監護者性交等罪・強要罪で逮捕
監護者性交等罪・強要罪で逮捕
兵庫県加古川市に住むAさんは,内縁の妻であるBさん(40歳)と,その娘であるVさん(15歳)と一緒に暮らしています。
Aさんは,Bさんが経済的に困窮していたのを知っていたことから,毎月決まった日に,Aさん名義の口座からBさん名義の口座へ10万円振り込んでいました。
また,Bさんとの結婚も考えて,毎月の振込みとは別に100万円の貯金を用意していました。
しかし,その傍らAさんは,Bさんが自宅を留守にしている間,Vさんに対し「おれがいなくなったらどうなるか分かるよな」「このことは絶対にお母さん(Bさん)に話すなよ」「話したらどうなるかわかるよな」など言って,Vさんに性交に応じさせていました。
数か月我慢できていたVさんでしたが,ついに我慢することができなくなって母親に相談し,一緒に兵庫県加古川警察署へ行きました。
Aさんは,兵庫県加古川警察署に強要罪,監護者性交等罪で逮捕されました。
(フィクションです)
~ 監護者性交等罪 ~
監護者性交等罪については刑法179条2項に規定があります。
179条2項 18歳未満の者に対し,その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は,第177条の例による。
2項の「177条の例による」との「177条」とは「強制性交等罪」を指し,「例による」とは法定刑を強制性交等罪と同様「5年以上の有期懲役」とするという意味です。
= 18歳未満の者 =
わいせつ罪,性交等罪といえば,「被害者=女性」をイメージしがちですが,18歳未満の「者」とされているように男女の区別はありません。
したがって,男性が被害者である監護者わいせつ罪・監護者性交等罪も十分にあり得ます。
* 18歳未満の者が同意した場合 *
18歳未満の者が同意した場合も本罪は成立します。
そもそも監護者性交等罪が成立するような状況下では,18歳未満の者の性交等に対する自由意思(同意)はないものと考えた方がいいでしょう。
= その者を現に監護する者(=監護者) =
「監護者」は法律上の監護権(民法820条)に基づかなくても,事実上現に18歳未満の者を監督し保護する者であれば「監護者」に当たります。
反対に,法律上の監護権を有していても,実際に監護している実態がなければ現に監護する者に当たりません。
現に監護している実態があるかどうかは,同居の有無や居住状況,指導や身の回りの世話などの生活状況,生活費の負担などの経済的状況,未成年者に対する諸手続の状況などを考慮して判断されます。
(例)
・同居して子供の寝食の世話をして指導・監督している親
・単身赴任して平日は子供との関わりは少ないが,配偶者を介したり電話やメールで指導等をしたり,休日に帰宅して指導等をしている親
・親の再婚相手で,養子縁組している者
・養子縁組していない者であっても,同居し子供の寝食の世話をして指導・監督している者
= 影響力があることに乗じて =
「影響力」とは,監護者が被監護者の生活全般にわたり,衣食住などの経済的な観点や生活上の指導・監督などの精神的な観点から,現に被監督者を監督し,保護することによる生じる影響力とされています。
「あることに乗じて」とは,当該影響力が一般的に存在し,当該行為時においてもその影響力を及ぼしている状態でわいせつ行為・性交等をすることをいいます。
わいせつ行為・性交等をする場面で,特定の影響力が生じるための具体的な行為を行う必要はありません。
影響力を及ぼしている状態でわいせつ行為・性交等を行ったことで「影響力があることに乗じて」に当たります。
= 性交等(2項) =
性交等とは,刑法177条で性交,肛門性交,口腔性交をいうとされています。
~ 強要罪 ~
強要罪については刑法223条に規定があります。
刑法223条1項
生命,身体,自由,名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し,又は暴行を用いて,人に義務のないことを行わせ,又は権利を妨害した者は,3年以下の懲役に処する。
Aさんの話の流れからすれば,Aさんの
「話したらどうなるかわかるよな」
という言葉は,財産に対し害を加える旨の告知(脅迫)に当たると判断される可能性はあります。
また,「義務のないことを行わせ」とは,それを行わせるにつき,本来被疑者に何の権限もなく,相手方に何の義務もないのに,相手方にある作為,不作為又は認容を強制することをいいます。
その作為,不作為は,法律行為たると事実行為たるとを問いません。
Aさんが言う「性交された事実をBさんに言うな」という意味は,Vさんに「母親に被害(性交に遭った事実)を申告させない」という事実行為の不作為の認容を強制させることに当たると判断される可能性があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,監護者性交等罪をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
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(兵庫県加古川警察署までの初回接見費用:39,300円)