強制性交等致死傷罪で逮捕

2019-06-06

強制性交等致死傷罪で逮捕

神奈川県横浜市金沢区に住むAさん(44際)は、会社を突然クビになったことから、憂さ晴らしに深夜女性を襲って性交しようと考えました。そして、ある日の深夜、Aさんは、一人で歩いているVさん(20歳)に「ちょっと道を尋ねたいんだけど」などと声をかけて呼び止め、いきなり右手でVさんの頸部を強く締め付け、近くの公園の草むらに引きずり込んで仰向けに押し倒し、さらに頸部を強く締め付ける暴行を加えるなどしてVさんと性交しました。そして、その際、Vさんに加療約1か月間を要する怪我を負わせてしまいました。
その後、Aさんは強制性交等致傷罪の疑いで神奈川県金沢警察署逮捕されました。
(フィクションです。)

~ はじめに ~

強制性交等罪については、この弊所の性犯罪サイトに掲載されているコラムでも繰り返し紹介されてきたと思います。そこで、今回は、強制性交等罪を犯し、さらに被害者を死傷させた場合に成立する強制性交等致死傷罪についてご紹介したいと思います。

~ 強制性交等致死傷罪とは ~

本罪は刑法181条2項に規定されています。

刑法181条2項
 第177条,第178条第2項若しくは第179条第2項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し,よって人を死傷させた者は,無期又は6年以上の懲役に処する。

「177条の罪」とは強制性交等罪のことを意味します。つまり、強制性交等致死傷罪は、強制性交等罪などの既遂罪あるいは未遂罪を犯し、よって人を死傷させた場合に成立する罪です。

= 強制性交等罪とは =

強制性交等罪は、13歳以上の者に対しては、「暴行」又は「脅迫」を用いて性交等(性交、肛門性交、口腔性交)した場合に成立し、13歳未満の者に対しては、「暴行」又は「脅迫」は不要で、13歳未満であることの認識があり、かつ「性交等」があれば成立する犯罪です。

= 未遂罪でも本罪が成立 =

本罪は、強制性交等罪が既遂の場合のみならず、未遂の場合でも成立します。つまり、本罪は、強制性交等に関する行為が行われた際は、その既遂、未遂を問わず、被害者を死亡させたり、怪我を負わせたりする可能性が類型的に高いことから処罰するとされたもので、基本犯(強制性交等罪)が未遂の場合に処罰できないとすると刑責を達することができなくなるからです。ただし、基本犯が既遂か未遂かは量刑の場面で違いが出てくるものと思われます。

= 「よって」の意味 =

「よって」とは、基本犯たる強制性交等罪と結果たる「死傷」との間に因果関係が必要であること、犯人は結果たる「死傷」の発生を予見・認識する必要はないことを意味します。つまり、「性交するため被害者に暴行を加えていたところ、気づかぬうちに被害者が怪我を負っていた」という場合でも本罪が成立する可能性があります。
因果関係については、実務上、よく「強制性交等の機会」という言葉が使われます。「死傷」が「強制性交等の機会」に生じたのであれば本罪が成立する可能性があります。したがって、犯人から逃げようとした被害者が自分で転倒して怪我した、という場合も「強制性交等の機会」に生じたとして本罪が成立する可能性があります。

* 殺意がある場合は? *

先ほど、本罪は、怪我や死の結果を認識していない場合に成立するものだとご説明いたしました。では、死の結果を認識・認容していた(つまり殺意があった)場合、本罪は成立するのでしょうか?
この点、強姦罪(現:強制性交等罪)が生きていた頃の事例で、殺人罪強姦致死罪が成立するとし、両者は科刑上一罪(観念的競合)とした判例が参考となります(昭31年10月25日)。
観念的競合となった場合に科すことができる刑については、刑法54条1項が「その最も重い刑により処断する」としています。そのため、殺人罪強盗致死罪を犯した場合の刑は、死刑または無期もしくは6年以上の懲役ということになるでしょう。

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