【報道解説】ブラジャー姿の上半身を見せて逮捕

2022-10-06

【報道解説】ブラジャー姿の上半身を見せて逮捕

路上にてブラジャーを付けた上半身を女性に見せつけた男性が、兵庫県迷惑行為防止条例違反の疑いで逮捕された刑事事件例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【報道紹介】

「路上で通行人に下着姿を見せたとして、兵庫県警尼崎南署は25日、県迷惑防止条例違反の疑いで同県尼崎市の会社員の男(52)を逮捕した。
逮捕容疑は9月10日午前2時半ごろ、尼崎市神田北通2の路上で、通りかかった女性(38)に向かって素肌にブラジャーを付けた上半身を露出した疑い。
容疑を認めているという。」

(令和4年9月25日に神戸新聞NEXTで配信された報道より引用)

【路上で裸を露出すると何罪になる?】

今回取りあげた報道では、路上で男性がブラジャーを付けて上半身裸になった姿を女性に見せつけたことで警察に迷惑行為防止条例違反の疑いで逮捕されています。
記事の中には、兵庫県迷惑行為防止条例のどのような規定に違反したかは明記されていませんが、おそらく、路上で男性がブラジャーを付けて上半身裸になる行為は、兵庫県迷惑行為防止条例3条の2第1項1号で禁止されている、公共の場所や乗り物において人に対して不安を覚えさせるような卑わいな言動にあたると警察が判断したために今回逮捕に至ったものと考えられます。

路上で裸を露出したという場合は、露出した体の部分や露出の方法などによって成立する犯罪が異なります。
迷惑行為防止条例違反である卑わいな言動以外にも、刑法174条が定める公然わいせつ罪軽犯罪法1条20号違反が成立する可能性があります。

【公然わいせつ罪とは】

公然わいせつ罪は、「公然わいせつな行為をした」場合に成立する犯罪で、その法定刑は、6カ月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料となっています。
公然わいせつ罪における「公然と」とは、不特定又は多数の人が認識できる状態のことを意味し、「わいせつな行為」とは、性欲を刺激、又は満足させる行為であり、普通人の性的羞恥心を害し、善良な詩的道義観念に反する行為を意味すると考えられています。
わいせつな行為」については、定義が抽象的で意味が分かりずらく、具体的にどのような行為をすれば公然わいせつ罪となるのかよく分からないと思いますが、路上で陰部を露出する行為は、公然わいせつ罪にあたる典型的な行為であると考えられています。

【軽犯罪法違反とは】

軽犯罪法1条20号は、「公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した者」を拘留又は科料に処するとしていますので、お尻や太ももといった身体の一部分を露出した場合は、露出した場所や露出した方法によっては、軽犯罪法1条20号に違反する可能性があります。

【迷惑行為防止条例違反とは】

今回、路上でブラジャーを付けた状態の上半身裸を女性に見せつけた男性は、上記の公然わいせつ罪でも軽犯罪法違反でもなく、兵庫県迷惑行為防止条例3条の2第1項1号公共の場所において人に不安を覚えさせるような卑わいな言動にあたるとして逮捕されたと考えられます。

卑わいな言動」とは、最高裁判所によれば、「社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな言語又は動作」のことをいいます(最高裁平成20年11月10日決定)。
卑わいな言動」の定義についても、抽象的で分かりづらいものですが、「卑わいな言動」は、「わいせつな行為」よりも広いものと考えられていますので、「わいせつな行為」に当たらなくても「卑わいな言動」に当たる可能性があります。 
男性が路上で素肌にブラジャーを付けた上半身を女性に見せつける行為は、公共の場所に置いて人に不安を覚えさせるような下品でみだらな動作に当たる可能性が高い行為であると言えるでしょう。

なお、卑わいな言動に当たるとして仮に起訴されて有罪になると、6カ月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられる可能性があります(兵庫県迷惑行為防止条例15条1項)。

【路上で裸を露出したことで警察の捜査を受けてお困りの方は】

路上で裸を露出したことで警察の捜査を受けてお困りの方は、まずは弁護士にご相談されることをお勧めします。
特に、路上で見ず知らずの人に対して裸を露出したという事件で前科が付くことを避けたいという場合に、その事件について認めるのであれば、被害者の方との示談を行うことで事件について真摯に反省しているという姿勢を示すことが非常に重要になるでしょう。

名前も連絡先も知らない被害者の方と示談を望まれる場合は、弁護士を通して示談交渉を行うことをお勧めします。
弁護士であれば、被害者の方の同意を得た上で、警察や検察といった捜査機関から被害者の情報を開示してもらえる可能性がありますので、見ず知らずの被害者の方であっても示談交渉を行うことができるようになるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件少年事件を専門に取り扱う法律事務所です。
卑わいな言動による迷惑行為防止条例違反の疑いで警察の捜査を受けてお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。