強制性交等事件で逮捕・供述の信用性を争う

2020-03-26

強制性交等事件で逮捕されてしまった事案において、被害者の供述の信用性等を争う場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

~事例~

埼玉県桶川市に住むAは、Vを人通りの少ない場所に連れていき、Vと性行為を行った。
Vは、Aから暴行・脅迫を受け、無理矢理性行為を強いられた旨主張している。
埼玉県上尾警察署の警察官は、Aを強制性交等(旧強姦)の容疑で逮捕した。
なお、Aは一貫して、当該性行為は合意に基づくものであったとして容疑を否認している。
Aの家族は、性犯罪事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実をもとにしたフィクションです。)。

~強姦罪から強制性交等罪へ~

平成29年刑法改正により、「強姦罪」は「強制性交等罪」へと改正されました。
改正後の刑法177条(現行法)は、
・「13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。」
と規定するに至りました。
これは、改正前の刑法177条が、
・「暴行又は脅迫を用いて13歳以上の女子を姦淫した者は、強姦の罪とし、3年以上の有期懲役に処する。13歳未満の女子を姦淫した者も、同様とする。」
と規定していたことから、主として3つの点で大きな変更があったことになります。

まず、犯罪の客体(被害者)を「女子」と性別を限定していたのに対して、改正後の規定は単に「者」とし、性別の限定を取り払いました。
これに伴って犯罪の主体(加害者)も、旧規定が原則として男性に限定されていたのに対し、女性も強制性交等罪の主体となることになりました。
また、従来は「姦淫」と通常の性行のみを処罰対象としていたのに対し、改正後は、肛門性交や口腔性交も含めた「性交等」を処罰するものとし、処罰の対象となる行為態様を拡大しています。
そして、法定刑も「3年以上の有期懲役」から「5年以上の有期懲役」へと加重されるに至っています。

なお、本罪も含めた刑法上の性犯罪処罰規定が、非親告罪となったことも大きな変更点といえるでしょう。

~被害者の供述の信用性~

上記の条文(旧法・現行法いずれからも)から明らかなように、強制性交等罪(旧強姦罪)が成立するためには、「暴行」または「脅迫」を手段として「性交等」を行う必要があります。
したがって、「暴行」「脅迫」がなければ、(被害者が13歳未満でない限り)犯罪は成立しないことになります。
本件のように、暴行脅迫を行った事実はなく、合意に基づく性交であるとして容疑を否認するケースというのも少なからず存在するのが現実です。

性行為は密室等で行われることも少なくなく、性犯罪は被害者の供述が重要な証拠となることが多い事件類型です。
特に本件のように双方の主張が、暴行・脅迫による性交と合意による性交と、真っ向から対立している場合は、事実認識の違いというレベルを超えてどちらかが虚偽の供述を行っている可能性が高いといえます。
したがって、加害者側の弁護士としては、被害者の供述に嘘や虚偽が含まれていないかを慎重に検討する必要があるといるでしょう。
その際には、供述が他の証拠と整合するかなどを含めて、専門的な知識に基づく詳細な分析が求められることになります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、強制性交等事件(旧強姦事件)などの性犯罪事件を含む刑事事件専門の法律事務所です。
強制性交等事件(旧強姦事件)で逮捕された方のご家族は、年中無休・通話料無料のフリーダイヤル(0120-631-881)にまずはお電話でお問い合わせください。