準強制性交等罪で逮捕

2019-07-01

準強制性交等罪で逮捕

兵庫県神戸市長田区に住むAさん。
友人の女性Vさんと飲みに行きました。
店を出たVさんは、
「終電で帰る」
と言っていますが、かなり酔ってフラフラの状態。
「これはチャンスだな」
と思ったAさんは、
「とりあえずウチで休んできなよ」
などと言って自宅に連れ込み、性交をしました。
後日、Vさんから被害届の提出を受けた兵庫県長田警察署の警察官により、Aさんは逮捕されました。
(フィクションです)

~強制性交等罪の成立条件~

Aさんの行為には、強制性交等罪または準強制性交等罪が成立する可能性があります。
まずは強制性交等罪から見ていきましょう。

刑法第177条
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
第38条1項
罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。

これらの条文をもとにすると、強制性交等罪の成立条件は

①暴行または脅迫を用いること
②性交等をすること
③被害者の同意がないこと
④故意(「罪を犯す意思」)があること

となります。

①暴行または脅迫を用いること
暴行または脅迫は、相手方の反抗を著しく困難にする程度のものである必要があります。
特に、「反抗を著しく困難」とは、具体的にどの程度のものかというのが問題となります。
これは各事件の個別的な状況をもとに判断されます。

以前は強い態様の暴行または脅迫がなければ条件が満たされないと考えられていました。
しかし、被害者としては無理やり性交されそうな状況になると、「抵抗するとさらに強い暴行されるんじゃないか」「殺されるかもしれない」といった恐怖心などから、大声を上げたり、男性を強く突っぱねたりすることが難しいことも多いです。

今後は、それほど強い態様の暴行または脅迫ではなくても、相手方の反抗を著しく困難にする程度のものであったと判断される傾向が強くなってくるかもしれません。

②性交等をすること
いわゆるアナルセックスやフェラチオでも性交「等」として条件を満たします。

③被害者の同意がないこと
強制性交等罪は同意がないことが前提となっているため、相手方の同意があれば成立しません。

④故意があること
故意があるというのは、簡単に言うと、犯罪行為をわざと行ったということです。
ちなみに。過失というのは犯罪行為を不注意で行ったということです。

強制性交等罪で特に問題となるのは、被害者が同意していないのに、同意していると思っていた場合です。
たしかに同意していると思っていたのであれば、わざと犯罪をしたわけではないので、故意が認められず犯罪は成立しません。
しかし、「同意がない」と明確に認識している場合はもちろん、「同意がないかも」と思っているだけでも故意があると評価されるのが実務上は一般的です。
それだけでなく、本人がいくら「同意があると思った」と弁解しても、それが警察官・検察官・裁判官にすんなり信じてもらえることは稀です。

特に①で書いたように、性犯罪の被害者は抵抗が難しく、明確な拒否がなくても同意がない場合があるとの知識が世間に広まっていけば、「同意があると思った」という弁解が通用しにくくなることは十分考えられます。
なぜなら、「被害者が強く抵抗していなくても、同意がない場合もあることは常識なのだから、あなたも同意がないかもと思っていただろう」と言われてしまう可能性があるからです。

~準強制性交等罪の成立条件~

Vさんが酔っていたことから、Aさんには強制性交等罪ではなく準強制性交等罪が成立する可能性もあります。

刑法第178条2項
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。

準強制性交等罪の成立条件は

①被害者が心神喪失または抗拒不能の状態にあること
②性交等をすること
③被害者の同意がないこと
④故意があること

となります。
強制性交等罪と比べると、①のみが違います。
つまり、暴行や脅迫をしなくても、相手が飲酒や薬物等を原因として抵抗できない状況にあることを利用して、あるいは飲酒や薬物摂取をさせて抵抗できない状況にさせて状況にさせて性交等をすれば、犯罪が成立するわけです。

~弁護士にご相談を~

逮捕されたAさんに対しては、こちらに記載されているように刑事手続が進んでいきます。

弁護士としては、早期釈放を実現させ、不起訴処分、罰金、執行猶予などの軽い処分や判決を目指して弁護活動をしていくことになります。

しかし、逮捕されるとご本人やご家族は、どんな罪が成立するのか、どのくらいの刑罰を受けるのか、刑事手続はどのように進んでいくのか、取調べにはどう受け答えしたらいいのか等々、不安点が多いと思います。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門とする弁護士事務所です。
ご家族などからご依頼いただければ、拘束されている警察署等にすみやかに接見に伺います。
また、逮捕されていない場合は、事務所での法律相談を初回無料で受けていただけます。
接見や法律相談では、上記の不安点などにお答えいたします。

刑事事件の経験が豊富な弁護士が対応いたしますので、強制性交等罪などで逮捕された、捜査を受けているといった場合には、ぜひ一度ご相談ください。