公然わいせつ罪と共犯
公然わいせつ罪と共犯
~今回の問題~
東京都国立市在住の男性A(20歳)と女性B(20歳)は動画配信サイトを使って金儲けをしようと考えました。
その動画サイトでは、動画の閲覧時間に応じて、サイト側が売り上げを渡す、という仕組みでした。
そこで、Bさんが自慰行為をしている様子をAさんがライブ中継したところ、ライブ中継の数か月後に警視庁立川警察署の警察官が2人のところへやってきて、公然わいせつ罪の疑いで2人を逮捕しました。
(これはフィクションです。)
~公然わいせつ罪~
公然わいせつ罪は、刑法174条に規定されています。
刑法第174条
公然とわいせつな行為をした者は、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
〇公然と
「公然と」とは、不特定又は多数人が認識し得る状態のことをいいます。
実際に不特定又は多数人が認識している必要はなく、認識する可能性があれば「公然の」にあたるとされています。
〇わいせつ
「わいせつ」の定義は、判例によれば、「いたずらに性欲を興奮又は刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する」もののことを指しています。
今回の事件では、動画配信サイトのライブ中継を使えば、不特定多数の視聴者が閲覧できるので、「公然と」にあたると考えられます。
また、他人に自慰行為を見せることは、一般人から見て「わいせつ」なものだと言えるでしょう。
そのためAさんとBさんには公然わいせつ罪が成立すると言えます。
~共同正犯~
共同正犯については、刑法60条に規定されています。
刑法 第60条
2人以上共同して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。
共同正犯とは、「2人以上が共同して犯罪を実行する」ことを言います。
共同正犯に当たるか、つまり、2人が「共同して」いたかどうかは①共同実行の意思と②共同実行の事実があるかによって判断されます。
①共同実行の意思
共同実行の意思とは、2人以上の者が共同して犯罪を実行する意思のことをいいます。
今回の事件では、AさんとBさんが2人で金儲けをしようと犯行を計画していたことから、共同実行の意思はあると判断されるでしょう。
②共同実行の事実
共同実行の事実とは、2人以上の者が共同して実行行為を行うことをいいます。
わいせつな動画に出演するBさんの行為も、それを撮影して配信するAさんの行為も「公然とわいせつな行為をした」ことにあたるので、共同実行の事実があると判断されるでしょう。
したがって、AさんとBさんは共同正犯として、2人ともが公然わいせつ罪の刑罰を科されることが見込まれます。
~幇助犯にはならないか~
Aさんの「動画を配信する」という行為だけ切り取ると、AさんはBさんの犯罪をただ手助けしているだけであり、刑事責任は比較的軽いように思えます。
そうだとすると、Aさんの行為は「幇助」(62条)にあたり、「正犯」ではなく「従犯」であるとして刑が減軽される(刑法62条、63条)ことも考えられます。
しかし、過去の共犯事件の裁判例からして、「幇助」と判断される可能性は極めて低く、今回のようなケースは共同正犯として扱われることが予想されます。
なぜなら、共犯事件は報酬を折半する約束があったり各自の役割が重要だったりすることが多く、責任の重さが共同「正犯」に値すると判断されやすいからです。
今回の事例でも、Aさんにつき①金儲けを2人で企んでいることからして犯罪の利益を受ける意思がある、②ライブ中継という公然わいせつ罪の要件を満たすうえで不可欠の行為を行っている、という事情が存在します。
そうすると、「幇助」にはとどまらず共同正犯の責任が科される可能性が高いでしょう。
共犯者がいる事件は複雑になりがちです。
そこで専門的な判断が可能な刑事事件専門の弁護士に一度相談することをおすすめします。
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