卑わいな言動で逮捕

2022-02-17

卑わいな言動で逮捕

卑わいな言葉をかけたり、行動を行うことによって生じる刑事責任と刑事事件例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

<刑事事件例1>

東京都渋谷区在住の会社員Aさんは、小学校・中学校の児童が多く通学する道路において、女子児童に対して「発育いいね」「胸の大きさはどのくらい」等の性的な声掛けを繰り返し行っていました。
これに対して恐怖や不安を抱いた女子児童の学校への報告が複数寄せられるようになったため、学校はPTOと警視庁渋谷警察署に協力を要請して、児童の登下校時の見回りを強化しました。
後日、Aさんが女子児童に対して卑わいな言動をしているところを、警戒していた児童の保護者が取り押さえ、Aさんは東京都迷惑行為防止条例違反卑わいな言動)の疑いで現行犯逮捕されました。

<刑事事件例2>

東京都渋谷区在住の会社員Aさんは、夜間、若い女性が一人で出歩いているのを見つけては、男性器を模した玩具を使用して、あたかも下半身を露出したかのように見せかける悪質で卑わいな言動を繰り返していました。
警視庁渋谷警察署に対して被害にあった女性からの通報が複数寄せられたため、警察は警戒を強化したところ、後日、不審な様子で夜道を徘徊しているAさんを発見し、職務質問をしたところAさんが男性器を模した玩具を所持しており、女性に対して卑わいな言動をしていたことを認める趣旨の発言をしたことから、Aさんを東京都迷惑行為防止条例違反卑わいな言動)の疑いで警察署に連行し、詳しく事情を聞くことにしました。
(※上記いずれの事案もフィクションです)

東京都迷惑行為防止条例第5条第1項では「 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為(中略)をしてはならない。」としつつ、具体的には「人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること」を禁止しています(同条同項第3号)。

東京都迷惑行為防止条例第5条は、まず広く「人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為」を禁止すると宣言しつつ、その具体的行為として、第1号で痴漢行為、第2号で盗撮行為、そして第3号で、痴漢行為盗撮行為には該当しない「卑わいな言動」を処罰することで、具体的な行為を列挙することで不当に処罰範囲が狭くなり過ぎないよう工夫をしていると立法論的に解釈されています。

迷惑行為防止条例は、各都道府県が独自に定めており、例えば「公共の場所」要件を必要とするのか否かについて、各都道府県で若干の差異があるものの、基本的な立法趣旨は共通しています。

迷惑行為防止条例における「卑わいな言動」に関する有名な判例として、北海道旭川市のショッピングセンター内で、女性客に対して約5分間、およそ40メートルにわたってカメラ付き携帯電話を相手の臀部あたりに狙って追い回して撮影したという事案において、たとえ女性の服の上から臀部を撮影する行為についても、本件の撮影行為全体を見た時に、社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな動作であることは明らかであり、これを被害者が知った時に被害者を著しく羞恥させ、被害者を不安にさせる卑わいな言動と言えると判断し、有罪判断を下しています。

つまり、強制わいせつ罪公然わいせつ罪等で処罰されるような典型的なわいせつ行為でない場合であっても、他人を不愉快にさせる可能性が高い性的な言動について、迷惑行為防止条例違反として広く処罰される可能性が残されているため、スキンシップ目的や悪戯目的であっても刑事事件化の可能性があることに注意が必要です。
ゆえに、「直接被害者に触っていない」等を理由に「卑わいな言動」ではないと被疑事実を否認したとしても、裁判官の合理的解釈上、「卑わいな言動」に該当するとして刑事責任が発生する可能性があることを覚悟すべきです。

このような事案で刑事事件化した場合には、刑事事件に強い弁護士を介して、被害者に対して謝罪や賠償を申し出ることで被害者の処罰感情を和らげる努力をすることが効果的です。

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