【事件解説】船酔いした知人女性に対する不同意わいせつ罪で逮捕
ボートに同乗していた女性が船酔いでぐったりしていたところ、胸などを触ったとして逮捕された不同意わいせつ事件とその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事件概要
和歌山市沖で、プレジャーボートに同乗していた女性Vが船酔いでぐったりしていたところ、胸などを触った疑いで、同市在住の会社員男性A(45歳)が不同意わいせつの容疑で逮捕されました。
警察の調べによると、知人関係にあったAとVは、釣りをするためAの所有するプレジャーボートに一緒に乗っており、Vが船酔いでぐったりしたところ、AはVの介抱に乗じて胸などを触ったとのことです。
Aは、不同意わいせつの容疑を認めているとのことです。
(過去に報道された実際の事件に基づき、事実関係を大幅に変更したフィクションです。)
不同意わいせつ罪とは
不同意わいせつ罪(刑法第176条)は、令和5年の性犯罪規定に関する刑法改正によって、従来の強制わいせつ罪に代わり、新たに創設された犯罪です。令和5年7月13日から施行されました。
法定刑は、6月以上10年以下の拘禁刑、となっています(「拘禁刑」はまだ施行されていないので、それまでは「懲役」になります。)。
不同意わいせつ罪が成立するためには、下記(1)~(3)の要件を充たす必要があります。
(1)1号から8号に該当する(及び類する)行為又は事由により
(2)同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて
(3)わいせつな行為をしたこと
本件Vが、船酔いでぐったりしていた状態は、要件(1)4号「睡眠その他の意識が明瞭でない状態」にあたると考えられ、その程度が、要件(2)「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」と認められる場合、Aがそれに乗じてVの胸を触るなどのわいせつな行為を行ったことにより、Aに不同意わいせつ罪が成立し得ると考えられます。
なお、Aの行為は、改正前においては、人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、わいせつな行為を行ったとして、準強制わいせつ罪に該当したと考えられますが、改正前の強制わいせつ罪と準強制わいせつ罪は、改正により不同意わいせつ罪に一本化されることとなりました。
不同意わいせつ事件の刑事弁護
不同意わいせつ罪は、被害者の告訴がなくとも検察官の判断で起訴できる罪(非親告罪)ではありますが、実務上の運用は、準強制わいせつ罪と変わらないと考えられ、被害者の意思を尊重し、プライバシー侵害が生じないように配慮する観点から、被害者との示談によって告訴の取消しに結びつけることができれば、検察官が起訴することなく事件が終わる可能性を高められると考えられます。
本件AとVのように元々知人関係にあった場合でも、性犯罪であることから、被害者は加害者に強い嫌悪感や恐怖感などを抱くことが通常であり、加害者が被害者と示談交渉を直接行うことは通常困難だと考えられます。
他方で、弁護士であれば、被害者も話を聞いても良いとなることも多く、示談交渉の余地が生まれ、刑事事件に強く示談交渉の経験豊富な弁護士であれば、十分な内容の示談がまとまる可能性が見込まれます。
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弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、性犯罪を含む刑事事件を多数取り扱い、法改正前の準強制わいせつ事件において、示談成立による不起訴処分を獲得している実績が多数あります。
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