不退去罪で取調べ

2020-03-01

今回は、不退去事件を起こした大学生の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~ケース~

京都市上京区に住むAさんは3回生の大学生です。
深夜、友人女性V宅に遊びに行っていたところ、同女と性交したいと考えたので、「一発やらせてほしい」などと依頼しました。
同女はこれを拒絶し、Aさんに何度も帰るよう要求したのですが、Aさんがしつこく性交を要求するので、Vはやむなく京都府上京警察署を呼びました。
Aさんは任意同行を求められ、取調べを受けました。
Aさんが逮捕されることはありませんでしたが、警察官からは「これから何度か出頭してもらうことになる。呼ばれたら警察署に来てほしい」と告げられています。
Aさんはこれからどうなるのでしょうか。(フィクションです)

~聞き慣れない「不退去罪」について解説~

正当な理由がないのに、要求を受けたにもかかわらず、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船から退去しない犯罪です(刑法第130条後段)。
刑法第130条前段においては、巷においてもよく知られている「住居侵入等罪」が定められていますが、同条後段においては、「不退去罪」という犯罪が定められています。

不退去罪の主体は、適法に又は過失により「人の住居」、「人の看守する邸宅、建造物、艦船」に立ち入った者に限られます。
したがって、違法に人の住居等に侵入し、住居侵入等罪が成立する場合には、不退去罪は成立しません(最高裁昭和31年8月22日決定)。

「要求を受けたにもかかわらず」という文言ですが、退去するよう要求しうる者は、住居侵入罪における立入りに有効な承諾を与えうる者をいい、これらの者から退去要求の権限行使を委任された者も、その範囲内で退去を要求できます。
住居の管理権者は、「退去するよう要求し得る者」に該当するでしょう。

「不退去」とは、文字通り、正当な理由なく、住居等から退去をしないことをいいます。

~ケースの場合を検討~

(Aさんは不退去罪の主体になるか?)
AさんはVの友人であり、V宅に遊びに行っていた、ということですから、V宅に立ち入ることについては、Vの承諾があったものと考えられます。
したがって、Aさんの立入りは適法なので、Aさんは不退去罪の主体になり得ます。

(「要求を受けたにもかかわらず」という点)
Vは、V宅について管理権を有していると考えられるので、「退去するよう要求し得る者」に該当すると思われます。
AさんがVにしつこく性交を求めたところ、Vに何度も帰るよう求められた、という事実関係においては、「要求を受けたにもかかわらず」という要件を満たすと考えられます。

(Aさんの不退去)
Vから何度も帰るよう告げられているのに、V宅を出て行かなかったAさんの行為は「不退去」に当たるでしょう。

以上の事実関係によれば、Aさんに不退去罪が成立する可能性は高いと思われます。

~今後必要な弁護活動~

事件を検察に送致せず、警察限りで終了させる「微罪処分」という事件処理があります。
しかし、不退去の動機が性的満足を得るというものであることを考慮すると、微罪処分は難しいかもしれません。
事件が検察に送致され、起訴されてしまうと、前科がついてしまう可能性が極めて高いです。

そこで、Vと示談をし、不起訴処分を目指すことが考えられます。
不起訴処分を獲得できれば、裁判にかけられることはないので、前科を付けずに事件を解決できることになります。
ケースのAさんは悪質な強制性交等罪や、強制わいせつ罪を犯したわけではなく、被疑事実は不退去罪のみに留まるでしょう。
このような場合は、不起訴処分を獲得できる見込みが十分あります。
弁護士のアドバイスを受けながら、事件解決を目指していきましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
不退去事件を起こしてしまい、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。