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【事例解説】わいせつ目的で幼児を多目的トイレに連れ込み逮捕(前編 ※わいせつ誘拐罪、監禁罪の成立についての解説)

2023-12-07

 わいせつ目的で幼児を多目的トイレに連れ込み、わいせつ誘拐罪などで逮捕された架空の事件を参考に、わいせつ誘拐罪、監禁罪、不同意わいせつ罪の成立とその弁護活動及び未遂と中止未遂ついて、前編・後編に分けて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

参考事件

 京都市内のショッピングモールで、女児V(4歳)を多目的トイレに連れ込み、わいせつな行為をしようとしたとして、京都市在住の会社員の男A(25歳)が、わいせつ誘拐、監禁、不同意わいせつ未遂の容疑で逮捕されました。
 警察の調べによると、犯行当時、玩具売場で母親から離れて1人で遊んでいるVに、「お母さんが探している」と嘘を告げ、わいせつ行為を行う目的で、玩具売場外の多目的トイレに連れ込んで中から鍵をかけたところ、Vが泣き叫んだため解放したとのことです。
 Aは容疑を認めており、「Vが泣いてかわいそうになったので、わいせつ行為には及んでいない」と供述しているとのことです。
(事例はフィクションです。)

わいせつ誘拐罪及び監禁罪について

 未成年者を誘拐した者は、未成年者誘拐罪(法定刑は3月以上7年以下の懲役)が成立しますが、わいせつ目的があった場合、被害者が成人の場合と同様、わいせつ誘拐罪(法定刑は1年以上10年以下の懲役)が成立します(刑法第224、225条)。

 「誘拐」とは、欺罔又は誘惑を手段とし、人を従来の生活環境から離脱させ、自己又は第三者の事実的支配下に置くこと、とされます。
 本件で、AはVに「お母さんが探している」と嘘を告げて「欺罔」しており、「わいせつ行為を行う目的」で、母親のいる玩具売場外の多目的トイレに連れ込んでおり、Vを「従来の生活環境から離脱」させ「事実的支配下」に置いたものとして、わいせつ誘拐罪が成立し得ます。

 また、不法に人を監禁した者は、監禁罪(法定刑は3月以上7年以下の懲役)が成立します(刑法第220条)。
 監禁罪は、人の身体的活動の自由を奪う犯罪とされますが、幼児であっても自らの意思に基づき活動する能力を通常有するため、対象の「人」に含まれます。「監禁」とは、人が一定の区域内から脱出することが不可能又は著しく困難にすること、とされます。

 本件で、AはVを多目的トイレに連れ込んで中から鍵をかけており、4歳のVが自らトイレから脱出することは著しく困難であると考えられ、監禁罪も成立し得ます。

不同意わいせつ罪について

 16歳未満の者に対しわいせつな行為をした者は、被害者の同意の有無にかかわらず、一定の例外を除き、不同意わいせつ罪が成立します(刑法第176条)。

 同罪は、令和5年の性犯罪規定に関する刑法改正によって、従来の強制わいせつ罪に代わり、新たに創設された犯罪で、令和5年7月13日から施行されました。
 法定刑は、6月以上10年以下の拘禁刑、とされています(「拘禁刑」はまだ施行されていないので、それまでは「懲役」になります。)。

 なお、強制わいせつ罪では、被害者の同意の有無にかかわらず犯罪が成立する被害者の年齢が「13歳未満」であったところ、不同意わいせつ罪では「16歳未満」に引き上げられています(但し、被害者の年齢が13歳以上16歳未満の場合は、加害者と被害者の年齢差による一定の例外があります。)。

 次回の後編では、不同意わいせつ罪の未遂と中止未遂について解説していきます。

幼児に対するわいせつ誘拐罪などの弁護活動

 幼児が被害者となるわいせつ誘拐罪や不同意わいせつ罪などは、被害児童の今後の日常生活や対人関係に深刻な影響を及ぼす可能性があり、悪質と評価されやすく、被害者側との示談が成立したとしても不起訴処分を得られるとは限りません。
 しかしながら、示談の成否は、起訴された場合の量刑や執行猶予の判断にも影響を及ぼし得るため、示談を成立させることはなお重要と言えます。

 示談交渉は通常、被害者本人と行うものですが、被害者が幼児である場合は、当然ながら、両親等の保護者と行うこととなります。
 保護者は、子どもの心身に深刻な被害を受けたということで、犯人を許せないという処罰感情が強いことが一般的であり、示談交渉を断られる可能性もあるため、刑事事件に強く、示談交渉の経験の豊富な弁護士への相談をお勧めします。

まずは弁護士にご相談を

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件に強く、未成年者が被害者である様々な性犯罪において、保護者との示談締結により不起訴処分や刑の減軽などを獲得した実績があります。
 ご家族が幼児に対するわいせつ誘拐罪などで逮捕されご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

 

【事例解説】未成年者と交際 淫行条例違反で取調べ(真剣な交際関係だったと主張する架空の事例に基づく解説)

2023-11-30

 

 この記事では、福岡県青少年健全育成条例違反(淫行)の架空の事例を基に、いわゆる淫行条例違反とその弁護活動について解説します。

事例紹介:従業員の未成年者と性行為を行った事件

 福岡市の飲食店店長の男性Aさん(27歳)は、アルバイト従業員の女子高校生Vさん(17歳)と交際関係になり、同市内のAさんの自宅やホテルで性行為を複数回行いました。
 事実を知って憤慨したVさんの両親から警察に通報があり、Aさんは福岡県青少年健全育成条例違反(淫行)の容疑で警察の呼び出しを受け、取調べを受けることとなりました。
(事例はフィクションです。)

福岡県青少年健全育成条例違反(淫行)とは

 福岡県青少年健全育成条例第31条は、青少年(18歳未満の者)に対し、淫行又はわいせつな行為をしてはならない、と定めています。

 判例によると、「淫行」とは、(ア)青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交等、又は(イ)青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交等、と解釈されています。

 福岡県青少年健全育成条例違反(淫行)で有罪となった場合、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

真剣な交際関係であったことの主張

 事例のAさんは、Vさんと真剣な交際関係であったとして、行った性行為は、上記(ア)又は(イ)に該当する性交等ではなく、福岡県青少年健全育成条例違反(淫行)は成立しないと主張することが考えられます。

 本件で、Vさんの両親は交際を認知しておらず、事実を知った後すぐに警察に通報していることは、真剣な交際関係であったかの判断において不利な事情になると考えられます。

 また、過去の裁判例から、当事者の年齢、知り合った際の当事者間の立場の違い、知り合ってから交際するまでの経緯と期間、交際内容、交際してから性行為するまでの期間、性行為してからの交際内容、など様々な要素を勘案して判断されることが予想されます。

淫行条例違反の弁護活動

 真剣な交際関係にあったことを主張して罪の成立を争うことは容易でないと思われるため、被害者との示談を成立させ不起訴処分を目指すことも、現実的な選択肢の一つとなります。

 被害者が未成年者のため、通常、示談交渉は両親等の保護者と行うこととなりますが、本件のように、保護者が子の被害に憤慨するなど感情的になり、被害者本人との示談交渉の場合よりも難航するおそれがあるため、刑事事件に強く、示談交渉の経験の豊富な弁護士への相談をお勧めします。

 示談金の支払いと併せて、子と今後一切接触しないことを誓約することにより、示談書に「刑事処罰を求めない」旨の宥恕条項を入れてもらうことで、不起訴処分を得られる可能性を高めることが期待できます。

淫行条例違反事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、性犯罪を含む刑事事件を多数取り扱い、全国各都道府県の淫行条例違反事件において、示談成立による不起訴処分などを獲得している実績があります。

 淫行条例違反で自身やご家族が警察の取調べを受けるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。
 

【事例解説】児童買春とその弁護活動(被害児童が年齢を偽った架空の事例に基づく解説)

2023-11-23

 

 この記事では、架空の事例を基に、児童買春とその弁護活動について解説します。

児童買春とは

 「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」(児童買春・児童ポルノ規制法)第2条では、児童買春とは、(1)児童(18歳未満の者)等に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、(2)児童に対し性交等をすること、と定めています。

 「対償」は、必ずしも金銭に限らず、アクセサリーや食事などでも、性交等の見返りとして与えるものであれば該当し得ます。なお、供与する相手方は、児童本人のほか、買春の周旋者や保護者等も対象です。
 「性交等」は、自己の性的好奇心を満たす目的で、児童に自己の性器等(性器、肛門又は乳首)を触らせる行為も含みます。

 児童買春で有罪となった場合、5年以下の懲役又は300万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

事例紹介:16歳の少年との出会い系サイトを通じた事件

 出会い系サイトを通じて16歳の少年Vと知り合った福岡市在住の30歳の男性Aが、Vに対して性的な行為を行いました。
 Aは、Vに対し、高価なスニーカーを贈ることを約束し、その見返りとして自宅に招き、性的な行為を求めました。
 Vは、このAとのやり取りを友人に話し、その情報が警察に伝わり、Aは児童買春の容疑で警察の取調べを受けました。
 取調べにおいて、AはVが出会い系サイトで年齢を18歳と偽っていたため、18歳未満であるとは知らなかったと主張しました。
(事例はフィクションです。)

事例における法的問題点

 先に紹介した事例において、Aは、Vが出会い系サイトで年齢を18歳と登録していたため、Vが18歳未満であるとは知らなかったと主張しています。
 児童買春が成立するには、性交等を行った時点で、相手が18歳未満であるであることの認識(故意)が必要ですが、「もしかしたら18歳未満かもしれない」又は「18歳未満でもかまわない」程度の認識(いわゆる「未必の故意」)であってもこれを満たします。
 出会い系サイトで年齢を偽って登録することは一般的に容易であることから、それをもって故意を否認することは通常困難と考えられます。
 なお、仮に故意がなかったことが認められたとしても、福岡県青少年健全育成条例違反(淫行)で処罰される可能性は残ります。

児童買春の刑事弁護

 児童買春は、児童に対する性的搾取を防止するという社会的法益があるため、被害者との示談が成立したとしても不起訴処分を得られるとは限りません。
 しかしながら、示談の成否は、不起訴処分略式起訴(罰金刑)の選択、正式起訴された場合でも量刑判断に影響を及ぼすため、示談を成立させることはなお重要です。

 児童買春事件の被害者は未成年者のため、通常、示談交渉は両親等の保護者と行うこととなりますが、保護者が子の被害に憤慨するなど感情的になり、被害者本人との示談交渉の場合よりも難航するおそれがあるため、刑事事件に強く、示談交渉の経験の豊富な弁護士への相談をお勧めします。

児童買春事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件に強く、児童買春事件での相手方との示談成立により、不起訴処分略式処分(罰金刑)で事件が終了した実績が数多くあります。
 児童買春で自身やご家族が警察の取調べを受けるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

【事例解説】リベンジポルノ防止法違反とその弁護活動(別れた交際相手の性的画像をインターネット上に公開した架空の事例に基づく解説)

2023-11-16

 この記事では、架空の事例を基に、リベンジポルノ防止法違反とその弁護活動について解説します。

リベンジポルノとは

 リベンジポルノとは、個人の性的な画像や動画が、本人の同意なくインターネット上に公開される行為を指します。
 この行為は、元交際相手などによってなされることが多く、復讐や嫌がらせの意図があります。公開された内容は瞬く間に拡散し、被害者は深刻な精神的苦痛を受けることになります。
 我が国では、このような行為を防止するために「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」、通称「リベンジポルノ防止法」が制定されています。

法的枠組み

 この法律の主な目的は、性的な画像や動画を本人の同意なく公開する行為を処罰することにより、被害者の人権を保護することです。
 法律では、「私事性的画像記録」として定義された内容の不正な流布を禁じており、違反者には刑事罰が科されることになっています。具体的には、性交や性交類似行為、性器の露出や強調が含まれる画像や動画の無断公開などが対象となります。
 この法律により、被害者は警察に相談することができ、犯罪としての取り扱いが可能になりました。また、インターネット上からの画像削除要請や、被害者支援の体制も整備されています。
 このように、リベンジポルノ防止法は被害者の救済と加害者の処罰を両立させるための法的枠組みを提供しています。

違反の種類

 リベンジポルノ防止法における違反は大きく二つに分けられます。

1. 公表罪
 被写体が特定可能な状態で私事性的画像記録をインターネット上に公開する行為です。この行為には、電子メールでの送信やSNSでの共有などが含まれ、最大で3年の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。

2. 公表目的提供罪
 他人が画像を公開することを目的として、私事性的画像記録を提供する行為です。例えば、復讐目的で第三者に画像を渡すことがこれに該当し、1年以下の懲役または30万円以下の罰金に処される可能性があります。

 これらの違反は、被害者の人格権を侵害し、社会的な評価を著しく低下させる行為として厳しく罰せられます。

事例紹介

 架空の事例を通して、リベンジポルノ防止法違反の具体的なケースを分析します。

事例の概要
 Aさんは交際していたVさんから別れを告げられます。しかし、Aさんはこの決断を受け入れられず、復縁を求めてVさんに連絡を続けました。応答がないことに腹を立てたAさんは、Vさんの性的な画像をインターネット上に公開し、Vさんの名前と学校名を明記しました。この行為により、Aさんはリベンジポルノ防止法違反で逮捕されました。

法的な問題点
 このケースでは、Aさんの行為は公表罪に該当すると考えられます。Vさんの同意なく性的な画像を公開したこと、そしてVさんを特定可能な情報を併記したことが、法律によって禁じられている行為です。AさんはVさんのプライバシーを侵害し、その名誉を傷つける重大な違法行為を行ったと言えます。

弁護活動の視点
 弁護士は、Aさんの行為の動機や背景を理解し、法的な対応を検討します。また、Aさんが初犯であるか、反省の態度を示しているかなど、情状酌量の余地があるかを評価します。 
 さらに、被害者であるVさんとの示談交渉を進めることで、事件の解決を図る可能性も探ります。

被害者の告訴と示談交渉

告訴の必要性
 リベンジポルノ防止法において、被害者の告訴は、起訴に至る重要な要素です。
 リベンジポルノ防止法に違反する罪は「親告罪」とされており、被害者自身が告訴(犯人の処罰を求める意思表示)しなければ公訴を提起することができません。これは、被害者の意思を尊重し、二次的な被害を防ぐための措置です。

示談交渉の意義
 示談とは、被害者に対して相応の金銭を支払った上で、当事者間で事件を解決するという内容の合意をすることです。 
 弁護士は、加害者の刑事責任を軽減するため、また被害者の心情を考慮して、早期に示談交渉を開始することが一般的です。特に、親告罪においては、告訴をしない又は告訴を取り消す内容を含む示談が成立すれば、起訴されることなく事件が終了する可能性を高めることが期待できます。

示談交渉の進め方
 弁護士は、被害者の感情や社会的影響を考慮しながら、加害者にとっても最善の条件を模索します。
 リベンジポルノ防止法における示談交渉では、被害者への謝罪の表明、慰謝料の支払い、将来にわたる非公開の保証などが話し合われることが想定されます。

リベンジポルノ防止法違反事件に関するご相談は

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、リベンジポルノ防止法違反事件の弁護活動において、事件解決の実績があります。
 リベンジポルノ防止法違反事件でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

 

【事例解説】元教え子から強制わいせつの示談金を請求された事件

2023-11-09

 元教え子から、在校中に行ったわいせつな行為での示談金の支払いを請求された架空の事件を参考に、令和5年法改正による性犯罪の公訴時効期間の延長や、事件後長期間経過後に被害を訴えられた場合の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

参考事件

 鹿児島市内の高校教員Aは、7年程前に、当時担任していた18歳の女子生徒Vの身体を抑えつけ、身体を触るなどのわいせつな行為を行いました。
 最近になり、VからAに対し、示談金200万円を支払わないと、在校中に受けたわいせつな行為の件で、警察に被害届を出す旨の連絡がありました。
 Aは、7年程前の事件のため既に公訴時効期間が経過しているのではないかと思い、刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)

旧強制わいせつ罪(現不同意わいせつ罪)の公訴時効

 AがVに対して行った行為は、13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をしたとして、旧刑法第176条の強制わいせつ罪に該当し得ると考えられます。

 強制わいせつ罪は、令和5年法改正により、現行法では不同意わいせつ罪となりましたが、AがVにわいせつな行為を行ったのは、現行法の施行前であるため、施行後に被害を訴えられたとしても、旧法の強制わいせつ罪が適用されます。

 公訴時効とは、犯罪から一定期間が経過した場合には、犯人を処罰することができなくなる制度です。
 強制わいせつ罪の公訴時効期間は7年でしたが、令和5年法改正において、性犯罪は、その性質上、恥ずかしさなどの感情から、被害申告が難しい場合もあることなどが考慮され、現行法の不同意わいせつ罪の公訴時効期間は、7年から12年に延長されました(刑事訴訟法第250条3項3号)。

 なお、改正法施行時に公訴時効期間が進行中の事件は、延長された新しい公訴時効期間が適用されることとなるため、強制わいせつ罪であっても、改正法施行時に7年の公訴時効期間が経過していなければ、公訴時効期間が12年に延長となります。

 そのため、本件でAがVに対するわいせつな行為を行った具体的な年月日によっては、強制わいせつ罪の公訴時効期間が12年に延長される結果、公訴時効期間が経過していない可能性があると考えられます。

事件後長期間経過後に被害を訴えられた場合の刑事弁護

 公訴時効期間が経過していれば、通常、刑事事件化されることもなくなるため、事件後長期間経過後に被害を訴えられた場合、訴えの内容により成立し得る罪と公訴時効期間の経過について検討する必要があります。

 公訴時効期間は、対象となる罪の法定刑の長短等に応じて大きく変わるため、成立し得る罪の検討は、慎重に行う必要があります。
 例えば、本件において、被害者が、わいせつな行為によりPTSDを発症したと訴える場合、強制わいせつ致傷罪が成立する可能性があり、この場合、公訴時効期間は15年(現不同意わいせつ致傷罪であれば20年)と、大幅に長期化します。

 また、令和5年法改正により、性犯罪の被害者が18歳未満の場合、被害申告が特に難しいであろうことを考慮し、被害者が18歳になるまでの期間が公訴時効期間に加算されることとなりました。
 そのため、18歳未満の者に対する性犯罪の場合は、被害者が18歳になってから公訴時効期間が実質進行することにも留意する必要があります。

 以上のことから、事件後長期間経過後に被害を訴えられた場合、特に性犯罪では公訴時効期間等が大幅に改正されたこともあるため、刑事事件に強い弁護士に相談し、公訴時効期間の経過の可能性、刑事事件化のリスクや取るべき対応などについて、慎重に検討することをお勧めします。

まずは弁護士にご相談を

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、性犯罪をはじめとする様々な刑事事件における弁護活動の豊富な実績があります。
 事件後長期間経過後に被害を訴えられるなどして、今後の対応についてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

【事例解説】公然わいせつ罪で執行猶予期間中の再犯(後編)

2023-11-02

 前回に引き続き、公然わいせつ罪の刑の執行猶予期間中に、再度、公然わいせつを行った架空の事件を参考に、執行猶予期間中に再犯した場合の取り扱いとその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

参考事件

 札幌市在住の会社員男性Aは、同市内の公園で陰部を露出しているところを目撃者に通報され、公然わいせつの容疑で逮捕されました。
 Aは、2年前に、公共施設で陰部を露出した公然わいせつ罪で、懲役3か月執行猶予3年の判決の言渡しを受けており、本件犯行時において執行猶予期間中でした。
(事例はフィクションです。)

前回の前編では、執行猶予期間中の再犯による執行猶予の取り消し、解説しました。

再度の執行猶予について

 執行猶予期間中に更に罪を犯した場合でも、再び執行猶予付き判決が言い渡される場合があります(これを「再度の執行猶予」といいます。)
 「再度の執行猶予」がなされた場合は、先に述べた通り、必要的取消しの対象にならないとされます。

 再度の執行猶予の要件は、前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予されている者が、(1)1年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受ける場合に、(2)情状に特に酌量すべきものがあること、と規定されています(刑法第25条第2項)。
 なお、初度の執行猶予の際に保護観察に付されていた場合は、再度の執行猶予を受けることができません(同項但書)。

 執行猶予制度の趣旨は、被告人を刑務所に服役させるのではなく、社会内で更生させるという点にあることから、執行猶予期間中に再犯した場合、社会内での更生ができるかについて、より厳しく判断されることになるため、実際に認められる例も限定的とされます。

執行猶予期間中の再犯の刑事弁護

 特に、本件Aのように、同一・同種の犯罪での再犯の場合は、社会内での更生が困難であると認定される可能性が高く、再度の執行猶予を得ることは極めて難しいと考えられます。
 しかし、端から諦めるのではなく、再度の執行猶予の獲得に繋がり得る事情がないかを検討するため、刑事事件に強い弁護士に一度相談することをお勧めします。

 再度の執行猶予を獲得するためには、前件を踏まえてみても、被告人がなお社会内で更生できるという事情を示すことが不可欠と考えられます。

 例えば、犯行の動機や態様について前件とは異なる事情、専門機関での治療など前件の際はなかった再犯防止の取組みなどにより「情状に特に酌量すべきものがある」ことを説得的に主張 し、再度の執行猶予を得られる可能性を高める弁護活動を行う余地はあります。
 結果として、再度の執行猶予を得ることができなくても、こうした弁護活動は、再犯の量刑を軽くすることにも繋がると考えられます。

まずは弁護士にご相談を

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、様々な刑事事件において、執行猶予や刑の減軽を獲得した実績が豊富にあります。
 自身やご家族が、執行猶予期間中に再犯をしてしまい、今後のことでご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

【事例解説】公然わいせつ罪で執行猶予期間中の再犯(前編)

2023-10-26

 公然わいせつ罪の刑の執行猶予期間中に、再度、公然わいせつを行った架空の事件を参考に、執行猶予期間中に再犯した場合の取り扱いとその弁護活動について、前編・後編に分けて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

参考事件

 札幌市在住の会社員男性Aは、同市内の公園で陰部を露出しているところを目撃者に通報され、公然わいせつの容疑で逮捕されました。
 Aは、2年前に、公共施設で陰部を露出した公然わいせつ罪で、懲役3か月執行猶予3年の判決の言渡しを受けており、本件犯行時において執行猶予期間中でした。
(事例はフィクションです。)

執行猶予期間中の再犯による執行猶予の取り消し

 執行猶予とは、前に禁錮以上の刑に処せられたことのない者などが、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受ける場合、情状により、その刑の執行を一定期間猶予し、その期間中に更に罪を犯さなかった場合などに、刑の言渡しの効力を失わせる制度のことです(刑法第25条第1項)。

 公然わいせつ罪の法定刑は、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料です。
 本件Aは、2年前に公然わいせつ罪で懲役3か月の判決を受けましたが、執行猶予3年が付されたため、刑務所に服役しないで済んでいたところ、その執行猶予期間中に更に罪を犯してしまいました。

 執行猶予期間中に更に罪を犯し、禁錮以上の刑に処せられた場合、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないときは、刑の全部の執行猶予の言渡しは取り消されます(これを「必要的取消し」といいます。刑法第26条第1項第1号)。

 そのため、Aが本件で懲役の刑に処せられ、執行猶予の言渡しがないときは、前件の刑の執行猶予の言渡しが取り消されることとなります。
 その結果、仮に、本件で、懲役6か月の実刑に処せられた場合、前件の執行猶予の言渡しが取り消され、前件の懲役3か月の刑と合算して、懲役9か月の実刑に処せられることとなります。

 なお、執行猶予期間中に更に罪を犯し、罰金に処せられた場合は、刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消すことができる、と規定されています(これを「裁量的取消し」といいます。刑法第26条の2第1項第1号)。
 そのため、仮に、本件の刑が罰金の場合でも、裁判所の裁量で、前件の執行猶予の言渡しが取り消されることで、前件の懲役3か月により刑務所に服役となる可能性があります。

次回の後編では、再度の執行猶予について、解説します。

執行猶予期間中の再犯の刑事弁護

 特に、本件Aのように、同一・同種の犯罪での再犯の場合は、社会内での更生が困難であると認定される可能性が高く、再度の執行猶予を得ることは極めて難しいと考えられます。しかし、端から諦めるのではなく、再度の執行猶予の獲得に繋がり得る事情がないかを検討するため、刑事事件に強い弁護士に一度相談することをお勧めします。

 再度の執行猶予を獲得するためには、前件を踏まえてみても、被告人がなお社会内で更生できるという事情を示すことが不可欠と考えられます。

 例えば、犯行の動機や態様について前件とは異なる事情、専門機関での治療など前件の際はなかった再犯防止の取組みなどにより「情状に特に酌量すべきものがある」ことを説得的に主張し、再度の執行猶予を得られる可能性を高める弁護活動を行う余地はあります。
 結果として、再度の執行猶予を得ることができなくても、こうした弁護活動は、再犯の量刑を軽くすることにも繋がると考えられます。

まずは弁護士にご相談を

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、様々な刑事事件において、執行猶予や刑の減軽を獲得した実績が豊富にあります。
 自身やご家族が、執行猶予期間中に再犯をしてしまい、今後のことでご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

【事件解説】売春を唆したとして売春防止法違反で逮捕

2023-10-19

 売春の客待ちをするよう唆したとして、売春防止法違反(客待ち)の教唆容疑で逮捕された事件とその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事件概要

 女性客に売春の客待ちをするよう唆したとして、売春防止法違反(客待ち)教唆容疑で、名古屋市内の経営者の男性Aが愛知県中警察署に逮捕されました。
 Aは、女性Bに対し、「立ちんぼ(売春の客待ち)でもしたら、楽に返せるよ」などと唆し、市内の公園付近の歩道上で売春の客待ちをさせたとのことです。
(実際の事件に基づき作成したフィクションです。)

売春防止法違反(客待ち)とは

 売春防止法は、売春を助長する行為等を処罰することなどにより、売春の防止を図ることを目的としています。

 「売春」とは「対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交をすること」と定義されており、売春行為自体には罰則はありませんが、売春をする目的で、公衆の目にふれるような方法で客待ちをした場合は、6月以下の懲役又は1万円以下の罰金に処する、と規定されています(売春防止法第2条、第5条)。

 本件Bは、市内の公園付近の歩道上で、売春相手を探すための客待ちをしていたため、「売春をする目的」で、「公衆の目にふれるような方法で客待ち」をしたとして、売春防止法違反(客待ち)が成立し得ると考えられます。

客待ちを唆した場合に成立し得る罪

 Aは、Bに売春の客待ちをするよう唆したとして、売春防止法違反(客待ち)教唆容疑で逮捕されました。
 「教唆」とは、人を唆して、その人に犯罪を実行する決意を生じさせること、とされます。

 Bが、もともと売春の客待ちをしようと思っていなかったにも関わらず、Bを唆して、売春の客待ちをすることを決意させたと認められる場合、Aは、売春防止法違反(客待ち)教唆罪が成立し得ると考えられます。

 刑法第61条第1項で、人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する、と規定されているため、Aは6月以下の懲役又は1万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

 なお、愛知県迷惑行為防止条例では、何人も、公共の場所において、不特定の者に対し、「売春類似行為」をするため、客引きをし、又は客待ちをすることをしてはならない、と規定されており、Aは、同時に本条例違反の教唆により、100万以下の罰金が科される可能性があります(条例第7条1項1号、第17条)。

売春防止法違反(客待ち)の教唆事件の刑事弁護

 売春防止法違反(客待ち)教唆の罪を認める場合の弁護活動として、常習性の有無や犯行に至る経緯などを弁護士が接見の際に聴取の上、罪を軽減し得る事情を取調べにおいて的確に供述できるよう、アドバイスを行うことが考えられます。
 なお、売春防止法第7条では、人を欺き、若しくは困惑させたり、又は脅迫や暴行を加えて、人に売春をさせた場合は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処するとされているため、唆した行為が、欺罔、困惑、脅迫などと評価されて必要以上に重い罪を負わせられることのないよう、供述内容は慎重に検討する必要があります。
 
 また、犯行に常習性が疑われる場合の余罪の追及のほか、本件のような教唆容疑では、教唆者が被教唆者に対し、教唆がなかったと供述するよう威迫するなどの罪証隠滅のおそれがあるとして、逮捕後に勾留されて身体拘束が長期化する可能性があるため、身体拘束からの解放に向けて、早期に適切な弁護活動を行ってもらえるよう、刑事事件に強い弁護士への依頼をお勧めします。

まずは弁護士にご相談を

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、様々な刑事事件において、身体拘束からの解放や不起訴処分などを獲得した実績があります。
 売春防止法違反(客待ち)教唆容疑でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

【事例解説】不同意性交等の容疑で警察の取調べ 同意があったとして否認

2023-10-12

 同意があると思って知人女性と性交したところ、後日被害届を提出され、不同意性交等の容疑で警察の取調べを受けることとなった架空の事件を参考に、同意があったとして不同意性交等の容疑を否認する事件の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事件概要

 茨城県水戸市在住の会社員男性Aは、マッチングアプリで知り合った20代の女性Vと何度か食事に行く関係となり、ある日、Aの自宅にVを招いて食事した後、性交しました。
 後日、Vが「嫌だ」と言ったのにAに性交されたとして、茨城県水戸警察署に被害届を提出したことで捜査が開始され、Aは不同意性交等の容疑で警察の取調べを受けることとなりました。
 警察の調べに対し、Aは「性交したことは認めるが、Vの同意があった」と容疑を一部否認しているとのことです。
(事例はフィクションです。)

不同意性交等罪とは

 暴行・脅迫、予想と異なる事態に直面したことによる恐怖、アルコール摂取の影響などにより、相手が、同意しない意思を形成、表明、全うすることが困難な状態にさせたり、その状態に乗じて性交等を行った場合、不同意性交等罪(刑法第177条第1項)が成立し得ます。
 不同意性交等罪は、令和5年法改正前の強制性交等罪にあたる罪であり、法定刑は、5年以上の拘禁刑(「拘禁刑」の施行までは「懲役」)です。

 同意しない意思を「形成することが困難な状態」とは、性交等をするかどうかを考えたり、決めたりするきっかけや能力が不足していて、「性交等をしない、したくないという意思」を持つこと自体が難しい状態、「表明することが困難な状態」とは、「性交等をしない、したくないという意思」を持つことはできたものの、それを外部に表すことが難しい状態、「全うすることが困難な状態」とは、「性交等をしない、したくないという意思」を外部に表すことはできたものの、その意思のとおりになることが難しい状態、とされます。

 本件Vの供述通り、Vが「嫌だ」と言って、性交をしたくないという意思をAに表明したものの、Aが予想に反してやめてくれず、恐怖を覚えたことなどにより、意思を全うすることができなかった場合、それに乗じて性交したAに不同意性交等罪が成立する可能性があります。

同意があったとして容疑を否認する場合の刑事弁護

 性交の同意の有無は、被害者の内心の問題のため、捜査機関としては、不同意性交等の捜査において、被害者・被疑者双方の供述に頼らざるを得ないことが多いと考えられ、被疑者の取調べに際し、自白を強要・誘導するような取調べが行われる可能性も否定できません。
 そのため、同意があったとして不同意性交等の容疑を否認する場合には、取調べで供述する内容が、自己の意に反して不利益な証拠とならないよう、刑事事件に強く、性犯罪の弁護活動の経験豊富な弁護士から、取調べに際し、どのように対応すればよいか等のアドバイスを事前に受けることをお勧めします。

 なお、被害者の内心の問題とはいえ、被害者が同意していなかったと供述したとしても、直ちに同意がなかったと判断されるわけではなく、被疑者と被害者の関係性、性交当時の状況、事件前後における両者のメッセージ等のやり取りの内容や行動など、諸般の事情から判断されることとなります。
 そのため、弁護活動としては、被害者が同意しない意思を形成、表明、全うすることが困難な状態になかったことや、同意があったことを推認する客観的な証拠、事情により、不同意性交等罪の成立が疑わしいことを検察官に主張し、嫌疑不十分による不起訴処分を得ることを目指すことが考えられます。

まずは弁護士にご相談を

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、性犯罪を含む刑事事件を多数取り扱い、法改正前の強制性交等罪の否認事件において、嫌疑不十分による不起訴処分を獲得している実績があります。
 不同意性交等事件で、自身やご家族が警察の取調べを受けるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

 

【事例解説】被害者のPTSD発症による不同意わいせつ致傷事件

2023-10-05

 知人女性にわいせつな行為をし、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を負わせたとして、不同意わいせつ致傷の容疑で逮捕された架空の事件を参考に、被害者のPTSD発症による不同意わいせつ致傷罪の成立とその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事件概要

 知人の20代女性Vにわいせつな行為をし、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を負わせたとして、滋賀県大津市在住の会社員男性A(28歳)が不同意わいせつ致傷の容疑で逮捕されました。
 警察の調べによると、Aは、車に同乗していたVの身体を触るなどのわいせつな行為を行い、事件後、Vは心的外傷後ストレス障害(PTSD)の診断を受けたとのことです。
 Aは、Vにわいせつな行為を行ったことは認めているとのことです。
(事例はフィクションです。)

PTSD発症による不同意わいせつ致傷罪の成立

 不同意わいせつ罪(未遂犯も含む)を犯し、これにより人に「傷害」を負わせた場合、不同意わいせつ致傷罪(刑法第181条第1項)が成立します。
 不同意わいせつ致傷罪は、令和5年法改正前の強制わいせつ致傷罪にあたる罪であり、法定刑は、無期又は3年以上の拘禁刑(「拘禁刑」の施行までは「懲役」)です。

 「傷害」とは、人の生理的機能に障害を与えること、又は人の健康状態を不良にすることとされており、外傷のみならず、パニック障害や心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神的な疾患もこれに該当するとされます。

 よって、Aのわいせつ行為とVの心的外傷後ストレス障害(PTSD)の因果関係が認められると、Aに不同意わいせつ致傷罪が成立する可能性があります。

不同意わいせつ致傷事件の刑事弁護

 不同意わいせつ致傷罪は、法定刑に無期懲役を含むため、裁判員裁判の対象となりますが、性犯罪では、裁判員裁判の量刑は一般的に重くなる傾向があり、不同意性わいせつ致傷罪で起訴された場合、実刑となる可能性も十分あります。
 そのため、裁判を回避するために、被害者との示談の成立などにより不起訴処分を目指すことが特に重要だと言えます。
 不同意わいせつ致傷罪は、被害者の告訴がなくとも検察官の判断で起訴できる罪(非親告罪)ではありますが、実務上の運用は、被害者の意思を尊重し、プライバシー侵害が生じないように配慮する観点から、被害者との示談によって告訴の取消しに結びつけることができれば、不起訴処分となる可能性を高めることができると考えられます。

 不同意わいせつ致傷罪の被害者は、加害者に強い嫌悪感や恐怖感などを抱くことが通常であり、加害者が被害者と示談交渉を直接行うことは極めて困難だと考えられますが、弁護士であれば、被害者も話を聞いても良いとなることも多く、示談交渉の余地が生まれ、刑事事件に強く示談交渉の経験豊富な弁護士であれば、十分な内容の示談がまとまる可能性が見込まれます。

 なお、わいせつ行為と傷害の因果関係が疑われる事情、例えば、本件で言えば、被害者が別の要因により、事件前から既に精神疾患を有していた疑いがあるといった事情があれば、そうした事情を取調べの際に供述するなどして、捜査機関にわいせつ行為と傷害の因果関係に疑いを持たせ、捜査を十分に尽くさせることにより、罪名から「致傷」が外れる可能性もあるため、取調べの対応も重要になってくるケースも考えられます。
 不同意わいせつ罪であれば、法定刑は6月以上10年以下の拘禁刑(懲役)と軽くなる上、裁判員裁判の対象外となり、起訴されても実刑を回避する可能性を高めることが期待できます。

まずは弁護士にご相談を

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、性犯罪を含む刑事事件を多数取り扱い、改正前の強制わいせつ致傷事件において、身体拘束からの早期解放示談成立による不起訴処分などを獲得している実績があります。
 不同意わいせつ致傷事件でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。

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