加害者が被害者に真意に基づく同意があると誤信していた場合にも,違法な行為についての責任は問うことができないと考えられており,こちらも争点になることがあります。
もっとも,このような主観面の認定は上記の暴行・脅迫要件という客観面と一種の相関関係が認められ,弁護士としてもこれらの連関を注意深く検討することが必要となるでしょう。
たとえば、相手方をしこたま殴って性行為に至っているという事実があるのに,真意の同意があると誤信していたと主張することは,事実認定上かなり無理のある主張ということになり兼ねません。
「同意があると思っていた」と供述したからといって、その主張が直ちに認められるわけでということです。
したがって,否認事件においてどのような主張を行うかについても,十分に事実関係を整理した上で,弁護士と協議していくことが重要となってくるのです。

~性犯罪の非親告罪化~

また,昨今の実務に少なくない影響を与えたと考えられているのが,性犯罪の非親告罪化です。
かつて刑法は,180条において,本件のような強制性交等罪(旧強姦罪)を含む多くの性犯罪を,告訴を起訴するための条件とする「
親告罪」としていました。
しかし,「強姦罪」を「強制性交等罪」とするなど性犯罪の全面的改正をおこなった平成29年の刑法改正によって,上記親告罪規定を削除し,起訴の条件として被害者の告訴は不要となったのです。
これは,精神的にも大きなダメージを受けた性犯罪被害者にさらに告訴するかどうかを委ねることは,むしろ被害者にとって酷であることなどを理由としたものです。
もっとも,性犯罪が,被害者の心情等に特に配慮する必要がある犯罪であること自体は変わらないことから,事件を起訴するかどうかを含め,検察官や捜査機関には慎重な対応が求められることには変わりがないと言われています。
とはいえ,本件のように被害者の処罰意識が高いと思われる事件については,起訴される可能性を早い段階から意識した弁護活動が求められることになるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,強制性交等罪を含む性犯罪事件を多数扱った実績を持つ,刑事事件専門の法律事務所です。
強制性交等罪(旧強姦罪)で逮捕された方のご家族(あるいはお知り合いの方等)は,年中無休のフリーダイヤル(0120-631-881)に今すぐお問い合わせください。
否認事件に関する弁護活動経験も豊富な弁護士が,弁護活動をうけたまわります。
(無料法律相談のご予約はこちら