被害者と同意があった? 性犯罪の成立可否
被害者と同意があった? 性犯罪の成立可否
強制性交等罪、準強制性交等罪などの性犯罪で多く問題となる、被害者との同意の有無の主張について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
<事例1>
東京都世田谷区内の大学でテニスサークルに所属するAさんは、同サークルの女子Vさんと個人的に夕食を共にして、Vさんが酔ったところをホテルに誘い、Vさんが「いや」などの拒否を示したにも関わらず性行為に及びました。
後日、警視庁成城警察署がAさん宅を訪れ、Aさんに強制性交等罪の疑いがあるとして逮捕しました。
警察の調べに対し、AさんはVさんとの性行為についてVさんから強い拒否や抵抗を受けることはなく、夜遅くまで二人きりで飲むことは暗に性行為の同意があったと主張し、強制性交等罪の事実を否認しています。
<事例2>
東京都世田谷区在住の会社員Aさんは、マッサージの派遣サービスを利用して、施術者の女性Vさんを自宅に招き、施術の終了後、お互いの合意のもとで性行為に至りました。
後日、警視庁成城警察署からAさんに連絡があり、先日Aさんが利用した派遣マッサージを行ったVさんがAさんに無理矢理肉体関係を迫られたと被害を訴えているとして、強制性交等罪の疑いで事情聴取のために警察署に出頭するよう要請されました。
Aさんは、Vさんとの性行為につき確実に合意があったと主張したい反面、少しでも刑事責任を負う危険性を負うことも回避したいと思い、東京都で強制性交等罪を含む性犯罪の刑事事件に強い弁護士事務所に法律相談することにしました。
(フィクションです。)
今回の刑事事件例のテーマは、飲酒により意識朦朧となっていた20代の女性に性的暴行をしたとして、準強姦罪(刑法改正後の「準強制性交等罪」に相当)に問われた福岡市の会社役員が、無罪とした1審判決を破棄して懲役4年を言い渡した令和元年2月5日づけの福岡高等裁判所判決を不服とし、2月11日に最高裁判所に上告した報道から着想を得ています。
この事件では、2019年3月の1審判決(福岡地裁久留米支部)は、女性が「抗拒不能の状態だった」と認める一方、「女性が同意していると被告人が誤信するような状況にあった」として無罪を言い渡した野に対し、控訴審判決は「被告人は抗拒不能状態を認識していたと推論するのが当然」と認定し、一審判決を覆してで有罪としました。
【性犯罪の要件】
13歳以上の者に対し、暴行または脅迫を用いて、性交・肛門性交・口腔性交を行うことを「強制性交等」と呼び、これに違反した者は、5年以上の有期懲役が科せられます。
また、13歳未満の者に対しては、年少者の保護の観点から、暴行や脅迫がされていない場合であっても、性交・肛門性交・口腔性交を行ったことで強制性交等罪が成立するとされています。
上記のとおり、13歳以上の者に対する強制性交等罪の成立にあたっては、暴行・脅迫が要件とされているため、何の暴行や脅迫もなく、ただ当事者の片方が気乗りしなかったとか不満があった等の理由では強制性交等罪は成立しません。
一方、強制性交等罪における暴行とは、例えば、相手の同意がないにも関わらず無理矢理キスをすること、腕を押さえつけて性行為を強いること、馬乗りになること等を含むとされており、当事者間の性行為にあたって同意があったのか、または、被疑者が同意があったと誤信してもやむを得ない客観的事情があったのかが重要なポイントとなります。
この点、上記刑事事件例において、1審判決が覆す最大の理由となったように、「被疑者が同意があったと誤信してもやむを得ない客観的事情」については、もちろん控訴審で提出された追加の証拠の内容によって左右される面もありますが、たとえ同じ証拠に基づいて判断する場合であっても、判断する裁判体によって別の結論(判決)を下すことも決して少ないことではありません。
もちろん、被疑者・被告人の方は、自分が認識しているとおりに主張する権利があり、その主張が被害者の主張と真っ向から対立するからといって、自分の主張や認識を曲げなければならないというものでは決してありません。
よって、被害者の主張する事実は誤りで、確かに当該性行為について合意はあったと終始一貫して主張し、強制性交等罪の成立を否認しつづけることも一つの選択肢ではあります。
しかし、捜査段階でこの主張を一貫して行った場合、検察官によって起訴され、公開の刑事裁判となり、時間や金銭面で多くの労力や不安を抱えることになることを覚悟しなければなりません。
他方で、被害者(と主張する者)に対して、刑事責任の追及という問題へ発展させないよう、事前に当事者間で和解(示談)を行い、一定の条件や謝罪金(示談金)の提供により刑事事件化を未然に防ぐというアプローチも考えられます。
特に、事例2のように、性風俗的なニュアンスのあるサービスにおける強制性交等罪では、捜査機関も当事者間の和解(示談)で解決してくれることを期待する傾向もあり、性犯罪の刑事事件に強い弁護士を介入させ、早期に事件解決を図ることが有効な場合もあります。
ですので、このような被害者との同意の有無が問題となる難しい性犯罪の刑事事件では、自分の主張したい内容を刑事事件のプロである弁護士に聴いてもらい、その主張の妥当性や主張しつづけることの難易度、それに伴うデメリット等をしっかり説明を受けた上で、今後予想される刑事手続に臨むことが非常に重要です。
性犯罪の刑事事件で同意の有無に問題があり、刑事事件化または逮捕でお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所への初回無料の法律相談または初回接見サービスをご検討ください。