風営法でママが逮捕

2019-06-01

風営法でママが逮捕 

Aさん(40歳)は,埼玉県さいたま市見沼区内でスナックの営業をはじめて6か月を迎えようとしていました。そうしたところ,埼玉県大宮東警察署の警察官がスナック店に入ってきて,逮捕状を見せられ,「あなたを風営法違反で逮捕する」と言われ逮捕されてしまいました。Aさんは「風俗営業の許可はとっている!」と反論しましたが,警察官は「そうじゃなくて,あの子に接待させたやろ」「その件よ」とボックス席に座っていた女の子を指さしました。Aさんは何のことを言われているのかわからず,後日,確認したところ,Aさんは「18歳未満の者に接待をさせていた件」で逮捕されたとのことでした。Aさんは,接見に来た弁護士に,「18歳未満とは知らなかった」などと話しています。
(フィクションです)

~ 風俗営業の許可 ~

風俗営業を営むには,風俗営業の種別に応じて,営業所ごとに,当該営業所の所在地を管轄する都道府県公安委員会の許可を受けなければなりません(風営法3条1項)。これを怠ると,「2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金又は併科」(風営法49条1号)の処罰を受けるおそれがあります。

* 「風俗営業」とは *

風俗営業」の種別については,風営法2条1項各号に規定されています。簡素化してまとめると以下のとおりとなります。

1号営業:社交飲食店,料理店(キャバレー,スナック,パブ,キャバクラ,ラウンジなど)
2号営業:低照度飲食店(カップル喫茶など)
3号営業:区画席飲食店(ネットカフェなど)
4号営業:マージャン店,パチンコ店など
5号営業:ゲームセンター,ダーツバーなど

~ 風俗営業の禁止行為 ~

さらに,風営法22条1項各号には,以下のとおり,「風俗営業」における禁止行為を定めています。もちろん,風俗営業の許可を受けていた場合でも禁止されています。つまり,風俗営業を営む者は,上記の許可を受けた上で,さらに,以下の行為も行ってはならないということになります。

1号:客引きをすること
2号:客引きのための立ちふさがり,つきまといをすること
3号:営業所で18歳未満の者に客の接待をさせること
4号:営業所で18歳未満の者を客に接する業務に従事させること(午後10時から午前6時までの間)
5号:18歳未満の者を営業所に客として立入らせること
6号:営業所で20歳未満の者に酒類又はたばこを提供すること

* 「接待」の意義 *

接待」とは,風営法2条3項で

歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすことをいう

とされています。具体的には,平成30年1月30日,警視庁生活安全局が発出している

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準

の「第4 接待について」という項目が参考になります。

それによると「接待」とは,

営業者,従業者等との会話やサービス等慰安や歓楽を期待して来客する客に対して,その気持ちに応えるため営業者側の積極的な行為として相手を特定して3の各号に掲げるような興趣を添える会話やサービス等を行うことをいう。言い換えれば,特定の客又は客のグループに対して単なる飲食行為に通常伴う提供を超える程度の会話やサービス行為等を行うこと

とされています。具体例として,「談笑,お酌等」,「ショー等」,「歌唱等」,「ダンス」,「遊戯等」,「その他」の項目が挙げられています。それぞれの具体的な解釈基準については,上記運用基準を参照されてください。

* 罰則 *

風営法22条1項3号に違反した場合は,

1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処せられ,場合によっては,懲役刑と罰金刑を併科(両方の刑を受ける)

されるおそれがあります(風営法50条1項4号)。

* 18歳未満と知らなかった場合は? *

18歳未満であることを知らなかったことを理由に処罰を免れることはできないとして過失規定を設けています(風営法52条2項)。過失規定は不注意により知らなかったという場合でも処罰されるという規定ですから,処罰される可能性としては広がっていることを意味します。一応,同項但書で,「過失のないときは処罰されない」旨規定されていますが「過失がない」とされるためには,本人の陳述,身体的発育状況等の外観的事情を覚知しただけでは足りず,運転免許証や戸籍謄本等の信用性のある公的資料等で確認するとか,家族等に事情を聴いて調査するなど年齢確認につき万全を期さなければならないと考えられています。
したがって,年齢不知を理由に処罰を免れることができるのはかなり限定的と言わざるを得ません。

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