セクハラと性犯罪
セクハラと性犯罪
福岡県行橋市の会社で働いている部長Aさん(52歳)は、「新人歓迎会」の飲み会で、新人社員Vさん(19歳)に「初体験いつ?」などと性的な発言を繰り返しました。
そうしたところ、Vさんは翌日に会社に退職届を提出し、会社を辞めました。Aさんは、Vさんに福岡県行橋警察署に被害届を提出され、福岡県迷惑行為防止条例違反の被疑者として事情を聴かれることになりました。刑事処分を避けたいAさんは、弁護士に無料法律相談を申し込みました。
(フィクションです)
~ セクハラとは ~
セクシュアルハラスメント(セクハラ)については、令和元年10月現在、法律に明確な定義はありません。
しかし、男女雇用機会均等法11条1項に参考となる規定が設けられています。
事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
これを受け、厚生労働省では、
・「性的な言動」であること
・性的な言動が「職場」において行われること
・「労働者」の意思に反すること
の要件を満たすものを「セクハラ」としてます。
なお「職場」とありますが、宴会、飲み会などの勤務時間外の場面でも、実質、職務の延長線上と考えられる場合は「職場」に当たるとされています。
職務の延長線上か否かは、宴会・飲み会の趣旨・性質、職務との関連性、参加者の内容・数、参加が強制的か任意かといった事情を考慮して検討する必要があります。
「労働者」とは、正規社員に限らず、パート・派遣社員、アルバイトなど、会社に雇用されている全ての人が含まれます。
~ 「性的な言動」と性犯罪 ~
セクハラとなり得る行為は「言動」です。
したがって、ちょっとした声かけだけでも「性的な言動」に当たる可能性があります。
たとえば、相手に
・初体験いつ?
・どんなことされると感じる?
・これまで何人くらいと経験したの?
などと尋ねる行為は「性的な言動」に当たる可能性が高いでしょう。また、各都道府県が定める迷惑行為防止条例の「卑わいな言動」に当たる可能性もあります。「卑わいな言動」とは、社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな言語又は動作をいうと解されています。大雑把にいえば、一般的に相手が「不快だな」と思うことが見込まれる言動は「卑わいな言動」に当たる可能性があるということです。「卑わいな言動」に対する罰則は「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」、常習性が認められる場合は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」とされていることが多いです。
さらに、
・メール、電話などの執拗な要求
・食事やデートへの執拗な誘い
は強要罪(刑法223条)として「3年以下の懲役」に、身体的接触では
・痴漢
・強制わいせつ罪(刑法176条)
・準強制わいせつ罪(刑法178条1項)
・強制性行等罪(刑法177条)
・準強制性行等罪(刑法178条2項)
が挙げられ、痴漢は先の条例で「6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金」または「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」とされていることが多く、強制わいせつ罪、準強制わいせつ罪は「6月以上10年以下の懲役」、強制性交等罪、準強制性交等罪は「5年以上の有期懲役(上限20年)」です。
なお、「性交等」とは性交、肛門性行、口腔性交の3種類です。また、セクハラでは、相手を酒に酔わせてからのわいせつ行為、性行等、相手が酒に酔った状態を利用してのわいせつ行為、性交等の事案も多く、その場合は準強制わいせつ罪、準強制性交等罪に問われます。
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