強制わいせつ致傷罪と裁判員裁判

2021-10-06

強制わいせつ致傷罪と裁判員裁判について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

仙台市内に住むAさんは、深夜、人通りの少ない市内の路上を歩いて帰宅していたところ、少し先を一人で歩く女性Vさんを見つけました。背格好などから自分の好みのタイプだと思ったAさんはVさんにわいせつな行為をしようと考え、Vさんに気付かれないように近づき、Vさんの背後から両手を回し、衣服の上からVさんの乳房を揉みました。ところが、Aさんは、Vさんから大声を上げられたためその場から立ち去ろうとしたところ、Vさんに追いかけられてきたことからVさんの顔面を手拳で1回殴打し、Vさんに鼻骨を骨折させる怪我を負わせました。その後、Aさんは強制わいせつ致傷罪で逮捕されました。
(フィクションです)

~強制わいせつ致傷罪~

強制わいせつ致傷罪は刑法181条1項に規定されています。
本罪は、強制わいせつ既遂罪、あるいは強制わいせつ未遂罪を犯し、よって人を死傷させた場合に成立する罪です。
法定刑は、無期又は3年以下の懲役です。

強制わいせつ罪は刑法176条に規定されています。

刑法176条
 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。 

「暴行」とは、他人の身体に対する有形力の行使をいい、脅迫とは、人を畏怖させるに足りる害悪の告知をいいます。
そして、強制わいせつ罪における暴行、脅迫の程度は、一般には、被害者の反抗を著しく困難ならしめる程度のものでなければならないとされています。
具体的には、殴る、蹴る、叩く、首を絞める、馬乗りになる、「殺すぞ」「家を焼くぞ」「裸の写真ネットにばらまくぞ」などと言うなどが挙げられます。
また、暴行それ自体がわいせつ行為であってもよいとされています。
「わいせつな行為」とは、徒に性欲を興奮又は刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道徳観念に反するような行為をいうと解されています。
具体的には、膣を触る、陰部に手を入れる、乳房を弄ぶ、相手方の感情を無視した接吻
などがこれに当たるでしょう。

以上からすると、Aさんには強制わいせつ既遂罪が成立する可能性が高いと思われます。

~裁判員裁判~

裁判員裁判とは、一般市民が裁判員として刑事裁判に参加し、被告人が有罪か無罪か、有罪の場合にはどのような刑にすべきかを裁判官と一緒に決める裁判制度のことをいいます。
裁判員裁判となる事件は、刑事裁判の中でも一定の重大事件だけです。
最も重い刑として死刑や無期懲役が定められている罪や、故意の犯罪行為で人を死亡させた罪に問われている事件です。
強制わいせつ致傷事件も裁判員裁判の対象となります。

裁判員は、裁判官と一緒に刑事事件の公判に出席します。
公判では、証拠として提出された物や書類を取り調べるほか、証人や被告人に対する質問も行われます。
そして、証拠に基づき、被告人が有罪か無罪かを検討し、決定します。
有罪とした場合には、被告人にどうような重さの刑罰を科すべきかについても判断します。
これらの判断は、裁判官3名と裁判員6名の合計9名で行なわれ、過半数の5名の意見が一致すれば決定となります。
ただし、被告人を有罪にする場合や、被告人に不利益な判断をする場合には、裁判官のうち少なくとも1名が加わっていなければなりません。

以上のように、裁判員裁判では、一般市民が裁判員となり、事実認定や刑の量定を決めることになります。
そのため、裁判員が十分に理解し納得するために、通常の裁判よりも分かり易く丁寧な説明を心がける必要があると言えます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を専門に扱っており、これまでも数多くの刑事事件を経験してきました。
刑事事件における豊富な経験や知識を活かし、裁判員裁判にもしっかりと対応し最善の弁護活動を行います。
強制わいせつ致傷事件で、ご家族が逮捕されてお困りの方、裁判員裁判に対応する刑事事件に強い弁護士をお探しであれば、弊所にご相談ください。