児童ポルノ(製造)
児童ポルノの提供目的での製造の場合の法定刑は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金です(児童買春・児童ポルノ処罰法第7条第3項)。
被害児童をして姿態をとらせて児童ポルノを製造した場合の法定刑は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金です(児童買春・児童ポルノ処罰法第7条第4項)。
ひそかに児童ポルノを製造した場合の法定刑は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金です(児童買春・児童ポルノ処罰法第7条第5項)。
児童ポルノを不特定の者に対して提供する目的等で製造した場合の法定刑は、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金です(児童買春・児童ポルノ処罰法第7条第7項)。
児童ポルノ(製造)事件の解説
1 児童ポルノとは
児童ポルノとは、①児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの、②他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したもの、又は③衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したもののいずれかに該当するものをいうと規定されています。
2 児童ポルノ(製造)事件で問題となる犯罪
児童ポルノの製造がどのような犯罪に該当するかについては、その製造の目的、態様により4つに区別されます。
具体的には、①提供目的による製造、②姿態をとらせて製造した場合、③ひそかに製造した場合、④不特定の者に対する提供等の目的による製造です。
①ないし③の場合の法定刑は、それぞれ3年以下の懲役又は300万円以下の罰金ですが、④の場合には、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金と重く定められています。
3 児童ポルノの提供目的による製造について
児童ポルノの提供目的による製造とは、第三者に提供する目的で児童ポルノを製造した場合をいいます。
製造とは、行為者が被害児童を撮影して児童ポルノを作成した場合が典型的な例といえますが、画像を複製保存した場合も含むとされています。
4 姿態をとらせて製造した場合
ここで問題となる「姿態」とは、①児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態、②他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの、③衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものをいいます。
「姿態をとらせて」とは、行為者の言動等により、被害児童が当該姿態をとるに至ったことをいい、強制を要しないとされています。
したがって、行為者が被害児童に対して、「性器の写真を見せてほしい」とお願いし、被害児童がこれに応じて自己の性器を自ら撮影した場合にも、行為者が姿態をとらせ児童ポルノを製造したということになります。
5 ひそかに製造した場合
「ひそかに」とは、撮影等されないことの利益を有する被害児童に知られないようにすることをいうとされています。
6 不特定の者に対する提供目的等による製造について
児童ポルノを不特定の者に提供する目的等を有して児童ポルノを製造していた場合には、そのような目的を有しないで児童ポルノを製造した場合よりも重い法定刑が定められています。
不特定の者に対する提供目的等の中には、不特定の者に対する提供目的のほか、多数の者に対する提供目的と公然と陳列する目的が含まれます。
公然陳列には、HPへのアップロードやURLの表示も含むとされています。
7 児童買春、児童ポルノ処罰法違反事件の流れ(令和3年度検察統計年報参照)
刑事事件として処理された児童買春、児童ポルノ処罰法違反事件のうち、行為者が逮捕されたケースは約22%です。
また、逮捕された場合の勾留率は約80%と高いものの、勾留延長される場合は約52%と高くありません。
児童ポルノ(製造)事件の対応
1 無罪を主張する場合
児童ポルノに該当しないと思ったにも関わらず、児童ポルノ(製造)の容疑を掛けられてしまった場合(具体的には、相手方が18歳以上であったと考えた場合)には、弁護士を通じて、警察や検察などの捜査機関及び裁判所に対してその旨主張することで、不起訴又は無罪を獲得する余地があります。
児童ポルノに該当しないと思ったことを主張する場合には、そのような状況であったことを推認できる客観的な証拠、事情を捜査機関に主張していくこととなります。
もっとも、このような主張・証明にはポイントがあるところ、効果的な主張・証明を行っていくことは、一般の方には困難と思われます。
この点、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、児童ポルノ(製造)事件など刑罰(刑事責任)が問題になる刑事事件・少年事件を取り扱っており、児童ポルノ(製造)事件の刑事弁護実績が豊富な弁護士が多数在籍しておりますので、適切なアドバイスをすることにより、不起訴・無罪を獲得するためのサポートをさせていただきます。
2 罪を認める場合
⑴ 謝罪、示談
児童買春・児童ポルノ処罰法は、特定の被害者を想定したものではなく、社会一般の児童を保護するためのものであることから、特定の被害者を観念できないものの、当該行為の相手方を実質的な被害者と観念することができます。
そこで、被害者感情が重要視される昨今、児童ポルノ(製造)事件においても、実質的な被害者の方と示談することは、重要な弁護活動です。
警察に被害届が提出される前であれば、被害届の提出を阻止し、警察の介入を阻止して事件化を防ぐことができます。
警察に被害届が提出されてしまった後であっても、児童ポルノ(製造)事件においては、示談をすることによって、不起訴を獲得する可能性を高めることができます。
児童ポルノ(製造)事件では、被害弁償や示談の有無及び被害者の処罰感情が行為者の処分に大きく影響することになるので、弁護士を介して迅速で納得のいく示談をすることが重要です。
また、示談をすることで行為者が釈放される可能性もありますので、示談によって行為者の早期の学校復帰・社会復帰を目指すことができます。
⑵ カウンセリング等を受ける
児童ポルノ(製造)事件の加害者のなかには、その背景に自己の性的衝動に対するコントロールに関し、何らかの問題を抱えている場合が多く、そのような場合には、専門家による治療が必要となります。
カウンセリングを受けたり、クリニックに通うことによって、問題を根本から改善する必要があります。