風営法違反と略式裁判

2021-08-18

風営法違反で正式裁判申立てについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

東京都内でキャバクラ店を営むAさんは、Vさんらが18歳未満である女子であることにも関わらず自身のキャバクラ店で雇用し働かせていたところ、第三者の刑事告発によって警視庁に風営法違反で逮捕されてしまいました。Aさんは接見に来た弁護士に「Vさんらが18歳未満であることを知らなかった」と話しています。弁護士では、このままでは正式起訴されるかもしれないと考えています。
(フィクションです。)

~風営法違反~

風営法(正式名称:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「法律」)には、風俗営業などに関する規定が設けられています。
「風俗」とありますが、何も、性的サービスに関するものだけを意味するわけではありません。
例えば、キャバクラ、スナック、ネットカフェ、ゲームセンターなど、法律2条1項各号に該当すると考えられる営業は「風俗営業」として法律の規制の対象となります。

ところで、法律22条1項3号は「営業所で、18歳未満の者に客の接待をさせること」を禁止しており、これに違反した場合には「1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金」に処せられ、場合によっては懲役刑と罰金刑を併科される可能性があります(法律50条1項4号)。

また、この罪に関しては、営業者に過失がない場合以外は、当該18歳未満の者の年齢を知らないことを理由として処罰を免れることはできません(法律50条2項)。
過失がないとされるためには、本人の陳述、身体的発育状況等の外観的事情を覚知しただけでは足りず、運転免許証や戸籍謄本等の信用性のある公的資料等で確認するとか、家族等に事情を聴いて調査するなど年齢確認につき万全を期さなければならないと考えられます。

~略式起訴、裁判を目指す~

「正式起訴」は、検察官が、裁判所に対し、皆さんもテレビドラマなどでよくみる公開の法廷で裁判(正式裁判)を開くことを求めるものに対し、「略式起訴」は、検察官が、裁判所に対し、公開の法廷ではなく書面のみでの裁判(略式裁判)を求めるものです。
憲法上、全ての国民には公開の法廷で裁判を受ける権利が認められています。ところが、略式起訴は、いわばその手続きを省略する手続きですから、検察官が略式起訴するには、被疑者からの同意を得る必要があります。
また、仮に略式起訴され、裁判官により略式命令を発せられたとしても、その告知を受けた日から14日間以内は正式裁判の申し立てをすることができます

逮捕から略式起訴、略式裁判までの流れは以下のとおりです。
逮捕→勾留→捜査機関(警察、検察)による捜査→検察官から略式起訴、裁判に関する説明を受け、同意を求められる(勾留期間満了の日のおおよそ2日前)→略式起訴
「略式裁判」は、公開の法廷に出頭する必要がなく、裁判官が書面だけで審理を行う裁判のことをいいます。
・懲役刑を受けるおそれがない(略式命令では100万円以下の罰金又は科料の刑の命令しか出せない)
→将来、刑務所で服役するおそれがなくなる
・公開の法廷に出廷する必要がない
→会社を休む必要がない(通常の日常生活を送れる)、裁判を他人の目に晒されることはない(事件を秘密にできる)
というメリットのほか
・略式命令が出た時点で釈放される
という点が最大のメリットです。

仮に、勾留中に正式起訴されると自動的に2か月の勾留が決まってしまいます。その間、釈放を目指す場合は裁判所に保釈請求し、裁判官の保釈許可を得て保釈保証金を納付しなければなりません。
これに対し、勾留中に略式起訴された場合は起訴された日に略式裁判が行われ、基本的にその日に略式命令が発せられます。そして、略式命令が発せられるとその瞬間に釈放されます。

Aさんは犯行を否認しているようですが、仮に、その弁解が通じないようであれば罪を認めて略式起訴を目指すのも一つの方法です。

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