痴漢事件を起こし、被害者によって逮捕(後編)

2025-03-13

前回に引く続き、被害者自身によって痴漢事件の被疑者が逮捕された場合の刑事手続につき、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

事例

Aさんは、名古屋市内を走る電車内において、乗客であるVさんの臀部を着衣越しに触る行為を行いました。
Vさんは、Aさんの犯行に気付き、自らAさんの腕を掴んで「痴漢しましたよね。次の駅で降りましょう。」と告げました。
Aさんは、駅員室や警察で少し怒られるくらいで済むと思い、Vさんのいう通りにしていたところ、駆け付けた警察官に「あなたはVさんによって逮捕されているから、しばらくは帰れないものと思っておいてほしい。」と告げられました。
Aさんは、まさか私人逮捕されているとは思っていませんでしたが、民間人であるVさんが自身を適法に逮捕し得るのかと疑問に感じています。
(事例はフィクションです。)

逮捕後の手続

検察官、検察事務官及び司法警察職員以外の者は、現行犯人を逮捕したときは、直ちにこれを地方検察庁若しくは区検察庁の検察官又は司法警察職員に引き渡さなければなりません。
刑事訴訟法第214条)。
逮捕行為を行ったVさんがAさんを取り調べたり、どこかに留置することはできません。
仮にこのような行為をVさんが行った場合、Vさんが監禁罪に問われる可能性があります。
(東京高等裁判所昭和55年10月7日判決)
事例の場合は、駆け付けた警察官にAさんを引き渡したものと考えられるので、やはりこの点においても刑事手続は適法でしょう。

また、検察官、検察事務官又は司法警察職員が現行犯人を逮捕する場合において必要があるときは、令状なく、
人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内に入り被疑者の捜索をすること
逮捕の現場で差押、捜索又は検証
をすることができます。
しかし、現行犯人を逮捕した私人は上記の処分を行うことができません
(刑事訴訟法第220条第1項1号~2号、第3項)

警察署に引致された後の弁護活動

Vさんによって逮捕されてしまった以上留置場に入らなければならない可能性は十分ありえると思われます。
反対に、留置の必要が認められなければ、直ちに釈放されることなります。
(刑事訴訟法第203条、216条)
身体拘束がなされた状態で事件解決を目指すよりも、釈放された状態でこれを目指す方が良いのは当然だと言えるでしょう。

事例のAさんが今回の痴漢行為が初犯で、AさんとVさんとの生活圏が相当程度離れており、信頼できる身元引受人を用意することができれば、比較的早期の釈放を実現することができるかもしれません。
まずは、早期に弁護士を依頼し、事件解決に向けたアドバイスを受けるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が痴漢の疑いで逮捕されてしまい、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。