【事例解説】「身分なき共犯」として監護者性交等罪で起訴された事件(前編 ※監護者性交等罪について)

2023-12-21

 交際相手の未成年の娘と性交したとして、交際相手である母親とともに監護者性交等罪で起訴された事件を参考に、監護者性交等罪の成立とその弁護活動、「身分なき共犯」について、前編・後編に分けて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例紹介:交際相手の未成年の娘と性交したケース

 交際していた女性Bの娘V(16歳)と性交したとして、千葉市在住の男性Aが、監護者性交等罪で起訴されました。
 捜査機関の調べによると、AとBは出会い系サイトで知り合って交際を開始し、Aは、Bの娘Vが18歳未満だと知りながら性交したいと考え、Bに依頼してVに性交に応じるよう説得させ、Vと 性交するようになったとのことです。
 A、Bは起訴内容を認めています。
(事例はフィクションです。)

監護者性交等罪について

 18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者は、5年以上の有期拘禁刑に処する、と定められています(刑法第179条)。

 監護者性交等罪は、被害者が18歳未満であり、精神的・経済的に監護者に依存している状況においては、そのような関係性を利用して性交等をした場合、不同意性交等罪(刑法第177条)の成立要件に該当しない場合でも、被害者の自由な意思決定に基づくものではないと考えられることから、不同意性交等罪と同等の悪質性があるものとして、これと同様に処罰するものとされます。

 「監護する者」(「監護者」)とは、同居の両親等の法律上の監護権(民法820条)を有する者に限られず、事実上、現に18歳未満の者を監督・保護する者とされ、同居の有無等の居住状況、身の回りの世話等の生活状況、生活費の負担等の経済的状況などを考慮して判断されます。

 「影響力」とは、監護者が被監護者の生活全般にわたり、衣食住などの経済的な観点や生活上の指導・監督などの精神的な観点から、現に被監督者を監督し、保護することによる生じる影響力とされ、行為時においてもその影響力を及ぼしている状態で性交等をした場合、監護者性交等罪が成立し得ます。

次回の後編では、「身分なき共犯」について、解説します。

監護者性交等罪の弁護活動

 監護者性交等罪は、法定刑が5年以上の有期拘禁刑(拘禁刑の施行までは懲役)のため、起訴されると正式な裁判となります。

 被害者が未成年者である性犯罪の弁護活動では一般的に、不起訴処分等を目指して、被害者の両親等の保護者との示談を目指すことが重要となりますが、監護者性交等罪では被疑者が監護者の立場にあるため、示談を行うことがそもそも想定できない場合があります。

 このような場合、不起訴処分や刑の減軽を得るために、真摯な反省とともに再犯防止の意欲や取組みを、検察官や裁判官に具体的に示すことが特に重要になると考えられます。
性犯罪再犯防止のカウンセリング等を受ける意欲を示すことや、被害者やその家族との元々の関係性に応じて、離婚や交際の解消、離縁や別居等により、被害者である児童が安心して生活できるよう環境調整を行っていることを示すことなどが考えられます。
 被害者の今後の生活環境や家族関係に関わることであるため、弁護活動においては、被害者とその家族の心情に配慮した調整が必要となります。

 このように、監護者性交等罪の刑事弁護は、通常の性犯罪の場合とは異なる対応が求められることが想定されるため、刑事事件に強く、被害者が未成年者である場合を含む、様々な性犯罪の刑事弁護の経験豊富な弁護士への相談をお勧めします。

まずは弁護士にご相談を

 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件に強く、被害者が未成年者である様々な性犯罪において、不起訴処分や刑の減軽などを獲得した実績があります。
 ご家族が監護者性交等罪などで逮捕されご不安をお抱えの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。