【事例解説】見ず知らずの人に対する強制わいせつ罪と示談

2022-09-14

【事例解説】見ず知らずの人に対する強制わいせつ罪と示談

見ず知らずの人に対して突然後ろから抱き着いて胸を触ったという強制わいせつ事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【事例紹介】

「Aさんは、仕事が終わって帰宅の際、最寄り駅から自宅までの道中で、大学生のVさんが歩いているのを見つけました。
AさんとVさんは全く面識がありませんでしたが、Vさんの容姿がAさんの好みのタイプであったため、AさんはVさんの跡を付け始めました。
Vさんが街灯が少なく人通りのない路地に入ったところで、AさんはVさんの後ろから抱き着いてVさんの胸を触りました。
Vさんが悲鳴をあげたことで、Aさんはその場から走り去りました。
後日、防犯カメラの映像からAさんを犯人だと特定した警察官が、Aさんを強制わいせつ罪の疑いで逮捕しました。」

(この事例はフィクションです)

【見ず知らずの被害者との示談】

事例のAさんのように、後ろから突然抱き着くという被害者の方の反抗を著しく困難にする程度の「暴行」を用いて、胸を触るという「わいせつな行為」をした場合は、刑法176条が定める強制わいせつ罪が成立することになるでしょう。
強制わいせつ罪の法定刑は6月以上10年以下の懲役刑となっており、罰金が定められていないことから、比較的罪が重い犯罪であると言えます。

強制わいせつ罪の重い刑罰を回避するためには、不起訴処分の獲得を目指すことが考えられますが、そのためには、被害者の方との示談を締結することが重要な要素となるでしょう。

示談を締結するためには被害者の方と示談交渉をする必要がありますが、交渉を始めるにあたっては、被害者の方の名前や連絡先を知っていることが前提にあります。

加害者と被害者の方との間で従前から面識があり名前や連絡先を知っているという場合には、特段問題なく示談交渉を開始することができます。
しかし、加害者と被害者の方が全くの面識がなく、加害者が被害者の方の名前や連絡先を知らないという場合は、まずは被害者の方の名前や連絡先の情報を知ることができなければそもそも示談交渉を開始することができません。

被害者の方の名前や連絡先の情報を知らない場合は、弁護士が捜査担当の検察官や警察官などに被害者の方の情報を教えてもらえないか打診することになるでしょう。
打診を受けた検察官や警察官が、なぜ弁護士が連絡を取ろうとしているのかについて被害者の方に説明した上で、弁護士に連絡先などの情報を教えて良いかの確認をとり、被害者の方が承諾すれば、被害者の方の情報が弁護士に開示されるというものが一般的な流れになります。

このような捜査機関を通じて被害者の方の情報を得るという方法は、加害者本人が申し出ても教えてもらえる可能性はほぼ皆無であり、弁護士しか採ることが出来ない方法と言ってよいでしょう。

なぜならば、捜査機関側としては、加害者本人が被害者と接することは証拠隠滅のおそれや加害者が被害者に更なる危害を加えるおそれがあると懸念して、加害者本人に被害者の情報を教えることは極めて慎重になるでしょうし、また、被害者の方の心情として、性犯罪の被害にあった恐怖心から、被害者が加害者本人と直接コンタクトを取ろうとは思わないと考えられるからです。

【強制わいせつ事件で示談をお望みの方は】

強制わいせつ事件で前科が付くことを避けるために被害者の方との示談交渉を望まれる場合は、弁護士に依頼されることをお勧めします。

前述の通り、見ず知らずの被害者の方との示談にあたっては、弁護士でなければ被害者の方の連絡先を知る方法が無いと言えますし、また、示談と一言で言っても、どのような条件で示談を締結するか、示談書は具体的にどのような内容にするか、示談締結後にその事実をどのように捜査機関側に伝えるかなどと、様々なことを考慮する必要がありますので、示談交渉の経験が豊富な弁護士に任せるのがよいと言えるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
強制わいせつ事件で前科が付くことを避けたいとお考えの方、被害者の方との示談をお考えの方は、一度ご相談ください。