客引きで逮捕
客引きで逮捕
Aさんは、福岡県春日市でケバブを中心としたトルコ料理を提供するレストランの経営者です。Aさんは、数か月前、A店から半径10メートル以内の同じケバブ店2店が出店され、これらに従来からの客が奪われていると感じ始めていました。そこで、Aさんは、集客、売上金増加を目指して従業員Bに客引きを命じました。そうしたところ、従業員Bさんが福岡県春日警察署の私服警察官に事情を聴かれ、風営法違反で逮捕されたことをきっかけに、Aさんも風営法違反で逮捕されてしまいました。Aさんの知人であるCさんは、AさんやBさんの今後のことが心配になって刑事事件が得意な弁護士に接見を依頼しました。
(フィクションです)
~ 客引きとは? ~
「客引き」とは、一般に、相手方を特定して特定の営業所の客となるように勧誘することをいうとされています。
まず、「相手方を特定する」必要がありますから、一般公衆に向かって「いい店ありますよ~」などと叫んでも「客引き」には当たりません。また、「特定の営業所の客となるように勧誘する」必要がありますから、相手方を特定したとしても、営業所名を告げないで、「お時間ありますか」「いい店ありますよ」などと声をかけても「客引き」には当たりません。
~ 風営法上の「風俗営業」に対する規制 ~
風営法(正式名称:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)22条1・2号では、
風俗営業を営む者は,次に掲げる行為をしてはならない。
1号 当該営業に関し客引きすること。
2号 当該営業に関し客引きをするため、道路その他の公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと。
と規定されています。同号では、「風俗営業を営む者」とあるように、「客引き」をする主体が限定されています。つまり、基本的には、同号の「客引き」は「風俗営業を営む者」でしか犯せない犯罪(これを法律上身分犯といいます)ということになります。ただし、「風俗営業を営む者」とその従業員が意を通じて「客引き」を行った場合は、「風俗営業を営む者」のほかその従業員にも本号が適用され処罰されます。なお、「風俗営業を営む者」とは「風俗営業者」とは異なりますから、無許可で風俗営業を営む者も「風俗営業を営む者」に含まれます。
また、先ほど「客引き」に当たらない行為をご紹介しましたが、たとえ「客引き」に当たらなくても2号に該当するおそれはある点は注意が必要です。
1・2号違反の罰則は、6月以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又は併科とされています。
~ 風俗営業とは ~
ところで、風俗営業というと、キャバレー、スナック、キャバクラ、ソープ、ヘルスなどをイメージされる方も多いのではないでしょうか?
しかし、風営法は、まず前3者に該当する営業を「風俗営業」、後2者に該当する営業を「性風俗関連特殊営業」として両者を区別し、別々の章で規制しています。そして、「風俗営業」については風営法2条1項1号から5号までに該当する営業をいうとされています。したがって、たとえ呼称としてはレストランだったとしても、当該レストランが風営法2条1項1号から5号に該当する営業を行うものであれば、やはり「風俗営業」に当たります。
~ 条例による規制 ~
各都道府県が定める迷惑行為防止条例でも「客引き」行為が規制されています。たとえば、福岡県迷惑行為防止条例5条1号には
何人も、公共の場所において、不特定の者に対し、次に掲げる行為をしてはならない。
1号
次に掲げる行為について、客引きをすること。
と規定されています。
風営法との違いは、「何人も」とあるように「客引き」の主体に限定がなく、また「客引き」の対象者も「不特定の者」と限定されていない点です。したがって、従業員が店主から命じられることなく独断で「客引き」を行った場合は条例違反に問われます。
罰則は、50万円以下の罰金又は拘留若しくは科料です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。刑事事件・少年事件で逮捕されるなどしてお困りの方は、まずはお気軽に、0120-631-881までお電話ください。専門のスタッフが24時間体制で、初回接見、無料法律相談の予約を受け付けております。