監禁罪等で逮捕

2019-07-06

監禁罪等で逮捕

Aさんは、Vさん(14歳・女性)を誘拐してわいせつなことをすることを計画し、Vさんの両親がおらず、Vさんが一人で自宅にいる時間帯を見計らってVさんの自宅に立ち入り、Vさんを無理やり連れ去った後、VさんをAさんの車の中に閉じ込めました。その後Aさんは、Vさんの両親により通報を受けた埼玉朝霞警警察署の警察官により、住居侵入罪わいせつ目的略取罪及び監禁罪の容疑で逮捕されました。Aさんの家族は、刑事事件に強い弁護士初回接見を依頼することにしました。
(フィクションです。)

~ はじめに ~

Aさんにはどんな罪が成立し、どんな刑罰を科される可能性があるのでしょうか?

~ 住居侵入罪(刑法130条前段) ~

住居侵入罪は、正当な理由がないのに、人の住居に侵入した場合に成立する罪です。

「侵入」とは、建造物の管理権者の意思に反する立ち入りをいいます。
AさんとVさんの両親とに面識がなければ、Aさんが勝手に立ち入っただけで「侵入」に当たるでしょうし、仮に面識があったとしても、Vさんの両親がAさんの略取目的での立ち入りを許すはずがありませんから、やはり「侵入」に当たると考えられます。

本罪の法定刑は「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」です。

~ わいせつ目的拐取罪(刑法225条) ~

わいせつ目的拐取罪は、わいせつな目的で人を略取・誘拐した場合に成立する罪です。

「略取」とは、暴行または脅迫を手段として、人をその生活環境から引き離し、自己や第三者の支配下に移すことをいいます。「略取」とは異なり、欺罔(騙すこと)や誘惑を手段として人をその生活環境から引き離し、自己や第三者の支配下に移した場合には「誘拐」となります。「略取」と「誘拐」とを合わせて「拐取」ともいい、いずれについても刑法第225条は禁止しています。AさんはVさんを無理矢理連れ出したということですから「略取」で逮捕されたものと考えられます。

本罪の法定刑は「1年以上10年以下の懲役」です。

なお、Vさんは未成年者(20歳未満の者)ですから、仮に、Aさんにわいせつ目的が認められなかった場合は未成年者拐取罪3月以上7年以下の懲役)が成立する可能性があります。同罪は親告罪(被害者の告訴がなければ起訴されない罪)です。

~ 監禁罪(刑法第220条) ~

監禁罪は、不法に人を監禁した場合に成立する罪です。

「監禁」とは、一定区域からの脱出を不可能若しくは著しく困難にすることをいい、多少の時間的継続を必要とします。
Aさんが、一定時間、Vさんを自動車内に乗せて走行すれば「監禁」に当たる可能性はあります。

本罪の法定刑は「3月以上7年以下の懲役」です。

では、AさんがVさんにわいせつ目的での略取(連れ去り)を秘し、Vさんが不法に監禁されていることを認識していない場合、監禁罪は成立するでしょうか?
この点については、監禁罪の保護法益(守るべき利益)は「行動したいときに行動できる自由」(可能的自由)であることを理由に認識を「不要」とする立場と、保護法益は可能的自由だが可能的自由の根本は「人の意思」であるとして、認識を「必要」」とする立場があります。前者の立場の場合、監禁罪が成立し、後者の立場の場合成立しません。
なお、不要としている裁判例(広島高裁昭和51年9月21日)もありますが、オートバイに乗っている途中、被害者が「降ろして」と言った時点から監禁と評価した判例(昭和38年4月18日)もあります。

~ おわりに ~

最後に、上記3つの罪が成立した場合の罪数をご説明いたします。
まず、住居侵入罪わいせつ目的略取罪は手段と結果の関係にありますから牽連犯となり、罪の重いわいせつ目的略取罪で処断されます(刑法54条1項)。次に、わいせつ目的略取罪監禁罪は保護法益が異なることから併合罪となり、結果として、「1年以上15年以下の懲役」の範囲で処断されます。

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