【事例解説】公然わいせつ罪で執行猶予期間中の再犯(前編)

2023-10-26

 公然わいせつ罪の刑の執行猶予期間中に、再度、公然わいせつを行った架空の事件を参考に、執行猶予期間中に再犯した場合の取り扱いとその弁護活動について、前編・後編に分けて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

参考事件

 札幌市在住の会社員男性Aは、同市内の公園で陰部を露出しているところを目撃者に通報され、公然わいせつの容疑で逮捕されました。
 Aは、2年前に、公共施設で陰部を露出した公然わいせつ罪で、懲役3か月執行猶予3年の判決の言渡しを受けており、本件犯行時において執行猶予期間中でした。
(事例はフィクションです。)

執行猶予期間中の再犯による執行猶予の取り消し

 執行猶予とは、前に禁錮以上の刑に処せられたことのない者などが、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受ける場合、情状により、その刑の執行を一定期間猶予し、その期間中に更に罪を犯さなかった場合などに、刑の言渡しの効力を失わせる制度のことです(刑法第25条第1項)。

 公然わいせつ罪の法定刑は、6月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料です。
 本件Aは、2年前に公然わいせつ罪で懲役3か月の判決を受けましたが、執行猶予3年が付されたため、刑務所に服役しないで済んでいたところ、その執行猶予期間中に更に罪を犯してしまいました。

 執行猶予期間中に更に罪を犯し、禁錮以上の刑に処せられた場合、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないときは、刑の全部の執行猶予の言渡しは取り消されます(これを「必要的取消し」といいます。刑法第26条第1項第1号)。

 そのため、Aが本件で懲役の刑に処せられ、執行猶予の言渡しがないときは、前件の刑の執行猶予の言渡しが取り消されることとなります。
 その結果、仮に、本件で、懲役6か月の実刑に処せられた場合、前件の執行猶予の言渡しが取り消され、前件の懲役3か月の刑と合算して、懲役9か月の実刑に処せられることとなります。

 なお、執行猶予期間中に更に罪を犯し、罰金に処せられた場合は、刑の全部の執行猶予の言渡しを取り消すことができる、と規定されています(これを「裁量的取消し」といいます。刑法第26条の2第1項第1号)。
 そのため、仮に、本件の刑が罰金の場合でも、裁判所の裁量で、前件の執行猶予の言渡しが取り消されることで、前件の懲役3か月により刑務所に服役となる可能性があります。

次回の後編では、再度の執行猶予について、解説します。

執行猶予期間中の再犯の刑事弁護

 特に、本件Aのように、同一・同種の犯罪での再犯の場合は、社会内での更生が困難であると認定される可能性が高く、再度の執行猶予を得ることは極めて難しいと考えられます。しかし、端から諦めるのではなく、再度の執行猶予の獲得に繋がり得る事情がないかを検討するため、刑事事件に強い弁護士に一度相談することをお勧めします。

 再度の執行猶予を獲得するためには、前件を踏まえてみても、被告人がなお社会内で更生できるという事情を示すことが不可欠と考えられます。

 例えば、犯行の動機や態様について前件とは異なる事情、専門機関での治療など前件の際はなかった再犯防止の取組みなどにより「情状に特に酌量すべきものがある」ことを説得的に主張し、再度の執行猶予を得られる可能性を高める弁護活動を行う余地はあります。
 結果として、再度の執行猶予を得ることができなくても、こうした弁護活動は、再犯の量刑を軽くすることにも繋がると考えられます。

まずは弁護士にご相談を

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、様々な刑事事件において、執行猶予や刑の減軽を獲得した実績が豊富にあります。
 自身やご家族が、執行猶予期間中に再犯をしてしまい、今後のことでご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。