わいせつ物頒布等罪で逮捕・不起訴、略式起訴

2019-03-23

わいせつ物頒布等罪で逮捕・不起訴、略式起訴

事例:

Aは、わいせつ動画をインターネット上のサーバに保存し、顧客に対し有償でダウンロード販売していた。
福岡県筑紫野警察署の警察官は、Aをわいせつ物頒布等罪の疑いで逮捕した。
Aの家族は、性犯罪事件に強いと評判の弁護士に相談することにした。
(本件は事実を基にしたフィクションです。)

~わいせつ物頒布等罪(わいせつ電磁的記録等送信頒布罪)~

刑法175条は、わいせつ物頒布罪の諸類型を処罰する旨の規定を定めています。
わいせつ物頒布罪とは、典型的には、わいせつな写真やDVDなどを販売したりレンタルしたりする行為を処罰する規定です。
ここでいう「わいせつ」概念は判例・実務上も極めて抽象的かつ相対的な概念であり、現在では主として性器等を修正することなくそのまま写しているものを「わいせつ」物として取り締まっているのが実情のようです。

ところで、本件では、インターネットを介したわいせつ物の頒布が問題となっています。
したがって、本件では上記で挙げたいわゆる典型的なわいせつ物頒布罪(同条1項前段)ではなく、同項後段の適用が問題となります。
刑法175条1項後段は、「電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者」も、1項前段と同様に処罰する旨を定めています(後段の罪に関しては「わいせつ電磁的記録等送信頒布罪」などとも呼ばれます。)。
本罪は、わいせつ物も近年デジタル化・電子化が著しく、これを取り締ることが従来の刑法の範囲では難しかったことから、2011年に改正・立法された規定です。

本件のようないわゆるインターネット上のサーバに置かれたわいせつ動画を、顧客にダウンロードさせる形での頒布行為に関しては、最決平成26・11・25の最高裁判例が参考になります。
当該判例は、「被告人らが運営する……配信サイトには,インターネットを介したダウンロード操作に応じて自動的にデータを送信する機能が備え付けられていたのであって,顧客による操作は被告人らが意図していた送信の契機となるものにすぎず,被告人らは,これに応じてサーバコンピュータから顧客のパーソナルコンピュータへデータを送信した」とみるべきであるとしました。
これは、不特定の者である顧客によるダウンロード操作を契機として、顧客のコンピュータにわいせつ動画が送信されたとしても、上記機能に鑑みれば被告人の行為によって「頒布」されたもの評価できることから、175条1項後段の罪が成立するとしたものです。
したがって、本件でも、顧客によるダウンロードという操作が介在してはいるものの「頒布」行為に当たるものとして、同罪が成立する可能性があります。

~わいせつ物頒布等罪における弁護士の活動~

刑法は、保護する利益の主体によって、個人的法益・社会的法益・国家的法益に対する罪にそれぞれ分けられています。
本罪は刑法典の第2編第22章に「わいせつ、強制性交等及び重婚の罪」として規定されているものの、同じ章に位置づけられる強制わいせつ罪(176条)等が被害者の性的自由を保護するという個人的法益を保護するための規定であるのとは異なり、健全な性風俗の維持という社会的法益を保護されるものと解されています。
したがって、同じ性犯罪でも具体的な被害者が明確である個人的法益に対する罪とは違い、わいせつ物頒布等罪では被害弁償や示談が難しいという側面があることに注意が必要です。
よって、起訴猶予等の不起訴を得るためには、被疑者に前科前歴がないことや、被疑者の償いの意思を示すしょく罪寄付等を行うことなども考えられます。

また、本罪は「250万円以下の罰金」という刑法典に定められている罰金刑では、最も重く処罰することが可能な犯罪です。
もっとも、統計的には本罪も略式起訴がかなり多く、略式起訴は「100万円以下の罰金又は科料」を科し得る事件(刑訴法461条)において利用可能であることから、検察官が100万円以下の罰金を科すことが相当であると判断すれば、本罪においても略式起訴により早期に刑事手続から解放されるという道を選択することも一考に値するでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、わいせつ物頒布等罪を含む性犯罪事件に強い刑事事件専門の法律事務所です。
わいせつ物頒布事件逮捕された方のご家族は、年中無休24時間通話可能のフリーダイヤル(0120-631-881)にまずはお問い合わせください。
福岡県筑紫野警察署への初回接見費用:36,700円