【事件解説】売春を唆したとして売春防止法違反で逮捕

2023-10-19

 売春の客待ちをするよう唆したとして、売春防止法違反(客待ち)の教唆容疑で逮捕された事件とその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事件概要

 女性客に売春の客待ちをするよう唆したとして、売春防止法違反(客待ち)教唆容疑で、名古屋市内の経営者の男性Aが愛知県中警察署に逮捕されました。
 Aは、女性Bに対し、「立ちんぼ(売春の客待ち)でもしたら、楽に返せるよ」などと唆し、市内の公園付近の歩道上で売春の客待ちをさせたとのことです。
(実際の事件に基づき作成したフィクションです。)

売春防止法違反(客待ち)とは

 売春防止法は、売春を助長する行為等を処罰することなどにより、売春の防止を図ることを目的としています。

 「売春」とは「対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交をすること」と定義されており、売春行為自体には罰則はありませんが、売春をする目的で、公衆の目にふれるような方法で客待ちをした場合は、6月以下の懲役又は1万円以下の罰金に処する、と規定されています(売春防止法第2条、第5条)。

 本件Bは、市内の公園付近の歩道上で、売春相手を探すための客待ちをしていたため、「売春をする目的」で、「公衆の目にふれるような方法で客待ち」をしたとして、売春防止法違反(客待ち)が成立し得ると考えられます。

客待ちを唆した場合に成立し得る罪

 Aは、Bに売春の客待ちをするよう唆したとして、売春防止法違反(客待ち)教唆容疑で逮捕されました。
 「教唆」とは、人を唆して、その人に犯罪を実行する決意を生じさせること、とされます。

 Bが、もともと売春の客待ちをしようと思っていなかったにも関わらず、Bを唆して、売春の客待ちをすることを決意させたと認められる場合、Aは、売春防止法違反(客待ち)教唆罪が成立し得ると考えられます。

 刑法第61条第1項で、人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する、と規定されているため、Aは6月以下の懲役又は1万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

 なお、愛知県迷惑行為防止条例では、何人も、公共の場所において、不特定の者に対し、「売春類似行為」をするため、客引きをし、又は客待ちをすることをしてはならない、と規定されており、Aは、同時に本条例違反の教唆により、100万以下の罰金が科される可能性があります(条例第7条1項1号、第17条)。

売春防止法違反(客待ち)の教唆事件の刑事弁護

 売春防止法違反(客待ち)教唆の罪を認める場合の弁護活動として、常習性の有無や犯行に至る経緯などを弁護士が接見の際に聴取の上、罪を軽減し得る事情を取調べにおいて的確に供述できるよう、アドバイスを行うことが考えられます。
 なお、売春防止法第7条では、人を欺き、若しくは困惑させたり、又は脅迫や暴行を加えて、人に売春をさせた場合は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処するとされているため、唆した行為が、欺罔、困惑、脅迫などと評価されて必要以上に重い罪を負わせられることのないよう、供述内容は慎重に検討する必要があります。
 
 また、犯行に常習性が疑われる場合の余罪の追及のほか、本件のような教唆容疑では、教唆者が被教唆者に対し、教唆がなかったと供述するよう威迫するなどの罪証隠滅のおそれがあるとして、逮捕後に勾留されて身体拘束が長期化する可能性があるため、身体拘束からの解放に向けて、早期に適切な弁護活動を行ってもらえるよう、刑事事件に強い弁護士への依頼をお勧めします。

まずは弁護士にご相談を

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件に強く、様々な刑事事件において、身体拘束からの解放や不起訴処分などを獲得した実績があります。
 売春防止法違反(客待ち)教唆容疑でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。