わいせつ電磁的記録媒体陳列罪で逮捕

2019-11-18

わいせつ電磁的記録媒体陳列罪で逮捕

わいせつ電磁的記録媒体公然陳列罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ ケース ~

Aさん(女性)は、自分の性器を撮影したわいせつな動画ファイルを、インターネット上の動画サイトのサーバーコンピューターに送信し、動画サイト利用者が閲覧可能な状態にしたとして、警視庁富坂警察署の警察官によりわいせつ電磁的記録媒体陳列罪の容疑で逮捕されました。
逮捕されたAさんの身を案じたAさんの家族は、刑事事件に強い弁護士初回接見を依頼することにしました。
(事実を基にしたフィクションです。)

~ わいせつ電磁的記録媒体陳列罪 ~

わいせつ電磁的記録媒体陳列罪は刑法175条1項に規定されています。

刑法175条1項
 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。

「文書」とは本など文字によって表示されるもの、「図画」とは写真、絵画など象形的方法によって表示されるものをいいます。
なお、かつては、わいせつな「文書、図画その他の物」だけが規定されていました。そこで、フロッピーディスクやコンピューターのハードディスクなどが「文書、図画その他の物」に含まれるのかどうかという点が問題となっていました。しかし、平成23年改正により、規定に「電磁的記録に係る記録媒体」と明記されこの問題は解消されました。
「電磁的記録に係る記録媒体」にはフロッピーディスクやコンピューターのハードディスクの他にも、BL・DVD・CD、USBメモリー、フラッシュメモリー、インターネット上のサーバー、ビデオカセットテープなどが含まれます。
「わいせつ」とは、徒らに性欲を興奮または刺せしめ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道徳観念に反するもの、をいいます。

したがって、刑法175条1項で禁止される行為は

・「わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物」を「頒布」、「公然と陳列した」こと
・「電気通信の送信により」「わいせつな電磁的記録その他の記録」を「頒布」したこと

となります。

「頒布」とは、不特定又は多数人に対して有償又は無償で交付することをいいます。
そのため、特定の人に対して1回限りで交付することは「頒布」には当たりません。
もっとも、特定の1人に対する1回限りの交付であっても、反復継続して交付する意思があれば、「頒布」に当たりうると判断した裁判例があります。
また、「頒布」と言えるためには、現実に交付・引き渡しがされることが必要であり、例えば、わいせつ物を郵送したが、配送途中の事故により相手方に到達しなかったという場合には、「頒布」には当たらないことになります。

「公然と陳列」とは、不特定又は多数の者が閲覧することができる状態に置くことをいいます。
そのため、特定少数人のみが閲覧できるという状態にすぎない場合には、原則として「公然と陳列」には当たらないことになります。
しかし、特定少数人のみが閲覧できる状態にすぎない場合であっても、これが不特定多数の者を勧誘した結果、たまたま特定少数人のみが閲覧しただけに過ぎないという場合(例えば、わいせつな映像を上映しようと思い、映画館に不特定多数の者を勧誘したが、結果として小数人しか来ず、小数人しか閲覧しなかったという場合)には、例外的に「公然と陳列」に当たりうると判断した裁判例があります。

本件では、サーバーコンピューターが「電磁的記録に係る記録媒体」に当たります。
また、そのサーバーに不特定又は多数の者がアクセス可能な状態であれば、「公然と陳列した」ことにも当たるでしょう。
そうすると、やはりAさんにはわいせつ電磁的記録媒体陳列罪が成立すると考えられます。

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