【事例解説】バイト先の女性に対する不同意性行の容疑で男を逮捕(前編)
バイト先の女性に対する不同意性行等罪の容疑で男が逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
・事件概要
三重県津警察署は、三重県内の大学に通う男子大学生Aを不同意性交等罪の疑いで逮捕した。
Aは、バイト先のスタッフで行った飲み会で酔っ払ったVを、V宅まで送ると言って一緒にタクシーに乗った後、自宅に連れ込んで、同意なく性行為をした疑いが持たれている。
翌朝A宅を出たVが津警察署に同意なくAから性行為をされたとして被害届を提出したため、Aは逮捕された。
(フィクションです)
・不同意性行等罪とは
不同意性交等罪(刑法177条)は、簡単にいうと無理やり性行為に及ぶなど、相手の同意を得ていない状態で性行為等を行なった場合に成立する犯罪です。
不同意性交等罪を定める刑法177条1項(出典/e-GOV法令検索)によれば、例えば、アルコールの影響下にあるために(176条1項3号)、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交(中略)をした者は、(中略)5年以上の有期拘禁刑」を課されます。
不同意性行等罪が成立するためには、上記心理状態が、176条1項各号に該当するような行為または事由その他これらに類する行為や事由によって生じていたことが必要です。
176条1項各号に該当する行為・事由としては、暴行若しくは脅迫(1号前段)、アルコールや薬物を摂取した影響下にあること(3号後段)などが規定されています。
本件では、AとVはバイト先の同僚であり、Vは飲み会で酒を飲みすぎて酔っ払ってしまったようです。
したがって、刑法176条1項3号の規定する「アルコール若しくは薬物を摂取させること又はその影響があること」に該当し、性行について同意しない意思を形成、表明、全うすることが困難だった可能性があります。
もし、Vが警察に告げた通りに、Aが、酒に酔って同意することができない状態のVに対して性行為をしたのであれば、不同意性交等罪が成立する可能性があります。