児童買春と示談 ~児童が児童養護施設入所の場合~

2019-03-28

児童買春と示談 ~児童が児童養護施設入所の場合~

京都市に住むAさん(45歳)は,SNSで知り合った女子高生Vさん(17歳)が18歳未満の者であると知りながら,Vさんと援助交際の目的で会いました。
そして,AさんとVさんはホテルへ入り,AさんはVさんに約束していた現金5万円を渡して,Vさんと性交しました。
後日,Aさんは,Vさんから「(一時保護により)児童養護施設に入らなければならなくなった」「もう会えない」と言われました。
AさんはVさんと児童買春したことが施設側にばれ,それが警察に通報されて逮捕されるのではないかと不安になりました。
そこで,Aさんは,児童買春に強い弁護士無料法律相談を申込みました。
(フィクションです)

~ 児童買春の罪 ~

児童買春の罪は,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下,法律)第4条に規定されています。

4条
 児童買春をした者は,5年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する。

また,児童買春の意義については法律2条2項に規定されており,児童買春とは,児童(18歳未満の者)等(児童買春法2条1項各号に掲げる者)に対し,対償を供与し,又はその供与の約束をして,当該児童に対し,性交(淫行)等をすることをいうとされています。対償とは,児童に対して性交(淫行)等をすることに対する反対給付としての経済的利益をいい,現金のみならず,物品,債務の免除などの財産上の利益も対償に含まれ,金額の多寡は問わないとされています。

~ 児童買春と示談 ~

児童買春の事実を認める場合の弁護活動としては,被害者との示談交渉を始めることが通常です。

しかし,児童買春の罪の場合,次に掲げる事情を考慮・検討しなければなりません。

= 示談交渉の相手方は誰か? =

被害者と言っても相手は18歳未満の未成年者です。
示談書に署名・押印するという行為は民法上の法律行為に当たるわけですが,法律行為をするには法定代理人(親など)の同意を得なければなりません。
つまり,未成年者が示談書に署名・押印することも可能ですが,親などの同意がない場合はあとから取消される可能性があるため,被害者が未成年者の場合は,通常,示談交渉の相手方は被害児童の親となります。

では,Aさんのように,一時保護により児童養護施設等の施設に入所させられた児童の場合はどうでしょうか?
児童が一時保護されたというのですから,示談交渉の相手方を親とすることはもはや不適格な可能性もあります。
この場合は,そもそも親権が誰にあるのか?法定代理人は誰なのか?きちんと検討する必要があるでしょう。

* 一時保護 *

一時保護とは,児童相談所長等が,児童の安全を確保し適切な保護を図るため,又は児童の心身の状況,その置かれている環境その他の状況を把握するため,児童を保護者から一時的に引き離し,施設等に入所させる処置のことをいいます(児童福祉法33条)。
児童が保護者から「児童虐待」を受けている場合などに利用されることが多いようです。

* 一時保護と親権 *

児童福祉法33条の2第1項では,児童相談所長が,

一時保護が行われた児童で親権を行う者又は未成年者後見人のいない児童

に対し,親権を行う者又は未成年者後見人があるに至るまでの間,親権を行う,とされています。
よって,この場合の示談交渉の相手は「児童相談所長」が適当であると考えられます。

= 保護者の処罰感情が厳しい =

これは児童買春に限ったことではないと思います。
しかし,児童買春の罪では児童(子ども)を性的に搾取されたとして,非常に厳しい処罰感情をお持ちの保護者の方もおられます。
このような中,示談交渉を持ちかければ「金で搾取しといて,金で解決するのか」などと逆に保護者の気持ちを逆なでしてしまう可能性もあります。

= 示談が成立したからといって不起訴が確約できるわけではない =

児童買春の罪は,成立当初から非親告罪でした。
その趣旨は,親告罪とすると,保護者への示談金の支払い及びそれに伴う告訴の取消しで事件を解決する傾向が高くなり,そうすれば,児童の保護や児童を性欲の対象としてとらえる風潮を抑制することができず,児童の心身に与える害悪を防止することができないため,と説明されています。
刑事処分を決める検察官の中には,この趣旨を厳格に遵守し,示談しても不起訴にはしないという方もおられるようです。

ですが,示談しないよりはした方が情状面で有利に働くことは間違いありません。
詳しくは弁護士にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,児童買春をはじめとする刑事事件少年事件専門の法律事務所です。
児童買春の示談でお悩みの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。
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