児童虐待で監護者性交等罪

2019-05-12

児童虐待で監護者性交等罪

京都府京都市左京区に住むAさんは、娘のVさんが小さいころから暴力による虐待を加えていました。
Vさんが中学生くらいになると、AさんはVさんと性交をするようになりました
もちろんVさんは同意していませんでしたが、長年虐待されていた恐怖から抵抗できませんでした。
Aさんの妻Bさんも、Aによる虐待や性交に気付いていましたが、BさんもたびたびAさんから暴力を振るわれていたことから恐怖心があり、やめるように言うことができませんでした。
Vさんが学校の先生に事実を打ち明けたことから、Aさんは監護者性交等罪の疑いで川端警察署に逮捕されました。
(フィクションです)

~監護者強制性交等罪とは~

最近ニュースでも取り上げられることが増えたことから、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、2017年の刑法改正で監護者強制性交罪という犯罪が新設されました。

第179条2項
十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、第百七十七条の例による。
第177条
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛こう門性交又は口腔くう性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

177条の強制性交等罪(旧強姦罪)の成立には暴行または脅迫という手段を用いて性交等をした場合にしか成立しません。
しかし18歳未満の子供を監護している者は、子供に対する影響力を背景として、暴力や脅迫といった手段を用いずに性交ができてしまう場合があります。
このようなケースでも処罰ができるように、監護者性交等罪が新設されました。

どのような場合に179条2項の「影響力があることに乗じ」たといえるのかは難しい問題で、今後の裁判所の判断次第というところはあります。
今回のケースの場合、AさんがVさんを小さい頃から虐待しており、抵抗すればまた暴行されるのではと思わせるような支配関係があるといいうるので、監護者性交等罪が成立する可能性は十分あるでしょう。

~助けなかったBさんも法律違反?~

Aさんによる虐待や性交に気付きながら、何もできなかったBさん。
Aさんの犯行を容易にしたとして監護者強制性交等罪の幇助犯(刑法62条)の成否が問題となりえますが、Bさん自身も暴力を受けてAさんの行動を止めにくかったことを考えると、成立することは考えにくいです。

また、児童福祉法25条1項本文や、児童虐待の防止等に関する法律6条1項により、児童虐待を受けたと思われる児童などを発見した者は、児童相談所等に知らせなければなりません。
したがってBさんも知らせる義務がありました。
しかし、これに違反しても罰則はありませんので、Bさんも刑罰は受けません。

なお、この義務は親に限らず全ての人に課された義務ですので、近所の子供が虐待を受けているのを知った場合などにも知らせることが望ましいです。

~弁護士に相談を~

監護者性交等罪5年以上の有期懲役が科される重い罪です。
これにより逮捕された場合は家族や親戚等にも大きな影響が及ぶ可能性があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に詳しい弁護士による法律相談が初回無料で受けられます。
罪を犯した、あるいはその疑いをもたれている本人はもちろん、本ケースのBさんのような家族の方も、今後どうなってしまうのか心配が大きいと思います。
被害者にとって一番良い解決につなげるためにも、ぜひ一度ご相談ください。
(京都府川端警察署への初回接見費用:34,900円)