電車内で痴漢など性犯罪で逮捕されたら

2020-11-11

電車内で痴漢・盗撮など性犯罪で逮捕されたら

電車内での痴漢盗撮わいせつ行為等の性犯罪に関する刑事手続と刑事責任について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

<事件例1>

会社員Aさんは、会社の飲み会のため帰宅時間が遅くなり、東京地下鉄丸ノ内線の電車に乗っていたところ、近くに酒に酔って寝ていた若い女性Vさんがいました。
Aさんは乗客が少ないことに乗じ、Vさんの隣に移動し、酒に酔って眠っていたVさんの上着のボタンを外し、胸を触りました。
被害に気付いたVさんは、大声をあげて周囲に助けを求め、次の駅でAさんは降ろされ、駅員が110番通報し、Aさんは駆けつけた警視庁大塚警察署によって、準強制わいせつ罪の疑いで逮捕されました。

<事件例2>

東京都在住の会社員男性Aさん(41歳)は、東京地下鉄丸ノ内線を走行中の電車内において、後ろに立っていた女子高校生のスカート下から動画撮影モードにしたスマートフォンを差入れたところ、目撃者の男性に取り押さえられ、次の茗荷谷駅にて降車させられ、駆けつけた警視庁大塚警察署の警察官によって、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(いわゆる「東京都迷惑行為防止条例違反」)の疑いで現行犯逮捕されました。
Aさんの妻Bさんは、Aさんが電車内盗撮をした疑いで逮捕されたと警察から連絡を受けショックを受けましたが、とりあえずAさんの勤務先には夫が急病で緊急入院することになりましたと説明して有給休暇扱いをしてもらえるよう説明しました。
(上記いずれもフィクションです。)

【電車内での性犯罪】

令和2年4月16日、大阪メトロ御堂筋線中津駅のホームで少女に性的暴行を加えるなどしたとして、強制性交等罪などの罪に問われた無職男性被告人に対し、大阪地方裁判所は、懲役8年(求刑・懲役9年)の実刑判決を言い渡しました。

この事件は、2019年6月23日、走行中の電車内で少女の下半身を触るなどした上、降車した駅のホームで少女の体を押さえつけ、性的暴行を加えたとの事実に加え、電車内や路上で10から20代の女性4人にわいせつ行為を繰り返した疑いで、強制性交等罪などの罪で起訴されたもので、判決に際して「強度のわいせつ行為を執拗に繰り返し、刑事責任は重大だ」と裁判長の意見がなされました。

強制性交等罪(刑法第177条)の法定刑は、5年以上の有期懲役であることから、本事件においては悪質な性犯罪を厳しく取り締まる裁判所の立場を見ることができます。

上記刑事事件例1については、眠っている女性に対する性犯罪を取り上げています。

刑法第178条では、人の心神喪失または抗拒不能に乗じたり、または人を心神喪失させ、もしくは抗拒不能にさせて、わいせつ行為をした場合、強制わいせつ罪と同じく6月以上10年以下の懲役を科すとしています。

本来、強制わいせつ罪では、被害者に対して暴行または脅迫を用いてわいせつ行為をすることが要件となっていますが、被害者の性的自由が侵害されやすい心神喪失や抗拒不能という状況をつくったり、利用したうえでわいせつ行為に及ぶことは、暴行脅迫に比類するとして、同等の刑事責任を負うことになります。

上記刑事事件例のように、電車内での居眠りという抗拒不能状態を利用したわいせつ行為も従来からありますが、昨今では、強力な睡眠薬等を飲料に混ぜて女性を昏睡させてわいせつ行為におよぶデートレイプドラッグという例も話題になっています。

準強制わいせつ罪刑事事件では、被疑事実の否認や、大筋のわいせつ行為は認めるものの、被害者と被疑者の供述が食い違う場合も多い傾向にあります。

また、上記刑事事件例2のように、電車内での痴漢盗撮による東京都迷惑防止条例違反刑事事件も弊所に寄せられる相談として非常に多く、特に有効な刑事弁護を行わない場合には、罰金刑が科されて前科がつくことが強く予想されます。

このような性犯罪では、被疑事実を否認するのでない限り、被害者に対する謝罪と損害賠償を通じて被害者の処罰感情を緩めていくことが有効ですので、このような事件は、刑事事件に詳しい弁護士に依頼し適切な対応を探っていくことが大切です。

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