同意があると思ったのに準強制性交等罪で事情聴取
同意があると思ったのに準強制性交等罪で事情聴取
東京都羽村市に住むAさん。
ある日、SNSで知り合った女性Vと初めて会い、居酒屋に向かいました。
「あわよくば」と考えていたAさんは、場の雰囲気を盛り上げてVに多くのお酒を飲ませ、Vを記憶があいまいになるほどの泥酔状態にさせました。
その後、居酒屋を出て、ふらふらな状態のVの肩を抱えながら、ラブホテルに連れ込みました。
意識もうろう状態のVさんは、Aさんとの性交に同意していたわけではありませんが、明確に拒否する言葉や態度を見せなかったこともあり、Aさんは性交に及びました。
後日、Vさんは準強制性交等罪でAさんを刑事告訴し、Aさんは警視庁福生警察署から任意の事情聴取を受けました。
Aさんとしては、Vの明確な拒否がなかったのだから告訴されても困ると考えており、弁護士に相談しました。
(フィクションです)
~強制性交等罪・準強制性交等罪とは~
以前は強姦罪・準強姦罪と規定されていましたが、刑法改正により強制性交等罪・準強制性交等罪と呼び方が変わりました。
条文を見てみましょう。
177条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛こう門性交又は口腔くう性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
178条2項 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。
暴行・脅迫を用いて性交等をした場合が強制性交等罪(旧強姦罪)、抗拒不能(抵抗できない状態)を利用したり抗拒不能にさせたりして性交等をした場合が準強制性交等罪(旧準強姦罪)です。
本件では、泥酔状態にさせて性交に及んでいるので、準強制性交等罪が問題となります。
~同意があると思った場合も有罪?~
Vの同意があると思っていた本件では、Aの故意が認められるかがポイントとなります。
条文を見てみましょう。
刑法38条1項 罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。
つまり、故意に(わざと)犯罪をした場合に罰するのが原則だけど、特別の規定があれば過失(間違ってやった)場合にも罰するということになります。
ただし、ここでいう故意とは、犯罪になることを確信していた場合の他、もしかすると犯罪になるかもという認識(未必の故意)がある場合も含まれ、犯罪が成立しうることになります。
本件ではAが、「Vが性交に同意をしていない」と認識している場合はもちろんのこと、「Vが性交に同意していないかも」と認識している場合にも故意が認められることになります。
~社会情勢によって故意の認定が変わる~
刑事裁判で故意の有無を認定する場合、人間の内心を直接見ることはできないため、外形的事実から故意の有無を推認していくことになります。
これまでは、女性が強姦されそうになった場合、悲鳴を上げたり、男性の体を払いのけようとするなどの抵抗を見せるものだと考えられていました。
そこで抵抗がなかった場合は同意があったと認定されたり、同意はなかったが加害者は同意があると認識していた(故意がなかった)として無罪になるケースもありました。
しかし、抵抗することによりさらにひどい暴行をされたり最悪の場合殺されたりするかもしれないという恐怖心から、被害者がまったく抵抗できなくなる場合も少なくないことが、近年徐々に知られてきました。
このような事実が世間に広く知られるようになれば、いくら「同意があると思った」と主張したところで、「明確な拒否がなくても、同意していないかもしれないと認識できただろう」として、未必の故意が認定される可能性が高くなってくるかもしれません。
~弁護士に相談して最善の対応を~
今後、Aさんは警視庁福生警察署に逮捕・勾留され、刑事裁判にかけられ懲役刑を受ける可能性があります。
弁護士に相談すれば、取調べを受ける際のアドバイスを受けることができます。
また、故意を否認するための弁護活動や、被害者と示談をするなどの方法により逮捕・勾留・起訴を免れたり執行猶予を付けてもらえる可能性を上げるなどの弁護活動を受けることができます。
準強制性交等罪で捜査を受けている方は、刑事弁護を専門としている弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
事務所での初回相談は無料となっております。