【事例解説】陸上大会で女子選手の下半身を撮影し逮捕(前編 ※性的姿態等撮影罪の成立について)
高校生の陸上競技大会で女子選手の下半身を撮影したとして、福岡県迷惑行為防止条例違反(卑わいな言動)で逮捕された架空の事件を参考に、性的姿態等撮影罪や迷惑行為防止条例違反(盗撮、卑わいな言動)の成立とその弁護活動について、前編・後編に分けて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
参考事件
福岡市内であった高校生の陸上競技大会で女子選手の下半身を撮影したとして、同市内在住の男性Aが、福岡県迷惑行為防止条例違反(卑わいな言動)の容疑で逮捕されました。
福岡県中央警察署の調べによると、Aは、福岡市内であった高校生の陸上競技大会で、10代の女子選手の下半身をデジタルカメラでズーム撮影していたところ、それに気付いた選手の保護者が警察に通報しました。
Aは、「服の上から撮影するだけでは罪にならないと思っていた」と、供述しているとのことです。
(事例はフィクションです。)
性的姿態等撮影罪の成立について
令和5年7月13日に施行された「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」(「性的姿態撮影等処罰法」)により、従来、各都道府県の迷惑行為防止条例違反として処罰されていた盗撮行為は基本的に、「性的姿態等撮影罪」(同法2条1項)として、全国一律での処罰の対象となりました。
本件Aの盗撮行為につき、性的姿態等撮影罪が成立するでしょうか。
同罪では、「性的姿態等」を正当な理由がなくひそかに撮影する行為を、一定の例外を除き処罰すると定めています。
この「性的姿態等」の対象として、(1)人の性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部)、又は(2)人が身に着けている下着(通常衣服で覆われており、かつ、性的な部位を覆うのに用いられるものに限る。)のうち現に性的な部位を覆っている部分、と規定されています(同法2条1項1号イ参照)。
スカートの中の下着を盗撮するような、性的姿態等撮影罪が成立し得る典型的な例とは異なり、衣服の上からの撮影にとどまる場合は、通常、「性的姿態等」の撮影に該当しないと考えられます。
本件Aは、陸上競技のユニフォームを着た女子選手の下半身の撮影ということであり、透視機能付きカメラでもなく、大腿部の撮影とユニフォームの上からの臀部の撮影にとどまるものであれば、性的姿態等撮影罪が成立する可能性は低いと考えられます。
なお、性的姿態等撮影罪には未遂犯の処罰規定があるため、「性的姿態等」を撮影しようとしていたと認められる場合は、未遂犯として処罰される可能性があります(同法2条2項)。
次回の後編では、福岡県迷惑行為防止条例違反(卑わいな言動)について、解説します。
盗撮行為を罪に問われた場合の刑事弁護
福岡県迷惑行為防止条例違反(盗撮、卑わいな言動)の法定刑は、常習でない場合は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金ですが、性的姿態等撮影罪の法定刑は、未遂犯を含めて、3年以下の拘禁刑(施行までは懲役刑)又は300万円以下の罰金と、大きな開きがあります。
福岡県迷惑行為防止条例違反(盗撮、卑わいな言動)で逮捕された場合、初犯であり、被害者との示談が成立すれば、不起訴処分を獲得できる可能性が高かったのですが、厳罰化された性的姿態等撮影罪においては、同様に不起訴処分を獲得できるとは必ずしも限らない可能性があります。
撮行為に関する処罰規定は大幅に改正されたばかりということもあるため、盗撮行為を罪に問われた場合、今後どのような手続で事件が進み、どの程度の刑罰が科される可能性があるのか、刑事事件に強い弁護士に相談されることをお勧めします。
まずは弁護士にご相談を
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、性犯罪を含む刑事事件を多数取り扱い、新法制定前の福岡県迷惑防止条例違反事件において、身体拘束からの解放や示談成立による不起訴処分を獲得している実績が多数あります。
盗撮行為を行ったとして、ご家族が逮捕されるなどしてご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所へご相談ください。