【事例解説】わいせつ目的で幼児を多目的トイレに連れ込み逮捕(前編 ※わいせつ誘拐罪、監禁罪の成立についての解説)

2023-12-07

 わいせつ目的で幼児を多目的トイレに連れ込み、わいせつ誘拐罪などで逮捕された架空の事件を参考に、わいせつ誘拐罪、監禁罪、不同意わいせつ罪の成立とその弁護活動及び未遂と中止未遂ついて、前編・後編に分けて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

参考事件

 京都市内のショッピングモールで、女児V(4歳)を多目的トイレに連れ込み、わいせつな行為をしようとしたとして、京都市在住の会社員の男A(25歳)が、わいせつ誘拐、監禁、不同意わいせつ未遂の容疑で逮捕されました。
 警察の調べによると、犯行当時、玩具売場で母親から離れて1人で遊んでいるVに、「お母さんが探している」と嘘を告げ、わいせつ行為を行う目的で、玩具売場外の多目的トイレに連れ込んで中から鍵をかけたところ、Vが泣き叫んだため解放したとのことです。
 Aは容疑を認めており、「Vが泣いてかわいそうになったので、わいせつ行為には及んでいない」と供述しているとのことです。
(事例はフィクションです。)

わいせつ誘拐罪及び監禁罪について

 未成年者を誘拐した者は、未成年者誘拐罪(法定刑は3月以上7年以下の懲役)が成立しますが、わいせつ目的があった場合、被害者が成人の場合と同様、わいせつ誘拐罪(法定刑は1年以上10年以下の懲役)が成立します(刑法第224、225条)。

 「誘拐」とは、欺罔又は誘惑を手段とし、人を従来の生活環境から離脱させ、自己又は第三者の事実的支配下に置くこと、とされます。
 本件で、AはVに「お母さんが探している」と嘘を告げて「欺罔」しており、「わいせつ行為を行う目的」で、母親のいる玩具売場外の多目的トイレに連れ込んでおり、Vを「従来の生活環境から離脱」させ「事実的支配下」に置いたものとして、わいせつ誘拐罪が成立し得ます。

 また、不法に人を監禁した者は、監禁罪(法定刑は3月以上7年以下の懲役)が成立します(刑法第220条)。
 監禁罪は、人の身体的活動の自由を奪う犯罪とされますが、幼児であっても自らの意思に基づき活動する能力を通常有するため、対象の「人」に含まれます。「監禁」とは、人が一定の区域内から脱出することが不可能又は著しく困難にすること、とされます。

 本件で、AはVを多目的トイレに連れ込んで中から鍵をかけており、4歳のVが自らトイレから脱出することは著しく困難であると考えられ、監禁罪も成立し得ます。

不同意わいせつ罪について

 16歳未満の者に対しわいせつな行為をした者は、被害者の同意の有無にかかわらず、一定の例外を除き、不同意わいせつ罪が成立します(刑法第176条)。

 同罪は、令和5年の性犯罪規定に関する刑法改正によって、従来の強制わいせつ罪に代わり、新たに創設された犯罪で、令和5年7月13日から施行されました。
 法定刑は、6月以上10年以下の拘禁刑、とされています(「拘禁刑」はまだ施行されていないので、それまでは「懲役」になります。)。

 なお、強制わいせつ罪では、被害者の同意の有無にかかわらず犯罪が成立する被害者の年齢が「13歳未満」であったところ、不同意わいせつ罪では「16歳未満」に引き上げられています(但し、被害者の年齢が13歳以上16歳未満の場合は、加害者と被害者の年齢差による一定の例外があります。)。

 次回の後編では、不同意わいせつ罪の未遂と中止未遂について解説していきます。

幼児に対するわいせつ誘拐罪などの弁護活動

 幼児が被害者となるわいせつ誘拐罪や不同意わいせつ罪などは、被害児童の今後の日常生活や対人関係に深刻な影響を及ぼす可能性があり、悪質と評価されやすく、被害者側との示談が成立したとしても不起訴処分を得られるとは限りません。
 しかしながら、示談の成否は、起訴された場合の量刑や執行猶予の判断にも影響を及ぼし得るため、示談を成立させることはなお重要と言えます。

 示談交渉は通常、被害者本人と行うものですが、被害者が幼児である場合は、当然ながら、両親等の保護者と行うこととなります。
 保護者は、子どもの心身に深刻な被害を受けたということで、犯人を許せないという処罰感情が強いことが一般的であり、示談交渉を断られる可能性もあるため、刑事事件に強く、示談交渉の経験の豊富な弁護士への相談をお勧めします。

まずは弁護士にご相談を

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件に強く、未成年者が被害者である様々な性犯罪において、保護者との示談締結により不起訴処分や刑の減軽などを獲得した実績があります。
 ご家族が幼児に対するわいせつ誘拐罪などで逮捕されご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。