騙して全裸を撮影し準強制わいせつ罪

2019-07-11

騙して全裸を撮影し準強制わいせつ罪

~今回の事件~
神奈川県横浜市神奈川区在住のAさん(50歳)は、芸能プロダクションを経営しています。
Aさんは、モデル志望のVさん(20)に対して、「モデルになるためには全裸になって写真撮影されることも必要である」と誤信させて、Vさんの承諾を得て全裸にして写真撮影をしました。
翌日、Aさんは準強制わいせつ罪の疑いで神奈川県神奈川警察署の警察官に逮捕されてしまいました。
(これはフィクションです)

~問題となる犯罪~

刑法第178条 第1項
人の心身喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせてわいせつな行為をした者は、第176条の例による。(6月以上10年以下の懲役に処する。)

~準強制わいせつ罪~

準強制わいせつ罪は、刑法176条のように、暴力又は脅迫の手段を用いないが、被害者の抵抗困難な状態を利用するわいせつ行為を処罰するものです。
被害者の抵抗困難な状態は、「心神喪失」と「抗拒不能」の2つに分類されます。

「心神喪失」とは、「自分の性的自由が侵害されていることについての認識がない場合」をいいます。
睡眠、泥酔、失神などの状態のことを指します。

「抗拒不能」とは、「自己の性的自由が侵害されていることについての認識はあるが、物理的あるいは心理的に抵抗ができない、抵抗が著しく困難な場合」をいいます。

~わいせつな行為~

「わいせつ」という言葉だけでは、どのような行為が「わいせつ」に当たるかが不明確です。

そこで、「わいせつな行為」とは、裁判例によって「徒に性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為」と定義づけられています。

本罪は、個人の性的自由を保護するための条文なので、不特定多数の人がどのように感じるかではなく、被害を受けた相手がどのように感じるかが重視されます。
そのため、本罪の「わいせつな行為」に該当する行為は、公然わいせつ罪(174条)でいう「わいせつな行為」とは少し異なります。
たとえば、公共の場で無理やりキスをした場合、強制わいせつ罪における「わいせつな行為」には当たっても、公然わいせつ罪における「わいせつな行為」には当たらないと考えられます。

~被害者の承諾~

被害者自身が、自分への法益侵害を承諾している場合は、犯罪が成立しないことがあります。
つまり、わいせつな行為の相手方がその行為を許していれば、たとえ準強制わいせつ罪に当たる行為に及んでも無罪になるということです。
では、今回の事件では、AさんはVさんから承諾を受けているので、準強制わいせつ罪は成立しないのでしょうか。

裁判例では、「もし被害者が錯誤に陥っていなければ行為者に性的行為をゆるさなかったであろう」といえる場合には、被害者の承諾は無効であるとしています。
つまり、相手を騙す欺罔行為は、相手を心理的な抗拒不能状態にさせているとして、被害者の承諾を無効にして、準強制わいせつ罪の成立を認めるのです。

今回の事例において、Aさんは、Vさんにモデルになるためには全裸で写真撮影をされることが必要だと誤信させています。
Vさんは、Aさんが自分を騙していると分かっていれば、全裸で写真撮影をすることを許さなかったはずなので、Vさんの承諾は無効となり、Aさんの行為は準強制わいせつ罪に該当する可能性があるでしょう。

もしも、ご家族の方が、このような準強制わいせつ罪の疑いで逮捕されてしまった場合は、早急に刑事事件専門の弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は、逮捕されてしまった方のもとへ面会に行き、今後の対応の仕方や家族からの伝言を伝えることが可能です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に強い弁護士無料法律相談初回接見サービスをおこなっております。
無料法律相談や初回接見サービスの予約はフリーダイヤル0120-631-881にて
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