【事例解説】公然わいせつ罪と迷惑行為防止条例違反(卑わいな言動)

2023-07-13

 公然わいせつ罪や迷惑行為防止条例違反(卑わいな言動)が成立すると考えられる事例とその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

<事例1>
東京都在住の会社員男性A1は、都内の通勤電車内で隣席に座る会社員女性V1に見せようと、ズボンと下着を下ろし、陰部を露出した。

<事例2>
東京都在住の会社員男性A2は、都内の通勤電車内で隣席に座る会社員女性V2に見せようと、ズボンを下ろし、下着を露出した。

(上記いずれの事例も、登場人物は全て成人で、フィクションです。)

公然わいせつ罪とは

 公然わいせつな行為をした者は、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する、と定められています(刑法174条)。

 「公然」とは、不特定又は多数の人が認識することができる状態を指します。
 なお、現実に不特定又は多数の人が認識する必要はなく、その認識の可能性があればこれを満たすとされます。
 都内を走る通勤電車には、不特定多数の乗客がいることが通常であり、「公然」性を満たすと考えられます。

 「わいせつな行為」とは、判例の定義によると「徒らに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為」とされます。
 この定義では、どのような行為から「わいせつな行為」に当たるかなお曖昧ではありますが、性行為や、少なくとも陰部や乳房を露出した場合は、これを満たすとされます。

 よって、事例1のA1は、「公然」陰部を露出するという「わいせつな行為」をしたとして、公然わいせつ罪が成立し得ると考えられます。

迷惑行為防止条例違反(卑わいな言動)とは

 東京都迷惑行為防止条例(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例)において、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をした者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する、と定められています(第5条第1項第3号等)。

 「卑わいな言動」とは、性的な恥じらいや心身に対する危険を感じさせる言動を指すと解されており、スカートをめくることや性的な発言など、痴漢や盗撮には該当しない程度の態様の性的な行為が、幅広く該当し得るものです。

 事例2のA2は、「公共の乗物」である通勤電車において、ズボンを下ろし、下着を露出するという「卑わいな言動」を行ったとして、東京都迷惑行為防止条例違反(卑わいな言動)が成立し得ると考えられます。

 なお、A2は陰部の露出までは行っていないため、本罪、又はより処罰の軽い軽犯罪法違反(第1条第20号「公衆の目に触れるような場所で公衆に嫌悪の情を催させるような仕方で尻、腿その他身体の一部をみだりに露出した者」は拘留又は科料)の適用がまず考えられるところですが、駅前で衣服を脱いで下着姿となった女性が公然わいせつ罪で逮捕された事件例もあるため、状況によっては公然わいせつ罪が適用される可能性も否定できません。

公然わいせつ罪と迷惑行為防止条例違反(卑わいな言動)の弁護活動

 公然わいせつ罪は、性秩序ないし善良な性風俗という社会的法益を侵す罪とされており、仮にわいせつな行為の目撃者がいなかった場合でも成立するものですが、目撃者がいる場合は、その者が被害者的な立場で取り扱われることが多いです。
 そのため、目撃者との間で示談が成立すれば、不起訴処分で事件が終了する可能性を高めることが期待できます。
 迷惑行為防止条例違反(卑わいな言動)の場合も、目撃者との示談成立が処分の判断に際し重要であることに変わりありません。

 性犯罪では特に、加害者が被害者から連絡先を教えてもらい自ら示談交渉を行うことは困難ですが、弁護士であれば被害者も話を聞いてもよいと連絡を教えてくれる余地があり、特に刑事事件の示談交渉の経験豊富な弁護士であれば、双方十分納得のいく内容の示談がまとまる可能性が見込まれます。

まずは弁護士にご相談を

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、性犯罪を含む刑事事件を多数取り扱い、公然わいせつ罪や都道府県の迷惑行為防止条例違反(卑わいな言動)での示談成立による不起訴処分を獲得した実績が多数あります。

 公然わいせつ罪迷惑行為防止条例違反(卑わいな言動)でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。