【事例解説】不同意性交等の容疑で警察の取調べ 同意があったとして否認

2023-10-12

 同意があると思って知人女性と性交したところ、後日被害届を提出され、不同意性交等の容疑で警察の取調べを受けることとなった架空の事件を参考に、同意があったとして不同意性交等の容疑を否認する事件の弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事件概要

 茨城県水戸市在住の会社員男性Aは、マッチングアプリで知り合った20代の女性Vと何度か食事に行く関係となり、ある日、Aの自宅にVを招いて食事した後、性交しました。
 後日、Vが「嫌だ」と言ったのにAに性交されたとして、茨城県水戸警察署に被害届を提出したことで捜査が開始され、Aは不同意性交等の容疑で警察の取調べを受けることとなりました。
 警察の調べに対し、Aは「性交したことは認めるが、Vの同意があった」と容疑を一部否認しているとのことです。
(事例はフィクションです。)

不同意性交等罪とは

 暴行・脅迫、予想と異なる事態に直面したことによる恐怖、アルコール摂取の影響などにより、相手が、同意しない意思を形成、表明、全うすることが困難な状態にさせたり、その状態に乗じて性交等を行った場合、不同意性交等罪(刑法第177条第1項)が成立し得ます。
 不同意性交等罪は、令和5年法改正前の強制性交等罪にあたる罪であり、法定刑は、5年以上の拘禁刑(「拘禁刑」の施行までは「懲役」)です。

 同意しない意思を「形成することが困難な状態」とは、性交等をするかどうかを考えたり、決めたりするきっかけや能力が不足していて、「性交等をしない、したくないという意思」を持つこと自体が難しい状態、「表明することが困難な状態」とは、「性交等をしない、したくないという意思」を持つことはできたものの、それを外部に表すことが難しい状態、「全うすることが困難な状態」とは、「性交等をしない、したくないという意思」を外部に表すことはできたものの、その意思のとおりになることが難しい状態、とされます。

 本件Vの供述通り、Vが「嫌だ」と言って、性交をしたくないという意思をAに表明したものの、Aが予想に反してやめてくれず、恐怖を覚えたことなどにより、意思を全うすることができなかった場合、それに乗じて性交したAに不同意性交等罪が成立する可能性があります。

同意があったとして容疑を否認する場合の刑事弁護

 性交の同意の有無は、被害者の内心の問題のため、捜査機関としては、不同意性交等の捜査において、被害者・被疑者双方の供述に頼らざるを得ないことが多いと考えられ、被疑者の取調べに際し、自白を強要・誘導するような取調べが行われる可能性も否定できません。
 そのため、同意があったとして不同意性交等の容疑を否認する場合には、取調べで供述する内容が、自己の意に反して不利益な証拠とならないよう、刑事事件に強く、性犯罪の弁護活動の経験豊富な弁護士から、取調べに際し、どのように対応すればよいか等のアドバイスを事前に受けることをお勧めします。

 なお、被害者の内心の問題とはいえ、被害者が同意していなかったと供述したとしても、直ちに同意がなかったと判断されるわけではなく、被疑者と被害者の関係性、性交当時の状況、事件前後における両者のメッセージ等のやり取りの内容や行動など、諸般の事情から判断されることとなります。
 そのため、弁護活動としては、被害者が同意しない意思を形成、表明、全うすることが困難な状態になかったことや、同意があったことを推認する客観的な証拠、事情により、不同意性交等罪の成立が疑わしいことを検察官に主張し、嫌疑不十分による不起訴処分を得ることを目指すことが考えられます。

まずは弁護士にご相談を

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、性犯罪を含む刑事事件を多数取り扱い、法改正前の強制性交等罪の否認事件において、嫌疑不十分による不起訴処分を獲得している実績があります。
 不同意性交等事件で、自身やご家族が警察の取調べを受けるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。