つきまといでストーカーに
つきまといでストーカーに
【事件】
京都府京都市左京区にある予備校で講師をしているAさんは,生徒の女性Vさん(当時19歳)に好意を抱いていました。
Aさんは帰宅するVさんにつきまとうようになりました。
VさんはAさんのつきまとい行為をやめさせられないか、京都府下鴨警察署に相談に行きました。
(フィクションです)
【ストーカー規制法】
他人につきまとう行為は,その目的や内容によってはストーカー規制法違反として処罰される可能性があります。
ストーカー規制法は,第3条によって「何人も,つきまとい等をして,その相手方に身体の安全,住居等の平穏若しくは名誉が害され,又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせてはならない」と規定しています。
この第3条に反してつきまとい等を反復すると,ストーカー行為として1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されるおそれがあります(第18条)。
さらに,第3条に違反するつきまとい等の行為が反復してなされるおそれがあると認められた場合には,各都道府県の公安委員会によって禁止命令等を行うことができます(第5条)。
この禁止命令等に違反してさらにつきまとい等の行為に及んだ場合の法定刑は,2年以下の懲役または200万円以下の罰金(第19条)となっています。
ストーカー規制法が規定している「つきまとい等」は第2条によって以下のように定義されています。
特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で,当該特定の者またはその配偶者,直系もしくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対して,
①つきまとい,待ち伏せし,進路に立ちふさがり,住居,勤務先,学校その他通常所在する場所の付近において見張りをし,住居等に押しかけ,または住居等の付近をみだりにうろつくこと。
②その行動を監視していると思わせるような事項を告げ,またはその知り得る状態に置くこと。
③面会,交際,その他の義務のないことを行うことを要求すること。
④著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
⑤電話をかけて何も告げず,または拒まれたにもかかわらず,連続して,電話をかけ,ファクシミリ装置を用いて送信し,もしくは電子メールの送信等をすること。
⑥汚物,動物の死体その他の著しく不快または嫌悪の情を催させるような物を送付し,またはその知り得る状態に置くこと。
⑦その名誉を害する事項を告げ,またはその知り得る状態に置くこと。
⑧その性的羞恥心を害する事項を告げもしくはその知り得る状態に置き,その性的羞恥心を害する文書,図画,電磁的記録に係る記録媒体その他の物を送付しもしくはその知り得る状態に置き,またはその性的羞恥心を害する電磁的記録その他の記録を送信しもしくはその知り得る状態に置くこと。
処罰対象となるストーカー行為とは,同一の者に対し上記のつきまとい等を反復してすることをいいます。
ただし,①から④の行為及び⑤(電子メールの送信等のみ)については,身体の安全,住居等の平穏若しくは名誉が害され,または行動の自由が著しく害される不安を覚えさせる方法でなければストーカー行為とはなりません。
逆に言うと,相手方が不安を覚えてしまえばストーカー行為があったと認められやすくなってしまうと考えられます。
また,①から⑧に当たる行為であっても反復してしなければ処罰されないのかというと,必ずしもそうではありません。
たとえ1回だけであっても,その内容にもよりますが,③の行為は強要罪(刑法第223条)に当たる場合がありますし,④や⑦の行為もそれぞれ脅迫罪(刑法第222条),暴行罪(刑法第208条),名誉毀損罪(刑法第230条),侮辱罪(刑法第231条)などの犯罪が成立してしまう場合があります。
相手のSNS等に行動を監視していることや相手が拒絶している自身の好意を伝える内容を繰り返し書き込むこともストーカー行為に当たり得ます。
Aさんの場合,それが純粋にVさんへの好意からのものであってもVさんが不安を覚えて警察に相談している事実がある以上,さらに繰り返しつきまとえばストーカー規制法違反事件として立件される可能性があります。
このように,行為者がストーカーに当たると考えていなくても,ストーカー規制法違反として禁止命令等の処分がなされたり処罰される場合があります。
しかし,ストーカー規制法違反を疑われても早期に弁護士に依頼することで,身体拘束からの解放や不起訴あるいは執行猶予を得られる可能性を高めることができます。
ストーカー規制法違反の被疑者となってしまった方は,お早めに刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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