【報道解説】下着を無理やり脱がせて傷害を負わせ強制わいせつ致傷で逮捕
【報道解説】下着を無理やり脱がせて傷害を負わせ強制わいせつ致傷で逮捕
男性の同僚の下着を無理やり脱がせた際に傷害を負わせたとして男らが強制わいせつ致傷罪で逮捕された刑事事件例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【報道紹介】
「警視庁葛飾署は9日、『アート引越センター』社員(27)(東京都江戸川区)、同社アルバイト(52)(葛飾区)ら男4人を強制わいせつ致傷容疑で逮捕した。
葛飾署幹部によると、4人は4月30日未明、社員の男の自宅マンションで同僚の20歳代男性の体を押さえつけて無理やり下着を脱がせ、腹部に全治約3週間の傷害を負わせた疑い。いずれも容疑を認めている。
男性が5月に葛飾署に相談して発覚した。」
(令和4年11月14日に読売新聞オンラインで配信された報道より引用)
【強制わいせつ致傷罪とは】
刑法176条では、13歳以上の者に対して暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした場合に強制わいせつ罪が成立するとしており、さらに強制わいせつ罪によって人を傷させた場合には刑法181条1項のわいせつ致傷罪が、死亡させた場合には同じく刑法181条1項の強制わいせつ致死罪(あわせて「強制わいせつ致死傷罪」と言うことがあります)が成立することになります。
今回取り上げた報道では、逮捕された男性らは、被疑者の男性の身体を押さえつけるという暴行を用いて、下着を無理脱がせるというわいせつな行為をし、この時、被害者の男性に腹部に全治約3週間の傷害を負わせた疑いがあるとのことですので、仮にこれが事実であれば、強制わいせつ致傷罪が成立することになるでしょう。
【いじめ目的で下着を脱がせることも「わいせつ」?】
ところで、強制わいせつ罪が成立するためには、昭和45年1月29日に出された最高裁判所の判例によって、「犯人の性欲を刺激興奮させまたは満足させる」という性的意図(わいせつ目的)が必要であるとされてきました。
強制わいせつ罪の成立の要件としてわいせつ目的が必要であるとすると、今回取り上げた報道のように、いじめ目的で自分と同じ性別の被害者の下着を無理やり脱がせたという場合はわいせつ目的が存在しないとして強制わいせつ罪が成立しない可能性が高いといえます。
しかし、わいせつ目的を一律に強制わいせつ罪の成立要件とする昭和45年の最高裁判所の判例は、平成29年11月29日に出された最高裁判所の判例によって変更されました。
この平成29年の判例によると、被害者の下着を無理やり脱がすという行為それ自体が性的な意味合いが強い行為を行った場合には、犯人の意図にかかわらず強制わいせつ罪が成立することになると考えられています。
そのため、この平成29年の判例が出された現在では、わいせつ目的で下着を脱がせた場合はもちろん、いじめ目的で下着を脱がせた場合であっても強制わいせつ罪が成立することになるでしょう。
【ご家族が強制わいせつ(致傷)罪で逮捕されたら】
ご家族が強制わいせつ罪や強制わいせつ致傷罪の疑いで逮捕されたことを知った場合は、まずは弁護士に依頼して初回接見にいってもらうことをお勧めします。
この初回接見によって、弁護士が直接逮捕された方から事件について話を聞くことができますので、事件の見通しや今後の手続きの流れなどを知ることができます。
また、強制わいせつ罪の法定刑は6月以上10年以下の懲役刑で、強制わいせつ致傷罪の法定刑は無期又は3年以上の懲役刑となっていて、罰金刑が定められていないことから両者の法定刑は比較的重いといえます。
ただ、このように比較的刑が重い強制わいせつ罪や強制わいせつ致傷罪であっても、行ったわいせつ行為の態様や、被害者の方の傷害の程度などによっては、被害者の方と示談を締結することができれば起訴を回避することも可能になる場合があります。
そのためには、弁護士が初回接見をきっかけに事件に早期に関与して、示談を検察官が起訴を決定するまでにまとめることが必須となってくるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
ご家族が強制わいせつ罪や強制わいせつ致傷罪の疑いで逮捕されてお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。