強制性交等罪と住居侵入罪

2019-09-04

強制性交等罪と住居侵入罪

福岡県北九州市に住む会社員男性のAさん(28歳)は、長年交際していたVさん(27歳)から突然別れ話を切り出されました。これに納得がいかなかったAさんは、Vさんを説得しようとVさんから断られていたにもかかわらずVさんアパートに押し掛けました。そして、Aさんは、玄関ドア越しに「お前の裸の写真を持っている。」「ドアを開けなければ写真をネット上にばらまくぞ。」と言って脅してVさんに玄関ドアを開けさせ、いきなりVさんをその場に押し倒してVさんに性交しました。その後、Aさんは、福岡県小倉南警察署住居侵入罪強制性交等罪通常逮捕されてしまいました。
(フィクションです)

~ 強制性交等罪とは ~

強制性交等罪は刑法177条に規定されています。

刑法177条

 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有機懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

= 13歳以上の者とは =

改正前の刑法177条は

「13歳以上の『女子』を姦淫した者は」

と規定されていました。しかし、改正後は「13歳以上の『者』」と改められ、男子も保護の対象となりました。したがって、女子による男子への、および男子による男子への性交等も処罰の対象となります。

= 暴行・脅迫 =

一般に、「暴行」とは人の身体に対する有形力の行使、「脅迫」とは人を畏怖させるに足りる害悪の告知のことをいいます。そして、強制性交等罪の暴行・脅迫の程度は

相手方(被害者)の反抗を著しく困難しらしめる程度

であることが必要とされています。
具体的には、相手方を殴る、蹴る、叩く、武器を使用して殴る・叩く、馬乗りになる、羽交い絞めにする、縄などで縛る、その場に押し倒すなどの行為は「暴行」に当たるでしょう。

= 性交等とは =

性交の他に、肛門性交(アナルセックス)、口腔性交(オーラルセックス)も含まれます。性交とは膣内に陰茎を入れる行為、肛門性交とは肛門内に陰茎を入れる行為、口腔性交とは口腔内に陰茎を入れる行為をいいます。
行為者が自己又は第三者の陰茎を被害者の膣内、肛門内、口腔内に入れる行為(加害者:男性、被害者:女性又は男性)だけでなく、自己又は第三者の膣内、肛門内、口腔内に被害者の陰茎を入れる行為(加害者:女性又は男性、被害者:男性)も含まれます。

~ 住居侵入罪とは ~

住居侵入罪は刑法130条前段に規定されています。

刑法130条前段
 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物(略)に侵入し(略)た者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

「侵入」とは管理者、本件の場合、Vさんの意思に反する立入り行為をいうとされています。AさんがいくらかつてVさんと交際していたとはいえ、行為時には、Vさんから別れを切り出されている上、Vさんから自宅アパートに来ないよう断られてたことなどからすれば、Aさんの立ち入り行為が「侵入」に当たることは明らかでしょう。

なお、住居侵入罪強制性交等罪の双方が成立し、双方が手段と結果の関係にある場合は、刑の重い強制性交等罪で処罰されます。

~ 今後の流れ ~

強制性交等罪を疑われれば、逮捕勾留される可能性が高いといえます。まず、強制性交等罪は刑自体が重いことから、被疑者が逃亡や証拠隠滅を図りやすいと評価される傾向にあります。その上、強制性交等罪の立証においては、被害者の供述(話)が重要な証拠となりうるところ、加害者を釈放してしまえば、何らかの形で被害者に接触して被害者に被害届を取下げさせたり、被害者の供述を自分に有利な供述に変えるなどの「罪証隠滅行為」に出るおそれが高いとも考えられます。こうした事情から、逮捕勾留がされやすくなっているのです。
また、起訴され、刑事裁判で「有罪」と認定されれば、高い確率で「実刑」となるおそれがあり、その裁判が確定した後は、刑務所に服役しなければならなくなります。執行猶予付き判決を受けるには、裁判で「3年以下の懲役」の言い渡しを受ける必要がある(刑法25条1項)ところ、強制性交等罪は最低が「懲役5年」だからです。ただし、示談などの有利な事情があれば、刑の減軽によって3年以下の懲役が言い渡され、執行猶予が付される可能性があります。

~ 弁護活動 ~

強制性交等罪の弁護活動としては、まず、上記の「罪証隠滅行為」や「逃亡」のおそれを払拭して身柄を拘束された方の釈放を目指します。

= 事実を認める場合 =

上記に加え、被害者との示談交渉に入ります。上記のとおり、強制性交等罪で起訴されると高い確率で「実刑」となりますから、まずは起訴そのものを回避する弁護活動を行うべきです。

= 事実を認めない場合 =

この場合、被害者の供述の信用性が争点となりますから、被害者の供述の信用性に疑いを挟む事実・証拠を収集するなどして、まずは処分を決める検察官に意見書などを提出して不起訴獲得を目指します。仮に、裁判になった場合は、被害者の供述の信用性を争い、無罪獲得を目指します。

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