強制わいせつ致傷罪

2021-06-02

強制わいせつ致傷罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所福岡支部が解説します。

仙台市内に住むAさんは、深夜、人通りの少ない市内の路上を歩いて帰宅していたところ、少し先を一人で歩く女性Vさんを見つけました。
背格好などから自分の好みのタイプだと思ったAさんは、Vさんにわいせつな行為をしようと考え、Vさんに気付かれないように近づき、Vさんの背後から両手を回し、衣服の上からVさんの乳房を揉みました。Aさんは、Vさんが大声を上げたことからその場から逃げました。Aさんは、追いかけてきたVさんの顔面を手拳で1回殴打し、Vさんに鼻骨を骨折させる怪我を負わせました。
Aさんは強制わいせつ致傷罪で逮捕されました。
(フィクションです)

~強制わいせつ致傷罪~

強制わいせつ致傷罪は刑法181条1項に規定されています。
本罪は、強制わいせつ既遂罪、あるいは強制わいせつ未遂罪を犯し、よって人を死傷させた場合に成立する罪です。
法定刑は、無期又は3年以下の懲役です。

~ 強制わいせつ罪既遂、あるいは未遂罪が成立していること ~

強制わいせつ罪は刑法176条に規定されています。

刑法176条
 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。 

「暴行」とは、他人の身体に対する有形力の行使をいい、脅迫とは、人を畏怖させるに足りる害悪の告知をいいます。
そして、強制わいせつ罪における暴行、脅迫の程度は、一般には、被害者の反抗を著しく困難ならしめる程度のものでなければならないとされています。
具体的には、殴る、蹴る、叩く、首を絞める、馬乗りになる、「殺すぞ」「家を焼くぞ」「裸の写真ネットにばらまくぞ」などと言うなどが挙げられます。
また、暴行それ自体がわいせつ行為であってもよいとされています。
「わいせつな行為」とは、徒に性欲を興奮又は刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道徳観念に反するような行為をいうと解されています。
具体的には、膣を触る、陰部に手を入れる、乳房を弄ぶ、相手方の感情を無視した接吻などがこれに当たるでしょう。

以上からすると、Aさんには強制わいせつ既遂罪が成立する可能性が高いと思われます。

その他に、強制わいせつ致傷罪が成立するための要件としては、「相手方に怪我が生じたこと」が必要です。
どの程度の怪我であることを必要とするのかについては争いのあるところですが、判例の大勢は、傷害罪の「傷害」と統一的に解釈すべきものとしています。なお、骨折は明らかに怪我と認定されます。
次に、強制わいせつ行為と怪我との間に「因果関係」の存在することが必要です。

~強制わいせつ致傷罪と示談~

罪を認める場合は、一刻も早く被害者と示談交渉を進めることが肝要です。
示談交渉を進めているということは、基本的に罪を認めていることが前提で、その結果罪証隠滅のおそれはないと判断され、早期釈放に繋がりやすくなります。また、示談が成立すれば、被疑者に有利な情状として考慮され、不起訴獲得の可能性が高くなります。被害者様から「被疑者を処罰しないで欲しい」などという宥恕条項を獲得できれば、その可能性はさらに上がることとなるでしょう。

示談交渉は弁護士にお任せください。

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