【事例解説】遊園地にいた小学生をトイレに連れ込んだ男を逮捕(前編)
遊園地で家族と一緒に遊びにきていた小学生を、わいせつ目的でトイレに連れ込んだとして、わいせつ目的誘拐罪等で男が逮捕された事件(フィクション)について、前編・中編・後編に分けて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
前編では、わいせつ誘拐罪と監禁罪について解説します。
・事例
東京都中央警察署は、家族と一緒に遊園地で遊んでいた小学生V(11)の女の子に対して、わいせつな行為をしようとしたとして、都内で自営業を営む男性A(35)をわいせつ誘拐罪の容疑で逮捕した。
Aは、遊園地で家族とはぐれ一人で歩いていたVに声をかけ、お母さんが待っている場所に連れて行ってあげると嘘をついてVを人気のないトイレに連れ込んだとされている。
トイレの中に入ってAが鍵をかけたところ、Vが「ここにもお母さんいないよ」と泣き始めたのをみて、Aはかわいそうに思いVをトイレから出してあげることにした。
歩き回って両親のもとに戻ったVが、知らない人(A)にトイレに連れ込まれたことを告げたところ、両親が被害届を出したため、防犯カメラからAが特定され逮捕されるに至った。
(フィクションです)
・わいせつ誘拐罪
本件で、Aは、遊園地で家族とはぐれたVを、わいせつ目的でトイレに連れ込んだようです。
この場合、わいせつ目的誘拐罪(刑法225条)が問題となります。
刑法225条(出典/e-GOV法令検索)
営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。
本罪における「誘拐」とは、欺罔または誘惑を手段とし、人を従来の生活環境から離脱させ、自己または第三者の事実的支配下に置くことを言います。
本件Aは、Vに対してお母さんのところに連れていくと嘘をついて「欺罔」していると言えます。
そして、「わいせつの目的で」Vの両親の手の届かない遊園地のトイレに連れ込んでいますから、Vを「従来の生活環境から離脱」させて「自己の事実的支配下」に置いたと言えそうです。
したがって、わいせつ目的誘拐罪が成立する可能性があります。
・監禁罪について
加えて、Aには監禁罪(刑法220条)が成立する可能性があります。
刑法220条(出典/e-GOV法令検索)
不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。
監禁罪は、人の身体的自由を侵害する犯罪です。
「監禁」とは人が一定の区域内から脱出することが不可能または著しく困難にすることとされています。
本件Aは、Vをトイレという区域に連れ込んで、脱出できないよう鍵をかけたようです。
小学生の女の子が成人男性であるAの目を掻い潜ってトイレから自力で脱出することは不可能でしょうから、AはVを監禁したとして監禁罪が成立する可能性があります。
・わいせつ誘拐罪・監禁罪における弁護活動
わいせつ誘拐罪は被害者のいる犯罪ですから、被害者との間で示談を成立させることができるかどうかが重要になってきます。
示談が成立すれば不起訴処分を得ることができるかもしれませんし、仮に起訴されたとしても刑が減刑されたり執行猶予がついたりする可能性があるからです。
ここで注意したいのは、示談交渉のため加害者自ら被害者の両親に直接連絡をとることは得策ではないということです。
本件Vの両親からすれば、Aは大切な子供にわいせつ行為をしようとしてトイレに連れ込んだ張本人なわけですから、当然Aに対して、強い処罰感情を有していると考えられ、連絡をとることすら拒絶されかねません。
そこで、示談交渉は法律のプロである弁護士に一任されることをおすすめします。
加害者と連絡をとることを拒絶される被害者であっても、弁護士相手であれば交渉に応じてくれることは少なくありません。