禁止命令とストーカー規制法違反
禁止命令とストーカー規制法違反
ストーカー行為により禁止命令を受けたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~ ケース ~
会社員のAさんは、SNSを通じて知り合った女性Vさん(埼玉県さいたま市在住)と約半年間、交際を続けていたところ、突然、Vさんから別れ話を切り出されました。Aさんは納得がいかずVさんと関係を戻すため、「話をしたい。」などとメールを送ったり、電話をかけるなどしてVさんとの接触を試みましたが、Vさんからの反応は全くありませんでした。そこで、Aさんは休みの日、Vさんの生活圏内でVさんを見つけ、Vさんに見つからないようにVさんの後を付いていき、Vさんの自宅アパートを特定しました。そして、後日、AさんはVさんが自宅アパートから出てきたところ、Vさんと接触しました。AさんはVさんによりを戻そうと働きかけましたが、やはり断られました。そして、Aさんは埼玉県岩槻警察署から「今後一切、Vさんと接触してはならない」旨の禁止命令を受けました。ところが、AさんはVさんのことを忘れることができず、再びVさんが自宅アパートから出てくるところを待ち伏せしていたところ、岩槻警察署の警察官からストーカー規制法違反で逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)
~ ストーカー規制法違反の禁止命令 ~
ストーカー規制法5条1項では、
・被害者等の身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせる「つきまとい等」(後述)があって
・上記つきまとい等をした者が、さらに反復して当該つきまとい等をするおそれがあると認められ
・都道府県公安委員会が、被害者等からの申出、又は職権
により、都道府県公安委員会が、当該つきまとい行為をした者に対し、
・更に反復して当該行為をしてはならないこと(1号)
・更に反復して当該行為が行われることを防止するための必要な事項(2号)
を命じる(禁止命令等)ことができると定められています。
基本的に禁止命令等は「禁止等命令書」という文書の交付を受けて通知されますが、そのいとまがないと判断された際は「口頭」で通知されることもあります(後日、禁止等命令書を交付されます)。
禁止命令等は、禁止命令等より軽微な措置である「警告」を経なくても発することができます。
また、警告と異なり、被害者等の申し出によらず、職権(公安委員会の判断)で発することも可能とされています。
禁止命令等の効力は、禁止命令等をした日から起算して1年ですが、期間を延長されることがあります。
禁止命令等は行政処分の一種ですから、禁止命令等が発せられるにあたって聴聞の機会が与えられますが、緊急の場合には聴聞又は弁明の機会を与えなくてもよいとされています。
~ 禁止命令等に違反してストーカー行為を行った場合 ~
ストーカー規制法19条では、
禁止命令等(5条1項1号に係るものに限る。)に違反してストーカー行為をした者は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処する。
と定められています。
まず、「禁止命令等に違反して」とありますから、ご自身で禁止等命令書の内容を確認する必要があります。
また、「ストーカー行為」の意義については、ストーカー規制法2条3項に規定されています。
ストーカー規制法2条3項
この法律において「ストーカー行為」とは、同一の者に対し(ア)、つきまとい等(イ)(第1項第1号から第4号まで及び第5号(電子メールの送信等に係る部分に限る。)に掲げる行為については、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。)を反復してすること(ウ)をいう。
※(ア)~(ウ)は執筆者による
つまり、
ア 同一の者に対する
イ 「つきまとい等」を
ウ 反復してすること
という要件を満たした場合に「ストーカー行為」とされると言えます。
「つきまとい等」とは、
・つきまとい・待ち伏せ・押し掛け・うろつき等
・監視していると告げる行為
・面会や交際の要求
・乱暴な言動
・無言電話、拒否後の連続した電話・ファクシミリ・電子メール・SNS等
・汚物等の送付
・名誉を傷つける
・性的しゅう恥心の侵害
の8つです(詳細はストーカー規制法2条1項を参照)。
ストーカー行為規制法違反の疑いで逮捕された場合、長期間身柄拘束されることも予想されます。
早期の釈放を望まれる場合は、弁護士に弁護活動をご依頼ください。
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