【事件解説】女性の下半身を触った不同意わいせつ罪で逮捕
列車内で女性の下半身を触ったとして逮捕された不同意わいせつ事件とその弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事件概要
岡山市内の列車内で、隣の座席に座る20代の女性Vの下半身を触った疑いで、同市在住の会社員男性A(35歳)が不同意わいせつの容疑で逮捕されました。
警察の調べによると、Aは、列車内でVの隣に座り肩などを押しつけ体を密着させたうえ、下半身を触った疑いがもたれています。2人に面識はなく、Vは不同意わいせつの容疑を認めているとのことです。
(過去に報道された実際の事件に基づき、事実関係を大幅に変更したフィクションです。)
不同意わいせつ罪とは
不同意わいせつ罪は、令和5年の性犯罪規定に関する刑法改正によって、従来の強制わいせつ罪に代わり、新たに創設された犯罪です。令和5年7月13日から施行されました。
法定刑は、6月以上10年以下の拘禁刑、とされています(「拘禁刑」はまだ施行されていないので、それまでは「懲役」になります。)。
不同意わいせつ罪が成立するためには、下記(1)~(3)の要件を充たすことが必要となります。
(1)1号から8号に該当する行為又はこれらに類する行為があり
(2)それらの行為により同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて
(3)わいせつな行為をしたこと
本事件で、AがVの隣に座り肩などを押しつけ体を密着させたうえ、下半身を触った一連の行為について、要件(1)における、1号「暴行若しくは脅迫を用いること」、5号「同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと」又は6号「予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること」の少なくともいずれかに該当し得ると判断されたものと考えられます。
なお、改正前の強制わいせつ罪における「暴行」とは、「人の反抗を抑圧したり、著しく困難にさせる程度の有形力の行使」と限定して解釈されていましたが、不同意わいせつ罪における「暴行」は、その程度を問わず「人の身体に対する有形力の行使」であれば足りるとされ、暴行の程度は、要件(2)で考慮されることとなりました。
よって、AがVに「肩などを押しつけ体を密着させた」行為が「暴行」と認められる可能性は、法改正前よりも高くなったと考えられます。
不同意わいせつ事件の刑事弁護
本事件でのAの行為は、法改正前であれば、岡山県の迷惑行為防止条例違反(痴漢)の適用にとどまる可能性もありましたが、Aは不同意わいせつの容疑で逮捕されることとなりました。
同罪は、岡山県の迷惑行為防止条例違反(痴漢)と異なり、法定刑に罰金刑がないため、起訴され有罪になると拘禁刑(懲役)が科されることとなります。
不同意わいせつ罪は、被害者の告訴がなくとも検察官の判断で起訴できる罪(非親告罪)ではありますが、実務上の運用は、強制わいせつ罪と変わらないと考えられ、被害者の意思を尊重し、プライバシー侵害が生じないように配慮する観点から、被害者との示談が成立することにより、検察官が起訴することなく事件が終わる可能性を高められると考えられます。
そのため、逮捕・勾留されている場合の身体拘束解放の点のみならず、不起訴処分を目指す点からも、被害者との示談を早期に成立させることが重要ですが、性犯罪であることから、被害者は加害者に強い嫌悪感や恐怖感などを抱くことが通常であり、加害者又はその家族が被害者の連絡先を教えてもらい示談交渉を直接行うことは困難です。
他方で、弁護士であれば、検察官を通じて被害者の連絡先を教えてもらえることも多く、示談交渉の余地が生まれ、刑事事件に強く示談交渉の経験豊富な弁護士であれば、十分な内容の示談がまとまる可能性が見込まれます。
すぐに弁護士にご相談を
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、性犯罪を含む刑事事件を多数取り扱い、法改正前の強制わいせつ事件において、示談成立による不起訴処分を獲得している実績が多数あります。
不同意わいせつ事件でご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。