【事例解説】バレー大会で女子選手の下半身を盗撮した疑いで逮捕(後編)
北海道のバレーボール大会で女子選手の下半身を撮影したとして、北海道迷惑行為防止条例違反で逮捕された事例を参考に、性的姿態等撮影罪と迷惑行為防止条例違反が成立するか否かについて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
・事件概要
北海道札幌市内の市立体育館で開催された高校バレーボール大会で、試合中の女子選手の下半身を盗撮したとして、札幌市内に住む自称カメラマンの男性が北海道迷惑行為防止条例違反の疑いで逮捕されました。
札幌中央警察署によると、男は、札幌市内であった高校バレーボール大会で、競技中の女子選手の下半身をビデオカメラで撮影していたところ、それに気づいた大会運営スタッフが警察に通報しました。
警察の取調に対し、男は「モデル撮影の練習で撮影していた。服の上から撮影するのであればどこを撮っても問題ないと思っていた。」と供述しているとのことです
(フィクションです)
・北海道迷惑行為防止条例違反について
前回に引き続き、バレーボール大会で女子選手の下半身を撮影した事例について、北海道迷惑行為防止条例違反が成立するかについて解説します。
本件の男は、高校バレーの大会で試合中の女子選手の下半身を服の上から撮影したとされています。
前回の解説の通り、この場合、性的姿態等撮影罪は成立しない可能性がありますが、別途各都道府県が制定する迷惑行為防止条例において処罰の対象となる可能性があります。
北海道迷惑行為防止条例(出典/北海道警察ホームページ)では、何人も、正当な理由なく、公共の場所等にいる者に対し、著しく羞恥させ、又は不安を覚えさせるような方法で、衣服等で覆われている身体又は下着を撮影することが禁じられています(同条例2条の2第2項ア)。
本件では、男は、「公共の場所」と言える市立体育館で、競技中の女子選手の下半身をビデオカメラで撮影したとされていますから、当該女子選手に恥ずかしい思いをさせたり、不安を覚えさせるような方法で撮影したとして、北海道迷惑行為防止条例違反となる可能性があります。
・盗撮行為をした場合の刑の重さ
盗撮行為により性的姿態等撮影罪が成立した場合の法定刑は、3年以下の拘禁刑(施行までは懲役刑)又は300万円以下の罰金となります。
北海道迷惑行為防止条例の法定刑は、常習ではない場合は6月以下の懲役又は50万円以下の罰金ですので、性的姿態等撮影罪の創設により盗撮行為は厳罰化されたと言えます。
・できるだけ早く弁護士に相談を
性的姿態等撮影罪は被害者のいる犯罪です。
したがって、被害者との間で示談を成立させることができるかどうかが重要となります。
仮に、被害者との間で示談を成立させることができれば、不起訴処分を獲得できる可能性があります。
不起訴処分となれば、前科がつくこともありません。
仮に起訴されたとしても、被害者との間で示談が成立していれば、執行猶予がついたり刑が減軽されたりする可能性があります。
もっとも加害者自ら示談交渉を行ってもうまくいかない可能性が高いです。
通常、被害者は加害者に対し強い処罰感情を有しており、加害者と関わりたくないと思っているからです。
そこで、示談交渉は弁護士に一任されることをおすすめします。