強制わいせつ致傷罪で逮捕

2019-04-17

強制わいせつ致傷罪で逮捕 

埼玉県行田市に住むAさんは,深夜,人通りの少ない市内の路上を歩いて帰宅していたところ,少し先を一人で歩く女性Vさんを見つけました。
背格好などから自分の好みのタイプだと思ったAさんは,Vさんにわいせつな行為をしようと考え,Vさんに気付かれないように近づき,Vさんの背後から両手を回し,衣服の上からVさんの乳房を揉みました。
Aさんは,Vさんが大声を上げたことからその場から逃げました。
Aさんは,追いかけてきたVさんの顔面を手拳で1回殴打し,Vさんに鼻骨を骨折させる怪我を負わせました。
Aさんは,その後,埼玉県行田警察署強制わいせつ致傷罪逮捕されました。
(フィクションです)

~ 強制わいせつ致傷罪 ~

強制わいせつ致傷罪は刑法181条1項に規定されています。

刑法181条1項
 第176条若しくは第178条1項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し,よって,人を死傷させた者は,無期又は3年以下の懲役に処する。

第176条
 13歳以上の者に対し,暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は,6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の男女に対し,わいせつな行為をした者も,同様とする。

以上からすれば,強制わいせつ致傷罪が成立するためには,強制わいせつ罪(刑法176条)又はその未遂罪が成立し,よって,人に怪我をさせたことが必要です。
ですから,まず,強制わいせつ罪について解説いたします。

~ 強制わいせつ罪(刑法176条) ~

上記でご紹介したように,強制わいせつ罪は刑法176条に規定されています。

= わいせつな行為 =

わいせつな行為とは,徒に性欲を興奮又は刺激させ,かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し,善良な性的道徳観念に反するような行為をいうと解されています。
具体的には,

・膣を触る
・陰部に手を入れる
・乳房を弄ぶ
・相手方の感情を無視した接吻

などがこれに当たるでしょう。

= 暴行又は脅迫 =

暴行とは,他人の身体に対する有形力の行使をいい,脅迫とは,人を畏怖させるに足りる害悪の告知をいいます。
そして,強制わいせつ罪における暴行,脅迫の程度は,一般には,被害者の反抗を著しく困難ならしめる程度のものでなければならないとされています。
具体的には,

・殴る,蹴る,叩く
・首を絞める,馬乗りになる
・「殺すぞ」「家を焼くぞ」「裸の写真ネットにばらまくぞ」などと言う

などが挙げられます。
また,暴行それ自体がわいせつ行為であってもよいとされています。
例えば,

・女子の意思に反して指を陰部内に挿入する行為
・女子の意思に反して手でその陰部を弄び,背後から抱きしめ,その陰部に自己の陰部を強く押し当てる行為
・女子の意思に反して接吻する行為

などが挙げられます。
本件の「Vさんの背後から乳房を揉む行為」もこれに当たるでしょう。

= 性的意図? =

かつては,強制わいせつ罪の成立には,行為者の性欲を刺激,興奮させ,又は満足させる性的意図が必要とされていました。
しかし,近年,最高裁はこれを不要と判示しています(平成29年11月29日)。

~ その他要件 ~

その他に,強制わいせつ致傷罪が成立するための要件としては,「相手方に怪我が生じたこと」が必要です。
どの程度の怪我であることを必要とするのかについては争いのあるところですが,判例の大勢は,傷害罪の「傷害」と統一的に解釈すべきものとしています。
なお,骨折は明らかに怪我と認定されます。
次に,強制わいせつ行為と怪我との間に「因果関係」の存在することが必要です。
この点,本件では,Aさんがわいせつ行為を行い終わった後,つまり,わいせつ行為を行う意思を喪失した後にVさんに暴行を加え,怪我をさせていることから,「因果関係」を認めることができるのか争点となり得るところです。
しかし,判例(平成20年1月22日)は,同様の事案で「因果関係」有りと判示しています。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,強制わいせつ致傷罪などの性犯罪をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。

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(埼玉県行田警察署までの初回接見費用:42,720円)