痴漢(迷惑防止条例違反と不同意わいせつ罪)

迷惑防止条例違反(愛知県)の場合の法定刑は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金です
(愛知県迷惑防止条例第16条第1項、第2条第2項第1号)。

ただし、常習として痴漢行為を行っていた場合には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金となります(愛知県迷惑防止条例第16条第2項、第2条第2項第1号)。

 

痴漢事件の解説

1 痴漢事件で問題となる犯罪

法律上、「痴漢」という言葉があるわけではありません。

痴漢は、その犯行態様によって刑法犯の不同意わいせつ罪や不同意性交等罪に当たるか、各都道府県が定める条例違反となるかが区別されます。

かつては、衣服の上から触った場合には、迷惑行為防止条例違反、直接触った場合には、不同意わいせつ罪(旧 強制わいせつ罪)とされているようでした。

これは、強制わいせつ罪の成立には「暴行又は脅迫」が必要であったためです。

しかし、令和5年の刑法改正により、強制わいせつ罪が「不同意わいせつ罪」に生まれ変わり、成立範囲が広くなりました。

暴行や脅迫以外にも、「同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと」や「予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕がくさせること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること」により不同意状態となっていることに乗じてわいせつ行為をした場合にも不同意わいせつ罪が成立することになりました。

電車内での痴漢等であれば、不同意わいせつ罪が成立することになるでしょう。

 

2 迷惑防止条例違反(痴漢)について

⑴ 場所による限定
痴漢行為として迷惑防止条例違反となる場合には、一般的に「公共の場所又は公共の乗物において」、痴漢行為がなされなければなりません。
なお、「公共の場所又は公共の乗物において」とは、不特定又は多数の人が出入りしうる場所又は乗物をいいます。

⑵ 親告罪ではないこと
迷惑防止条例違反(痴漢)も親告罪ではないので起訴するには被害者などの告訴は必要ありません。

⑶ 承諾に基づく行為について
被害者とされるものとの間に同意があれば、迷惑防止条例違反とはなりません。
これに対し、不同意わいせつ罪の場合、年齢によっては不同意わいせつ罪が成立する場合があります。
すなわち、不同意わいせつ罪の場合には、年齢による区別を設けており、16歳未満の者に対する行為については、被害者との間に同意があっても不同意わいせつ罪が成立することになります。
また、公然わいせつ罪が成立する可能性もあります。

 

痴漢事件の対応

1 無罪を主張する場合

身に覚えがないにも関わらず、痴漢の容疑を掛けられてしまった場合には、弁護士を通じて、警察や検察などの捜査機関及び裁判所に対してその旨主張することで、不起訴又は無罪を獲得する余地があります。

身に覚えのない痴漢の容疑をかけられた場合には、アリバイや真犯人の存在を示す証拠を提出することで、痴漢罪を立証する十分な証拠がないことなどを主張していきます。

もっとも、アリバイの主張・証明にはポイントがあるところ、効果的な主張・証明を行っていくことは、一般の方には困難と思われます。

この点、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、痴漢事件など刑罰(刑事責任)が問題になる刑事事件・少年事件を取り扱っており、痴漢事件の刑事弁護実績が豊富な弁護士が多数在籍しておりますので、適切なアドバイスをすることにより、不起訴・無罪を獲得するためのサポートをさせていただきます。

 

2 罪を認める場合

⑴ 謝罪、示談
被害者感情が重要視される昨今、痴漢事件においても、被害者の方と示談することは、重要な弁護活動です。

警察に被害届が提出される前であれば、被害届の提出を阻止し、警察の介入を阻止して事件化を防ぐことができます。

警察に被害届が提出されてしまった後であっても、痴漢事件においては、示談をすることによって、不起訴を獲得する可能性を高めることができます。

痴漢事件では、被害弁償や示談の有無及び被害者の処罰感情が行為者の処分に大きく影響することになるので、弁護士を介して迅速で納得のいく示談をすることが重要です。

また、示談をすることで行為者が釈放される可能性もありますので、示談によって行為者の早期の学校復帰・社会復帰を目指すことができます

 

⑵ カウンセリング等を受ける
痴漢事件の加害者のなかには、その背景に自己の性的衝動に対するコントロールに関し、何らかの問題を抱えている場合が多く、そのような場合には、専門家による治療が必要となります。

カウンセリングを受けたり、クリニックに通うことによって、問題を根本から改善する必要があります。

 

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